Androidを搭載したスマートフォンが各社から登場し、注目を集めている。

auのAndroid携帯である「IS03」が、発売前の「購入宣言」に27万人が登録。出足の良さを見せるなど、au初の本格的スマートフォンへの注目度は抜群だ。さらに、NTTドコモのGalaxy Sも品薄が続く状況であり、両社のソフトバンク追撃体制が整いつつある。

KDDIのスマートフォンビジネスを変えるか!? 発売前からすでに大人気のIS03

女優の堀北真希さんが手にしているのはNTTドコモのGalaxy S。こちらも品薄状態

しかし、Android搭載携帯電話には注意しなくてはならない点がある。それは異なるバージョンが林立している点だ。

現在市場で購入できるAndroidには、auのIS01などに搭載されているAndroid 1.6、IS03に搭載されているAndroid 2.1、そして、ソフトバンクがスマートフォン全機種で統一した最新版となるAndroid 2.2である。これらのバージョンは、それぞれに機能が大きく異なるため、単にAndroidとひとくくりにするのではなく、機種検討の際には、バージョンを意識したほうがいい。

たとえば、Android 1.6では、基本的にはマルチタッチには対応していないが、Android 2.1はOSとしてマルチタッチに対応。動作も高速化されるなどの強化が図られている。さらに、Android 2.2では、Flash 10.1への対応や、アプリケーションの高速化、PCとの連携強化などが図られている。

ソフトバンクの孫正義社長は、「Android 2.1とAndroid2.2では、見かけ上は0.1のバージョンアップしかないが、機能でみればまったくの別物となる。技術にこだわるソフトバンクは、だからこそ、最新版であるAndroid 2.2の搭載にこだわり、全機種にAndroid 2.2を搭載した」とコメントする。スマートフォンとしての利用を考えれば、Android 2.2の搭載は必須と考えたわけだ。

全機種Android 2.2搭載を謳うソフトバンク 孫正義社長

2.1と2.2の最大の違いはFlash 10.1への対応

そのほかにもAndroid 2.2で可能になった機能は多い

女優の上戸彩さんが手にしているのはシャープ製のGALAPAGOSブランドの端末。もちろんAndroid 2.2搭載

さらに、製造メーカーごとに機能が微妙に異なるため、その点でも注意が必要だ。同じバージョンであっても、メーカーによって機能に差があるのは、オープンOSならではの特徴ともいえるが、別の見方をすれば、それがユーザーの混乱を招くベースにもなりかねない。

そして、新たなバージョンへのアップデートが、確実にパスとして用意されていないという点も注意する必要がある。

たとえば、auのIS01では、Android 1.6からAndroid 2.1へのアップデートが行われないことがKDDIから正式に発表されている。当然のことながら、Android 2.2へもアップデートは不可能ということになろう。

一方で、NTTドコモのXperiaは、発売当初はAndroid 1.6であったが、現在、Android 2.1へのアップデートが可能になっており、多くのXperiaユーザーがアップデートの作業を行っている段階にある。しかし、Android 2.2へのアップデートに関しては、製造元のソニー・エリクソンやNTTドコモからも正式な回答は何もないというのが実態であり、「Android 2.2へのアップデートはむずかしいのではないか」という憶測を呼ぶ結果にもなっている。

となれば、"ジンジャーブレッド(Gingerbread)"と呼ばれる「Android 2.3」への対応も心配になる。このバージョンでは、非接触ICチップの搭載にも対応するとされており、日本で普及しているおサイフケータイ技術との棲み分けも気になるところだ。

これに対して、AppleのiPhoneは初期のiPhone 3Gであっても、最新版であるiOS 4.2へのアップデートが可能になる。これは1つのメーカーがハードもOSも開発するというAppleならではのものだといえよう。

だが当然のことながら、iOS 4.2は最新のiPhone 4での利用を想定して開発されたものであり、ハードウェアスペックの観点からも、iPhone 3Gでは動作が極端に遅くなることを覚悟しなくてはならない。実はiOSの4.2の前バージョンとなるiOS 4.1では、当初投入されたiOS 4.0が、iPhone 3Gでは極端に動作が遅いとの指摘があったため、それを解決する改良版として投入されたという経緯もあり、それがiO S4.2にも引き継がれている。

国内スマートフォン市場での勢力図。iPhoneが圧倒的に強い

日本のスマートフォン市場を俯瞰すると、実に市場全体の約8割をiPhoneが占めており、iPhone優位の状況は変わらない。

一方で、米ニールセンの調べによると、10月における米国のスマートフォンのシェアは、iPhoneのiOSが27.9%とトップシェア。続いて、BlackBerryが27.4%、Androidが22.7%、Windows Mobileが14.0%となっており、日本の状況とは大きく異なる。

米国並みの拮抗した市場構成になるには、Androidの製品の広がりとともに、各製品ごとに異なるバージョンの違いをユーザーに認識させることが必要だといえよう。また、次のバージョンへのパスをしっかりと用意することも必要だろう。期待していた機能が使えないということになるようならば、Androidの普及の足かせになりかねない。

しかし、この音頭を誰が取るのか -- そこにオープンOSならではの難しさがある。