位置と端末をチェック

4月のはじめ「不審なログインが見られました」とTwitterからメールが届きました。Twitterは日頃アクセスする端末と、位置情報を記録しているようで、イレギュラーな接続を報告してきたのです。SNSとて公の空間であり、個人的なつぶやきと断っていても、一般公開している発言には一定の責任が生まれます。

「のっとり」の見逃しは、個人的な信用を毀損しかねません。すぐに対応したことで事なきを得ましたが、アカウントの「のっとり」は犯罪です。実害がでたのなら、すぐに「警視庁ハイテク犯罪対策総合センター」に相談すべきです。犯人の放置は、次の犠牲者を生み出すからです。

だからこそ、香山リカ氏には同センターに相談して欲しいと願ったものです。ワイドショーのコメンテーターとして大活躍していた精神科医の彼女は、Twitterでの暴言を「のっとり被害」と主張していたからです。「検挙」は何よりの犯罪抑止になりますし、彼女のような著名人ならアナウンス効果は絶大です。ところが、事件はおかしな結論を迎えます。

精神科医の芸風

CS放送のニュースワイドショーに、金曜日のレギュラーとして出演していた香山リカ氏。その日の出演者と一緒になって、別の曜日のコメンテーター青山繁晴氏を批判するならともかく、彼のファンを「信者」と小馬鹿にしました。

香山氏も青山氏も著作を持つ言論人なら、互いの批判を止めることはできません。しかし、反論できない立場のファンへの攻撃はアンフェアで、ましてや青山氏のファンとはすなわち、番組の視聴者でもあります。テレビやラジオで、視聴者を小馬鹿にして許されるのは毒蝮三太夫師匠か綾小路きみまろだけで、彼らは芸人ゆえの「芸風」であり、精神科医の診療項目にはありません。

とはいえ、「信者」だけなら謝罪で一件落着となる程度の発言です。スポンサーや番組も、謝罪を「落としどころ」にしたようですが、翌週に設定された謝罪放送の前日に香山リカ氏のTwitterには、番組とスポンサーに謝罪を強要されたと怒りのツイートが並びます。本番中の発言より過激に、青山氏と「信者」を攻撃します。すぐに発言は「削除」されましたが、ネット上に「拡散」していきました。

番組のなかで、ツイートについて問われた香山氏は「私の発言ではない」と否定し「のっとり」を匂わせます。

のっとり説の真意

それが事実なら、警察に相談してでも真相解明すべきだと番組プロデューサーが提案します。しかし、台本の訂正など、「その場」にいなければ知り得ない情報、いわば「秘密の暴露」もツイートされていたことを指摘されると、「しどろもどろ」を実演してみせた香山氏でした。

放送終了後の話し合いで、香山リカ氏はファンに向けた私的な発言の下書きが、何かの過ちで投稿された「誤作動説」も主張していたようです。ところが、いずれの証明もないまま、香山リカ氏から番組プロデューサー宛に、番組への不満とともに降板の意向が綴られた「手紙」が届きます。一連のやりとりはすべて放送されており、今もYouTubeで見ることができます。

一連のツイートは「信者発言」への「見解の相違」ではじまり、これだけならスポンサーもプロデューサーも問題視などしなかったことでしょう。しかし、1~2分おきに投稿された彼女のツイートはヒートアップしており、当該放送では無関係の池田 信夫氏の名前も挙げて「下劣」と結びます。

池田 信夫氏の名前が挙がった点について、香山氏にならって精神分析するなら、放送の数日前に開催された『ニコニコ超会議』の討論で「論破」されたことへの私怨かもしれません。そこから「のっとり説」とは、正常な判断能力を「私怨」に「のっとり」されたという、精神科医としてのアプローチだったのかもしれませんが、それは「のっとり0.2」です。

国益を損ねるかもしれない

のっとりと誤作動といえば、香山氏が「しどろもどろ」を演じた同じ日、国家を揺るがしかねない事件が発生していました。安倍総理のアカウントが「空港で総理を出迎える。昨晩はほとんど寝ていない。機内で爆睡する」と投稿したのです。

「総理を出迎える」とは不自然で、首相のアカウントが「のっとり」にあったとWeb界隈は騒然となります。かつてオバマ大統領のアカウントも、のっとりの被害にあっており、同盟国とはいえ、そして訪米中とはいえ、そこまで足並みを揃える必要はないでしょう。

ただ、この事件の犯人は参議院議員の山本 一太氏でした。訪米中、多忙を極める首相の「影武者」を申し出た山本氏による「誤作動」で、自分の発言を首相のアカウントに書き込んでしまったのです。

私はこの「誤作動」を、若干疑っております。人前にでることを生業とする政治家は、性格的に「影武者」向きではないからです。故意と断定する証拠を持ちませんが、テレビ番組に嬉々と出演する山本氏の本能が、香山氏同様に精神の「誤作動」を誘発した「影武者0.2」ではないかと。

エンタープライズ1.0への箴言


Twitterは「のっとり」を監視している。警告には迅速な対応を

宮脇 睦(みやわき あつし)

プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に「Web2.0が殺すもの」「楽天市場がなくなる日」(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」

筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」