靖国参拝への失望

静かに一年も終わるのかという雰囲気が漂っていた昨年末の12月26日。安倍首相が靖国神社に参拝しました。「ネガティブ」な意見だけを編集して放送し、「世論」と偽るテレビ各局も、さすがに間に合わず、直後のお昼の番組では珍しく事実関係だけが報じられました。なにせニュースの現場である靖国神社周辺で「国民の声」を集めれば「万歳三唱」が聞こえてきかねませんからね。

その後、周辺諸国(正しくは近隣2国、北朝鮮をいれても3国)はもちろん、同盟国の米国が「失望」とコメントを発表し、日本が孤立したかのようにはしゃぐ報道が散見しました。しかし「失望コメント」の全文を読めば、同盟関係を前提としており、極東アジアの緊張の高まりを嘆くもので、それを正しく意訳するならば、何を言われてもやられても「日本は我慢し続けろ」という無体な要求です。そもそも緊張を高めているのは誰か、という視点が欠けているのですから。

これがいまの米国の「立ち位置」。日本国内ではデーブ・スペクターが代弁しています。

デーブ・スペクターの正体

かつて小泉純一郎が首相時代に靖国へ参拝したとき、ブッシュ大統領率いる米国は、「日本の内政問題」と気にも留めませんでした。発言の変化を日米関係に求めるなら、それを破戒した日本の民主党による国益の毀損の根深さを見つけるのですが、それだけではありません。ブッシュは「共和党」で、オバマは米国「民主党」という立ち位置の違いがあるのです。伝統的にも歴史的事実からも、米国の民主党は親中、反日(嫌日)の傾向があるのです。あまり論じられませんが、先の大戦の開戦から終戦まで、そして占領軍として乗り込んできた米国は「民主党」です。

日本でタレントとして活躍するデーブ・スペクター氏が、靖国参拝に苦言を呈するのは米国の世論を代弁しているわけではなく、彼が米国民主党の対日情報収集と宣伝活動の工作員…応援団だからです。タレントが政治色を帯びるのは米国では普通のことで、それが証拠にデーブ氏は、オバマの失政には言葉を濁し、ブッシュ元大統領を筆頭に、共和党系の議員の悪口はにこやかに拡散し続けています。発言は立ち位置による変わるのです。

昨年の秋、ある経営者からこんな相談を受けました。

「津田ナントカさんはツイッターだけで生活している」

そして社内のネットリソース(人員配置など)をツイッターに集中させようとしていました。

ツイッターから逃げ出す人々

付随する情報からナントカさんは「津田大介」氏だろうと特定します。津田大介氏とはツイッターでひと山あて、NHKを筆頭に大メディアにひっぱりだことなった御仁。しかし、ツイッターだけで生活できるわけもないどころか、いまから2年半前の2011年8月に、グーグルが提供するSNS「グーグルプラス」に軸足を移すと宣言しています。新しいものに飛びつくのはネット業界人の病で、わたしはこれを「フロンティアシンドローム」と呼んでいます。

だれよりも早く新天地を礼賛し、新天地の第一人者と自称すれば、既存メディアからの出演や執筆が相次ぎ小金が転がり込みます。20世紀から存在する伝統的なネット業界の換金方法で、津田氏自身がツイッターで実演した方法です。こうした経験則から、ネット業界ではつねに新しいツールやサービスを礼賛する病=フロンティアシンドロームに罹患する患者が多いのです。ちなみに津田氏は後に発言を撤回しツイッターに戻っております。

字面の通り、ツイッターだけで生活できるのは、ツイッター社から給料を貰うか、仕事を貰う取引関係者だけ。あるいは株式公開で利益を得る人(当時は公開前)だけです。それ以外はツイッターという「ネタ」から原稿を書き、セミナーを開き、イベントに登壇することで小金を稼いでいるのです。

正体は誰だ

そんな彼らの立ち位置が、ツイッター礼賛に走らせます。そして尾ひれがついた「噂」が先の発言のネタ元です。「立ち位置」を確認せずに、ネタを鵜呑みにした「ネタ0.2」です。

ブッシュ政権時代は靖国参拝を「内政問題」と突き放した米国が、どうしていまになり「失望」と言うのか。なぜ、オバマ大統領になってから、デーブ・スペクター氏が政治的発言を真顔で言うようになったのか。そして中韓はかくも執拗に日本を貶めようとするのか。すべて彼らの国益を実現するための「ネタ」なのです。同盟関係にある両国だからと、それぞれの国益が、すべて共通するものではありません。

靖国参拝については、日本に問題が無いわけではありません。その筆頭が「A級戦犯」です。首相の靖国参拝を問題とする理由を「A級戦犯」の合祀と挙げる日本人は実に多いのですが、その「A級戦犯」の犯した罪について正確に答えられる日本人はほとんどいません。処刑された数で言えば「B・C級戦犯」のほうが圧倒的に多い事実も知りません。だからもちろん、「a) b) c)」という罪の区分の意訳が「A級」であることも知りません。もしかしたら「永久戦犯」と思っているのかも知れません。首相参拝、合祀の是非について論じるためには「A級戦犯」という「ネタ」について、もう少し日本人自らが知るべきと考えるのですが、如何せん、先の戦争で戦った国が「韓国」だと答えるアイドルグループもいるほどで、「歴史0.2」という現実に「失望」します。

エンタープライズ1.0への箴言


「立ち位置で発言が変わるのは当たり前」

宮脇 睦(みやわき あつし)
プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)がある。最新刊は7月10日に発行された電子書籍「食べログ化する政治~ネット世論と幼児化と山本太郎~」

筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」