左翼のクソどもの真実性

復興庁の高級官僚がツイッターで暴言を吐いたことにより事実上更迭されました。各種ニュースで取り上げられたツイートがこれ。

「左翼のクソどもから、ひたすら罵声を浴びせられる集会に出席」

クソという表現に品位が感じられませんが、指摘する集会の映像を報道各社に提供していた、独立系ニュースサイトの日頃の報道姿勢は明らかにそちら寄り。さらに主催者を辿ると『放射線被ばくと健康管理のあり方に関する市民・専門家委員会』とあり、この委員会が『FoE Japan』という国際環境NGOにより運営されていることがわかります。このニュースで気になったのは、件の集会は3月に開かれておりツイートも同日、それが今になって発掘されたことです。

NGOによる委員会のサイトは、脱原発を高々と掲げ「提言」には【現状】として、甲状腺癌が"統計学上多発"と結論づけています。ところが2013年6月1日のYOMIURI ONLINEには

「住民に健康影響出ない」

とした記事が掲載されます。福島第一原発による事故を調査した「原子放射線の影響に関する国連科学委員会」(UNSCEAR)が、2年の歳月を費やして導いた結論です。

流れ弾ナウ

国連の委員会は放射線医学の専門家ら約80人のチームで、NGOによる委員会は市民活動家、医者、宗教学者などバラエティ豊かな11人です。どちらの委員会の主張が正しいのでしょうか。高級官僚は他にも問題視されるツイートを繰り返しており、人間性への疑問符がつくとはいえ、発言と発掘のタイムラグから江戸の敵を長崎で撃つような「流れ弾」に見えなくもありません。

ウェブ制作会社のA社長も最近「流れ弾」に被弾しました。ある朝、メールが届きます。

御社が管理しているP社(仮名)のサイトにあるバナー(画像)は、当社(O社)に著作権があると考えております。そこで、利用を中止していただくと共に、デザイン費ならびに昨年の×月からの利用料をご請求させていただきます

数カ月前に知人の紹介で、P社のサイト管理を依頼され、それまで管理していたO社から引き継いだものです。O社にしてみれば仕事を奪われた形ですが、引き継ぎ当時は紳士的に対応し、バナーはもちろん、すべてのデータの継続利用を快諾していたのです。

権利の違いと請求先の違い

A社長は「流れ弾」だと直感します。

O社が権利を主張するバナーとは、ネット上のフリー素材にMSゴシックで社名をいれただけのもので、A社長には「創作物」という認識はありませんでした。しかし、著作権はすべての創作物に発生します。著作権の発生要件に新奇性や希少性は含まれません。ただし、フリー素材の提供者は利用の自由を認めていますが、著作権を放棄していません。つまりO社の主張は、素材提供者の著作権を侵害する可能性の高い「著作権0.2」です。

そもそも、請求先が異なります。当該バナーはP社に対して提供したもので、請求するならP社に対して行わなければなりません。P社がO社との契約を打ち切ったのは、発注していた更新作業を何度も怠っていたからからです。業を煮やしたP社は、A社長に依頼したのです。しかもO社は自らの落ち度を棚上げし、契約中止による違約金まで請求しようとしていました。そこでP社は弁護士に一任し、弁護士はO社の非を糾します。そして行き詰まり、P社と取引のあるA社長から金をせびろうとした「流れ弾0.2」です。

ツイッターは公開情報

一連の経緯を聞いていたA社長は冷静に返信メールをだします。

"当社はP社様より、公開済みデータを利用するよう指示があり、それに従い作業を行いました。主張されます著作物の利用に関しての契約は、御社(O社)とP社様のあいだの取り決めとなります。よって、本件につきましてはP社様にご確認くださいませ。デザイン費、月額の利用料につきましても、同じ理由から回答する立場にありません。"

A社長がP社に確認すると、O社は他でも同様のトラブルを起こし、いまではほとんど仕事がなくなり金に困っているとのこと。しかし、流れ弾での請求はともすれば「たかり」です。他人事ながら一線を越えないことを願うばかりです。

高級官僚のツイートが、論外であることはいまさら指摘するまでもないでしょう。ツイッターは公の空間で、発言に理性が求められるのは当然のこと。そのツイッターで最近、流れ弾を乱射する人々がいます。福島第一原発の事故以降、急速に脱原発に目覚めた人々で、彼らは放射能により"拡散する健康被害"という風評を拡散し続けていました。国連の委員会における報告を受けても自省することなく、ちゃんと発表しない政府が悪いと「流れ弾」を乱射します。

漫画家 西原理恵子の初期の名作『ゆんぼくん』で、母子家庭の母親が息子に自らを「決断力のある方向オンチ」と告げます。大震災が起きたときに、自分はパニックしたまま行動し、二次被害を広げるタイプだから、非常時にはまず自分(母)を見捨てろと伝えるのです。不確かな情報、浅い見識のまま、決断力だけを武器に風評被害という流れ弾を打ち続ける彼らにこの言葉を捧げます。

エンタープライズ1.0への箴言


「著作権だけで請求するならたかり」

宮脇 睦(みやわき あつし)
プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)がある。最新刊は6月11日に発行された電子書籍「完全ネット選挙マニュアル それは民主主義の進化か、それとも自殺か」

筆者ブログ「ITジャーナリスト宮脇睦の本当のことが言えない世界の片隅で」

完全ネット選挙マニュアル それは民主主義の進化か、それとも自殺か

著:宮脇睦
フォーマット:Kindle版
ファイルサイズ:2204KB
発行:2013/6/11
販売:Amazon Services International
ASIN:B00DCIH9VU
定価:1200
内容紹介:2013年7月21日に予定される参議院選挙より解禁される「ネット選挙」。残念ながら施行される法律はザル法で、壮大なる「社会実験」のようだ。本書は現時点でのネット選挙への懸念と課題を提示すると同時に、ネットを利用した選挙戦において必要充分のノウハウを紹介した、日本初の「ネット選挙マニュアル」だ。
例えば「なりすまし」は規制や厳罰化だけで根絶することは不可能。そこで「なりすまし」を封じる対策が必要となる。しかし、残念なことに政治家はネットに疎く、警鐘を鳴らすポジションのはずのマスコミは無知に近く、さらに専門家の立場である、ウェブ有識者はこれを礼賛するばかりで、問題を指摘しない。国内のIT関連企業はゴールドラッシュと、盛り上げることに普請する。
しかし、選挙とは民主主義を担保する仕組みで、いわば日本の統治機構の重要な土台となるものだ。これがいま、アメリカに支配され、近隣諸国からの攻撃を受けかねない自体であることを指摘する声はない。
本書はネット選挙のマニュアルであるとともに、挑戦的にネット選挙の違法と合法の境目に踏み込み問題点を喝破する警告の書でもある。