太陽光の全量買取の資金源は国民負担

突如、再生可能エネルギーをレーゾンデートル(存在理由)に掲げた菅首相。いまだ収束する気配の見えない福島原発の事故を受けて、電力政策の「脱原発」は国民受けすることでしょう。しかし、このよすがとなる法案「再生可能エネルギー促進法」は東日本大震災の当日に出されており、何を今さらという感は拭えません。

そもそも、原発事故に一定の目処がついたら若い世代にいろいろな責任を引き継ぐというのですから、脱原発後のエネルギー政策は次の首相の……って、あら、見事。どこにも「辞める」とは明言していません。「いろいろな責任」とは首相以外の大臣のイスのことなのかもしれません。

この法案がターゲットとしているのは「太陽光発電」で目玉は「全量買取」です。現在は自家使用で余った分だけ電力会社が買い取るのですが、これを太陽光で発電した分すべてとして太陽光発電の普及を目指すというのが大義です。しかし、買い取り価格は通常の電力料金の2~3倍に設定されており、そのための費用は「太陽光発電促進付加金」として発電装置の有無に関係なく、国民全員が負担する一種の「税金」です。

つまり、全量買取となれば、私たちの負担はより重くなるということです。そして、「太陽光発電」に取り組めるのは戸建て住宅を所有し、発電装置を購入できる所得に余裕のある世帯。そうです、再生可能エネルギー促進法は「金持ち」に有利な法律なのです。

成功者の体験談を実践するも2年後に撤退

健康グッズの通販を始めるにあたり、大手ネットショッピングモールにSさんは出店しました。ココロを動かされたのは「成功者」の体験談です。「プレゼント企画でメールアドレスを集め、メルマガを発行し、お客さんとコミュニケーションをとることで売上が伸びていった」と、モールの「最優秀店舗賞」の受賞者が語ります。

自社の商品のプレゼントなら原価の負担だけで済み、使ってもらえばファンになることも期待でき、一石二鳥です。月額のモールの出店費用だけでチャレンジするSさんには最適の解に思えたのです。

前回予告したとおり、今回のネタは「ショッピングモール0.2」です。どこのネットショッピングモールでも、わずかな月額費用だけで成功したように宣伝されていますが、鵜呑みにしてはいけません。

Sさんは、毎週のようにプレゼント企画を続け、メルマガを書き続けましたが、前回紹介したモールに支払う売上手数料などのいわゆる「税」の負担がのしかかり、月額費用を超える利益を得ることなく、2年後に退店しました。Sさんはモールのルールを知らなかったのです。

「贔屓」を平然と語るECコンサル

ネットショッピングモールは巨大な仮想空間です。最大手の楽天市場には12万を超える企業が出店しており、仮にそれぞれを1坪の店舗とすると延べ床面積は12万坪、東京ドーム8.5個分です。この1坪の店に集客するには「広告」が必要です。

広告とは、モールの中に掲示されるもので、東京ドームには屋内ポスターから電光掲示板、場内アナウンスと様々なものが用意されています。こうした広告を買わないかぎり、ネットショッピングモールでの成功は望めないといっても過言ではありません。

有り体に言えば「金持ちが勝つ」。飛行機のファーストクラスや新幹線のグリーン車の料金が高いように、多く支払ったものは多く恩恵を得るというのは自由競争において平等です。広告をたくさん購入すれば有利になるのは当然です。また、よく売れるショップはそれだけ「税」を多く納める「お得意様」で、高額でも効果の高い広告を「お得意様(有力店舗)」に優先的に紹介する「贔屓」はあると、最大手ショッピングモールを退職した元ECコンサルタントは語りました。納めた「税」はお得意様だけに還付されるのです。

孫正義と富の再分配

Sさんは騙されたのではありません。最優秀店舗賞受賞者が嘘をついたのでもありません。タイミングが違ったのです。プレゼント企画でメールアドレスを集め、メルマガを発行して売り上げを立てる手法は10年以上前のネット通販黎明期だけに通じたルールでした。プレゼント企画自体が珍しかったことから、1度の企画で応募する人数が多く、メルマガも珍しかったことから精読率が高かったのです。

しかし、今ではプレゼント企画に応募するのは「タダでものを欲しがる人」ばかりで客にならず、「プレゼント用」の使い捨てメールアドレスに、心を込めたメルマガを送っても読まれることはありません。時代と共にルールが変わるのはリアルもネットショッピングモールも同じです。

ショッピングモールは支払った「税」がモノをいう、金持ちに有利な市場になりました。それはモールという営利企業において健全な経済活動です。繰り返しになりますが、「再生可能エネルギー促進法」での買取の原資となる「太陽光発電促進付加金」は法律に基づいて集められている一種の「税金」です。全量買取を定める法律とは、戸建て住宅と100万円単位の費用が必要な発電装置を購入する金を持っている人だけに、その税金を分配する仕組み。

かつては、金持ちから集めた税金を福祉などで庶民に還元することから「富の再分配」と呼ばれた税金ですが、たくさんの税金を納める金持ちが優遇される「富の偏在」の時代になるということでしょうか。なるほど、米国の経済誌「フォーブス」が選ぶ世界長者番付で、日本人1位に輝く、孫正義さんが絡んでくるわけです。

エンタープライズ1.0への箴言


「出店費用だけで成功するほどネットショッピングモールは甘くない」

宮脇 睦 (みやわき あつし)

プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)がある。

筆者ブログ「マスコミでは言えないこと<イザ!支社>」、ツイッターのアカウントは

@miyawakiatsushi