ポスト菅直人の候補擁立もよいけれど……

菅内閣に野党が突きつけた内閣不信任案が与党・民主党の反対多数で否決されました。形式上は菅直人首相の続投を承認したということですが、続投を支持した理由として、国会の採決前に開かれた民主党の代議士会で首相が辞任を示唆したからだという声が民主党から聞こえてきます。つまりはこういうこと。

「辞めるといったからやらせる」

そして「ポスト菅」へ。不思議な話です。

野党提出の不信任案への賛否という永田町的技術論はさておき、次の総理も民主党から出すのであれば、現政権の「問題点」を明らかにしなければなりません。本稿は東日本大震災からちょうど3ヵ月目を迎えた6月11日に執筆しており、「現政権」とは菅直人首相が率いる内閣です。

原発問題への対応なのか、復興支援の遅れか、問題点を明らかにすることで、それを補える望ましい人物が浮かび上がってくるということです。これを明確にしなければただのクビのすげ替え。一時的に支持率は上がるでしょうが、早晩、政局が繰り返されることでしょう。

CMを垂れ流しにできるホームページ

首都圏近郊のベッドタウンを地盤に持つ不動産グループを展開するC社長は今年、数百万円を投じてホームページをリニューアルしました。全ページを刷新し、大幅にコンテンツを追加、ブログを除いた総ページ数で100ページを超えます。

もともと宣伝活動には積極的で、物件を掲載するだけのチラシではなく、素人モデルをイメージキャラクターに据えた「奥様物語」という読み物風のチラシや、地域情報を盛り込んだタブロイド新聞風のチラシを作っていました。また、地主である強みを生かして、遊休地に住宅展示場を建て、社名も苗字を冠したものから、親しみやすく覚えやすいようにと「フューチャーハウス(仮名)」へと変えました。そして、現在はホームページに傾倒しています。

チラシなどの「紙媒体」は、面積という物理的制約から掲載できる情報に限りがありますが、ホームページなら理論上無限大に引き延ばせます。販売物件から、住宅展示場の細かな紹介に、過去の施工物件のすべてを掲載できます。さらに「動画」も掲載します。地元のケーブルテレビにCMを流したこともありますが、スポンサー料は高く、流せる情報には限りがあります。それがホームページなら「垂れ流し」できるのです。

アクセス数は上がっても売上にはつながらず

リニューアルされたホームページはインタラクティブな操作性が訪問者を楽しませ、ダウンウォールや電動カーテンといった動きのある設備は動画になっていてわかりやすく、豊富な情報量が訪問者を飽きさせることはないと期待します。

それから1ヵ月後、現地販売会場で来場者にアンケートを行うと、物件を知った理由はすべてチラシでした。また、同社がウリとしている外断熱と高気密を組み合わせて室内温度を一定に保つ「魔法瓶ハウス(仮名)」という名称を知ったのも、チラシという回答ばかりでした。それどころか、「ホームページを見た」という回答はゼロ。C社長は首をひねります。毎日のアクセス数はリニューアル前より伸びていたからです。

ホームページを活用するうえでSEOは常識です。SEOとは、検索エンジンの上位に表示されるための対策で、特別な方法を使わなくても、ホームページ作りの基本を抑えれば必ず一定の効果が出ます。

ところが、C社長のホームページは見た目にばかりこだわってSEOが一切施されていなかったのです。覚えやすい社名は熱心な広報活動の甲斐もあり、知名度はありましたが、詳細な情報を知ろうと、客が「フューチャーハウス」の名前で検索しても検索結果に表示されません。「フューチャーハウス+地域名」でも見つかりません。同社のウリである「魔法瓶ハウス」での検索結果も同じです。

イラ菅首相の問題点

リニューアル後のアクセス数の「伸び」は下請け企業や社員といった関係者による閲覧です。リニューアルしたと耳にすれば、下請け企業はご機嫌取りのネタの仕入れのために、社員は暇つぶしも兼ねて、自社サイトを見るものです。

実のところ、C社長はホームページを何度もリニューアルしていました。それは、リニューアルすると一時的にアクセス数が伸びるからなのですが、それが身内によるものだと気がつかないままに大金を投じ続ける「リニューアル0.2」です。「検索結果に表れない」という問題点を放置し続けていることが最大の理由です。

自民党政権時代、政権が行き詰まると「内閣改造」を行い、それも難しくなると「総辞職」して総理大臣が変わりました。しかし、結局は同じ自民党から選出されるので問題点は放置されたままの「リニューアル」です。そして一時的に支持率が上がるのは、リーダー交代による見た目の新鮮さと期待を勘違いする国民の問題点です。当時、野党だった民主党はこのリニューアルを「クビのすげ替え」と批判していました。その民主党政権は鳩山由紀夫さんから、菅直人政権にリニューアルし、本稿執筆時、今またリニューアルの準備をしています。

現政権の「問題点」について菅直人さんの「人間性」を指摘する声もあります。鳩山前首相との「言った、言わない」といった小学生の口喧嘩レベルの話や、部下を怒鳴りつける「イラ菅」などです。それでは菅直人さんに猛省を促し……というのは問題点の本質ではありません。そんな人間性を見抜けずに票を投じた人々が、自省することなく新しい人を担ぎ上げることで禊ぎとする永田町の理論こそ、自民党時代から続く「問題点」なのです。

エンタープライズ1.0への箴言


「見てくれを変えただけでは何も変わらない」

宮脇 睦 (みやわき あつし)

プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)がある。

筆者ブログ「マスコミでは言えないこと<イザ!支社>」、ツイッターのアカウントは

@miyawakiatsushi