「計画停電で被災地支援」と思ったけれど

地震直近号の前回は、事前に入稿していた原稿が公開されましたが、今回が地震後の初書き下ろしです。東日本大震災の犠牲者に哀悼の意を表し、被災者の復興を祈念します。

弊社は「計画停電」のエリア内にあります。最大で3時間の停電など、「被災地に比べれば大したことない」とタカをくくっていました。むしろ望んでいたといっても過言ではありません。計画停電は首都機能の維持を目的としており、間接的に被災地支援に参加できるからです。

ところが、本稿を執筆中の3月20日午前9時現在、「1日2回の計画停電」を経験した東京都足立区の第5グループの率直な感想は「堪らない」。電気のない生活は「日常0.2」です。

最初の停電は3月16日水曜日。午前6時20分から9時20分まで予定されていた第4グループの停電が回避されたことから、午前9時20分から12時20分の第5グループも見送られるのではと楽観していました。それまでの2日間が見送られていたことからの慢心です。

信号が止まっているのに警官がいない主要道路

予定時刻を1分過ぎた9時21分、電気は消えず「停電回避」と独り合点して仕事を始めました。ツイッターをひやかし、スケジュールを再構築していた9時30分、「ぷつん」と電気が消えました。近隣に「無停電地域」もあり、事前に数ヵ所の「避難場所」を用意してありますが、「節電」が目的なので、不要不急の際は「あきらめる」ことにしていました。しかし、この日は午前中に処理しなければならない案件が片付いておらず、自転車で街へ出ます。

ニュース映像で見たように、街中の信号という信号がすべて止まっており、都心へと繋がる幹線道路にすら交通整理する警察官はいません。2時間後に同じ場所に戻ると、ほぼすべての交差点に警官が立っていたことから見て、東電が正確な停電開始時刻を警察が知らなかったのなら「連絡0.2」ですし、知っていて間に合わなかったのなら警察の「停電準備0.2」です。

この日は別グループにある「マクドナルド」をオフィスにします。ノートPCから無線LANサービスの「BBモバイルスポット」に接続してひと仕事完了。「ノマド(遊牧民)ワーク」と、停電生活を楽しみます。

足立区で孤島生活

初回の停電時間は2時間30分ほどで、12時過ぎには灯りが戻りました。翌日は朝6時20分から停電予定で、朝5時には仕事を開始し、停電開始までに急ぎの仕事を終わらせておきます。落ちたのは7時2分。停電後に読もうと開いた新聞紙に目を落とし、職業病とも言える肩こりのためにハンディマッサージ器のスイッチを入れて気が付きます。「停電だった」と。

電気のない「日常0.2」です。被災者に比べれば贅沢に過ぎるのですが、うっかりと「いつも」の生活をして苦笑いです。トイレも操作盤が切り離されているタイプは「流す」を押しても流れません。この場合、タンク脇の「隠し扉」にあるコックをひねり流します。

IP電話は使えず、携帯電話はつながりにくい状態です。ネットも死んでいるので、スカイプもメールもできませんが、活躍したのが「NTTメタル回線」、いわゆる「固定電話」です。無電源でも親機から通話ができ、外部スタッフに電話をかけて9割の無駄話と1割の作業指示をします。情報が切断されると人恋しくなります。

9時30分には電力が戻りました。1日2回の追加停電が実施されたという話は、この時点で聞いたことがなく、通常業務を開始します。そう、何事にも「最初」があることを、人はつい忘れてしまいます。

ついにはケーブルTVまで落ち、完全に遮断された世界

再び、落ちました。2回目の計画停電が午後1時50分から午後5時30分の予定で、午後2時に落ちました。電気がなければネットも使えず、仕事になりません。繰り返しになりますが、計画停電は都市部の「節電」が狙いです。移動して電気使用量を増やすのも野暮な話と、事務所の大掃除を始めて気が付いたのが「掃除機」が使えないこと。そこで、水に浸した新聞紙を細かくちぎって箒で掃きます。これは「0.2」ではなく「生活の知恵」。

夕方になって電気が戻り、大掃除でホコリだらけの身体を風呂で流し、飯を食べると、被災者に思いを馳せ、日中の大半が停電したとしても些末なこととひとりごちます。停電して外部情報が遮断された瞬間は不安になりましたが、テレビやネットに溢れる「不安情報」に接することで不安が増幅されていたことにも気づきます。

食後、仕事を再開します。そして3回目に「落ちた」のは「ネット」でした。KDDIの光回線が不通になったのです。その数分後、ケーブルテレビが落ちます。画面には「砂の嵐」。我が社はこの日、4回の「落ちる」経験をしました。

携帯電話からKDDIのサイトに接続し「通信障害情報」をクリックすると「404」とページが存在しないと表示されます。NTT回線を使いお客様センターに電話をかけ、オペレーターに事情を告げると計画停電のためだと言います。そして、そのことが携帯サイトに載っていない不備を指摘すると、「PCサイトのトップ画面の一番上には表示されています」とのこと。「ネット」が使えない状態で「ネット情報を見ろ」という「障害情報0.2」です。

節電中ですが文章は増量でお届けします

当初、東京電力は「計画停電のエリア変更はしない」としていましたが、3月20日の日経新聞1面で「夏には東京都の千代田、中央、港の3区以外の20区でも本格的に計画停電を実施せざる得なくなる」と軌道修正しました。これは当然です。

私は御所や国会、所管官庁などを除いたすべての地域でやるべきと考えます。東京新聞によれば、荒川区内の不動産店では「計画停電地域」であることを理由に賃貸契約がキャンセルされ、我が町・足立区では停電地域にある工場は不安定な操業を強いられ、非停電地域ではガンガン電気を使い生産を続けます。語弊を怖れずに言えば、「節電」に協力していない地域の商売が「有利」になっているというわけです。

そもそも、「計画停電」も「0.2」です。停電が1日2回になった理由を、寒波によりエアコン使用が増えたことと発表しましたが、その日山手線は「通常運行」に切り替わっていました。電気を使う電車を走らせ、エアコン使用が前提となる都市型オフィスに人を送り込み節電を呼びかけます。

第5グループが2回目の停電中、山手線に乗った友人は「車内はガラガラだった」と言っています。被災者のための協力なら惜しみませんが、空気を運ぶために停電を甘受しろと言われても納得できません。鉄道事業全体で電気の割り当てを決める「総量規制」が必要でしょう。そして、これは民間企業である東電の判断を待つまでもなく、「政治」が決める案件です。こちらにも0.2の影がちらつきますが、非常時の今はこれ以上言いますまい。

エンタープライズ1.0への箴言


「計画停電を抜本的に見直ししなければ、首都圏の経済活動が停滞して復興の足枷となる」

宮脇 睦 (みやわき あつし)

プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)がある。

筆者ブログ「マスコミでは言えないこと<イザ!支社>」、ツイッターのアカウントは

@miyawakiatsushi