【コラム】
勝手に連続企画にしていますが、IT系と呼ばれる企業でエンタープライズ0.2は少なくありません。それは、そもそも「IT系」というカテゴリーが曖昧で、守備範囲が広いことも大きな理由です。
新しい産業であるがゆえに「異業種からの参入組」も多く、プログラマやデザイナーならばまだしも、建築士や自動車整備工場が「ホームページ屋」の看板を掲げてもIT系となるのです。そこで繰り広げられる悲喜劇はネタの宝庫です。
OA機器のリース業も「IT系」によくある業種です。彼らのカルチャーは「体育会系」で、深く考えるよりまず身体を動かすことを得意としています。「飛び込み営業100件は普通」とは、経験者の知人の弁。まず、複数の企業が入居するオフィスビルの最上階までエレベーターでいき、階段で下りながら各階に営業をかけるのです。
同じフロアに複数ある場合は右から左へと流れていけば、100件など簡単だといいます。99%は断られても、残りの1%を狙う体力と根性の世界で、最新テクノロジーを駆使して合理的な選択をする「エンタープライズ2.0」とは対極の発想です。
C社は、F社長がコピー機リースの営業マンから起こした会社です。リース業は電話回線、パソコンと扱う商材の数が儲けを決定します。会社員は保守的な人が多く、同じ機械のリースなら「いつものところ」で調達したいと考えます。新しい取引先を開拓するというチャレンジより、未知の企業との取引で発生するリスクを怖れるからです。
ひとつの回線で電話とFAX、または電話とインターネットと2回線分使えるISDNの販売を始めてから、「ホームページ制作」を商材に加えるまではあっと言う間で、ITバブルを経たころにはすっかり「ホームページ屋」の看板の方が大きくなっていました。理由は「儲かる」からです。
コピー機のリースは強豪ひしめき「相場」が形成されており、「値引き」や「サービス」といった消耗戦の世界です。ところが、ホームページは言い値でした。C社も素人同然でしたが、そのC社に声をかける企業はより素人で、「いつもの業者」という根拠のない根拠で発注しており、もっともらしい理由で見積もりは丸呑みです。
ホームページの制作費は「原価ゼロ」で、通信回線とレンタルサーバ、さらに「最新パソコン」という「ついで買い」も期待できるのですから、笑いがとまりません。
美味い話を放置するほど甘い業界ではありません。他のリース業も続々と「IT系」へと鞍替え出馬してきます。白黒コピー機からカラーコピーへ、電話回線からISDN、光回線、常に新しい商材を探し、いち早く提供するのは彼らのビジネスでは当然のことです。
ホームページ制作に同業者が集まりだした時に、C社は「ネット広告代理店」へとジョブチェンジを試みます。オーバーチュアやアドワーズといった検索連動型広告への出稿代理店です。
検索連動型広告は自分で出稿内容や費用を管理できるのも大きな魅力ですが、C社のクライアントは素人以下です。出稿管理作業も覚えてしまえば簡単ですが、覚える気のない人にとっては苦痛以外の何者でもなく、それを代理するというサービスです。 マージンは広告費の10%。クリックされた分しか手数料が発生せず、1万円の広告費ならば千円、儲けは薄いですがそれは顧客主義の発露だとクライアントに説明します。
F社長の狙いはあくまで手数料。そして社員に指示します。
「クリック、クリック、クリック!」
クライアントの広告をクリックして、広告費を積み上げ、手数料収入を多くしようという目論見、クリック0.2です。
成功すれば「詐欺」と呼ばれたかも知れませんが、検索連動型広告はこうした不正を防止する処置を施しており、実害は僅かで、C社の手数料も数十円単位でしか増えませんでした。
この手法が儲からないと知ったF社長は、頭を使わずに身体を使います。タウンページを開き、上から順番に電話をかけ始めました。テレアポは飛び込みと同じで、100件も電話をすれば1件ぐらいは話になるものです。そこで「儲け損なった分」を補填しようとダイヤルを回します。
IT系を名乗っていますが、C社は「体育会系営業集団」。とあるIT系勝ち組企業は「走りながら考える」ことを社是としているといいます。体育会系企業は走れば答えが出ると信じています。両者の共通点は「走る」だけ。IT系という看板にはご注意ください。
最後に余談ですが、こんな電話がかかってきたことはないでしょうか。
「××の代理店●●ですが、ネット回線の確認をすることになりました」
同様のモノに、「通信料が安くなることに何か問題でもあるでしょうか」というものもあります。見知らぬ企業をそこまで心配してくれる優しさに頭が下がる思いがしますが、彼らの多くがF社長と同じ系統です。テレアポから面談の約束を取り付け、体力勝負の繰り返しアタックで「根負け」させ、各種の契約書にサインをさせる営業手法です。
そこで、私の事務所に呼んでみました。おざなりな「検査」のあと、新しい通信回線の提案がはじまりました。全てを聞いた上で、彼らの「提案」の矛盾点を一つ一つ指摘すると、「ぐうの音」がでない瞬間に立ち会いました。そして、すごすごと引き返していたった彼らの声が廊下から聞こえてきます。
「無理だよ。プロだもん、誰だよアポとったの」
時間があるとする遊びです。
エンタープライズ1.0への箴言
「IT系の看板自体が詐欺まがい・・・であることも。取扱品目に 事務機器、通信機器とあれば熟考が必要」
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