メジャーリーガーになるためには

テレビゲームの「ファミスタ」ばかりやっていてもプロ野球選手にはなれません。町内会の草野球で連続出場イニングを誇ってもスカウトはやってきませんし、巨人ファンの寿司屋の大将が語る「野球道」を暗唱できたからメジャーリーガーとなれると信じるのは痛すぎます。これらはすべて「間違った努力」です。

極端な例示に驚かれたかもしれませんが、エンタープライズ0.2では良く見かける光景です。そして、以前に紹介した世襲0.2系のW社長はこの典型です。

2007年にヤフオク、2009年に楽天の勉強を始めたのは、勉強会に集う先輩のつぶやきからであることは既に述べました。またこれも何度か述べましたが、経営者の集まる勉強会には「飲み会」というルビが打たれており、肝心の勉強時間はわずかなことは少なくありません。そのわずかから何かを得ようと、毎月欠かさず参加するW社長の姿勢は素晴らしいものです。しかし、W社長が参加する「勉強会」そのものが0.2だとしたら・・・ファミスタはファミスタに過ぎず、テレビ桟敷からのご高説はグランドでは役に立ちません。

合宿でヤフオクを学ぶ

ヤフオクを学ぶために箱根の温泉で合宿が開かれました。まとまった時間を確保することで、学びを深くするという建前です。この時、講師を務めたのは勉強会参加者の一人。壇上に立ち経験を語ります。経験は何よりの教師です。映りの悪くなったパソコンモニターをヤフオクに出品したところ1000円で落札され、この経験から「何でも売れる」と断言します。唯一の経験者ということから登壇しましたが、後にも先にもヤフオク経験はこれ1回限りで、すぐにネタ切れです。全ての経験を語り尽くした箱根の「放課後」は長いものとなり、酔いだけが深まったのでした。

楽天市場の学びに選ばれたのは「ガイアの夜明け」、テレビ東京の番組です。楽天市場に出店を決めた企業の特集があるとテレビ欄に発見したので、チャンネルを合わせて参考にするようにとメーリングリストでお触れがでます。

経営者の集まる「勉強会」で行われている実話です。どこからつっこめばよいのか目眩がしますが、ヤフオクは落札日を何曜日の何時にするか、タイトルの付け方、写真の掲載の有無などで落札価格が大きく異なり、とてもたった1回の経験で語れるものではありません。楽天市場にしてもテレビは参考程度にはなりますが、一般論として企業の取材番組から実戦向きの情報(=企業秘密)が語られることは希です。

市場と時代の変化から

そして今さらな感じですが、この「勉強会」に参加する企業の90%以上が「小売り」をしておらず、ヤフオクや楽天市場に出品する「商品」がありません。努力するベクトルが根本的に間違っているのです。

「情報」が価値を生むことは今も昔も変わりませんが、インターネットや携帯電話が普及するまで、中小零細の自営業者は取引先と顧客という狭い世界を右往左往して過ごしていました。そこで、情報交換の場として生まれたのが「異業種交流会」です。地域を軸に多 様な業種の企業が集うことで、多元的な情報収集とビジネス活性化が狙いです。バブル期に隆盛となったエグゼクティブサラリーマンによるそれと異なるのは、「同業者の排斥」です。これは地域という小さな「パイ(=市場)」を奪い合う関係であることへの配慮ですが、0.2な勉強会が生まれる理由のひとつとなります。同業者のいない異業種交流会では競争よりも調和、議論よりも妥協と波風を立てないようにするのは大人の商売人なら当然の振る舞いだからです。喧々囂々(ケンケンゴウゴウ)とビジネス論を闘わせるより、ワイワイガヤガヤと酒杯をかわすことが優先されます。

官僚はどこにでも誕生する

競争相手が存在する市場は成長します。安穏としていれば寝首を刈られ、敵失には一気呵成に攻め込みます。昨日の常識が今日は通じず、最新ノウハウは燎原の火の如く広まり陳腐化し、市場は常に新たな勝者の登場を待ちます。反対に競争がない市場で起こるのが「官僚化」です。平和な時代は杓子定規な処理により安定した秩序が産まれます。

官僚と組織は一心同体で、組織はヒエラルキーで構築されます。ヤフオク1回の経験で講釈を垂れたのは、経験者がヒエラルキーの上位者だからで、ガイアの夜明けの提案者は官僚トップでした。そして官僚型社会ではこういうことが起こります。

「外部の権威を嫌う」

今どきヤフオクや、楽天市場に詳しいものを探すのは「ネットで検索」すれば数秒で何百と見つかります。また知人に声をかけ、子供の保護者会で声をかけても見つかるでしょう。そうした外部からより詳しいものを招聘すれば、テレビを見るより何倍も役立つ知識を得られるのですが、高級官僚は自らの権威が傷つくことを嫌い、下級官僚は組織の崩壊を怖れ、外部の権威が高級官僚の権威を傷つけることがあれば、穏やかな凪の海でたゆたう勉強会を崩壊させるリスクがあるとこれを遠ざけます。そして、「勉強会」は学ぶ場ではなく集うことが目的化します。

しかし、感心します。今でも毎月欠かさず飲み会・・・もとい勉強会を開いているからです。そこにファミスタに燃えた学生の自分をみます。努力は裏切りません。ファミスタはそこそこに上手になりました。キャッチボールも怪しいままに。

エンタープラズ1.0への箴言


「有志の集まりも官僚化する。学びは師を探すところから始まっている」