客を遠ざけるのはとても簡単

商売でもっとも大切なことは「集客」です。極論すれば、どんな粗悪品でも1万人の客を集めれば必ず幾つか売れるものです。人通りが多い繁華街の路面店の賃料が高いのは、客を集めやすいからです。ホームページも客を集めなければなりません。露出(多くの人の目にとまる)を増やすためにオーバーチュアなどに広告を出稿し、SEOで検索結果の上位表示を目指すのも訪問者増加が目的です。

客を選ぶサイトがあります。会員限定サイトや年齢を問うアダルトサイトではありません。インターネットエクスプローラー(IE)とフラッシュの最新版がインストールされていないとコンテンツが見られないサイトです。そこに、ユニバーサルアクセスという概念はありません。フレーム構造の中のコンテンツはフラッシュで配置されており、その中のメニューをうっかりクリックしようものなら、ブラウザの「戻る」ボタンを押すしか帰り道はありません。デザイン重視のサイトにありがちな前衛的なものでもなく、脈絡のない写真が堂々と配置されています。8年ほど公開しているのですが、「ページランク」は「1」で、Googleの評価の正しさを知る思いがします。 もちろん、ここの社長もエンタープライズ0.2。本末転倒のまま驀進します。

最新礼賛とロートル絶賛

社長はこういいます。

「みんなWindowsを使っていて、みんなIEだから大丈夫」

多数派であるIEに「最適化」するなら間違いではありませんが、他のブラウザや環境で見られないような作り方をするのはやり過ぎです。最新版でしか見られないことについてはこう答えます。

「新しいものが一番いい」

あきれて絶句するという漫画のような経験は、0.2系の醍醐味です。自分が使うソフトや機械を最新にするのは好みに過ぎませんが、客にそれを要求するのは傲慢です。まるで、スーパーハイビジョンテレビでしか見られないCMのようです。ホームページもCMも、広く多数の人に見てもらうことで意味をなします。

0.2系には「一貫性がない」という性質があります。朝令暮改どころか、刹那で主張が替わります。

売り上げデータの集計には「Lotus 1-2-3」を使っています。ライバルソフトである「Excel」の短所を並べて「Lotus 1-2-3」の優位を主張するので、開発が止まっているという不利について訪ねると

「使い慣れている」

の一語に集約されました。それはアプリケーションの選択理由として正しいのですが、ならば、「ホームページを見に来た古いブラウザに慣れている客への配慮があってもよいのでは」という言葉は飲み込みます。弊社のお客さんでもないので。

最強パワーでのプレゼン

社長は自慢します。「Lotus 1-2-3」には独自のプログラムが入っており、必要に応じて開発させていると。この表現には語弊があり、正せば「マクロ」を仕込んでいるということです。フリープログラマにマクロもホームページも開発させており、社長専用機のパソコンも彼の見立てと胸を張ります。スペックはいつも最高で最強、動画の制作ができるぐらいですから、ソフトの貧弱さをマシンパワーが凌駕します。実は、「最新版限定ホームページ」もこのマシンにより決定づけられました。

「テレホーダイ」がネット接続回線の主役だった時代は、回線の遅さとサーバの貧弱さから、画像データの多いいわゆる「重い」ホームページは訪問者にストレスを与え敬遠されたものです。「これからはホームページ」とプログラマに発注すると、後日、画面いっぱいに画像が配置され、フラッシュで「ピコピコ」と文字が動くホームページが納品されました。実際のアップロードはプログラマの事務所で行うといい、公開前の「プレビュー」は、「CD-ROM」に納められたホームページを社長ご自慢の「最強マシン」で上映します。「CD-ROM」ならサーバの貧弱さも回線の遅さも心配無用です。産声を上げたときから、「訪問者」のことを考慮されないサイトだったのです。

類は友を呼ぶのとおりに

私もホームページ作りを生業としており、ブラウザによる「クセ」を最小限に抑え、環境を選ばずに見られるようにするのは、商売用ホームページの必須条件と考えます。訪問者の増加が商売に連動するからで、折角の訪問者が見られないというのは論外です。その為に非があれば認め改め、役立つ技術を貪欲に取り込みます。客が満足に見られないホームページは、2009年2月17日現在、実在します。素人ではなくプログラマとして報酬を得ており、ホームページ作りに限定しても、そのキャリアは10年を越えます。

社長はいいました「WindowsでIE」。Macユーザーも、Netscapeも、Firefoxも眼中にありません。人は価値観の近いものと親しくなります。両者は「客のことを考えない」という価値観で共通します。そして笑い話ではなく、多くの人にも重なります。理由はこうです。

「同じ価値観の人間ばかりの世界は居心地が良く、浸っているうちに視野が狭くなる」

意図的に友人や知人、取引業者のポートフォリオを組み替えることで、「0.2系」を回避することができます。

エンタープラズ1.0への箴言


無知の価値があると知るべし