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第3部 システム戦略と開発技術 - 3.情報システムの開発モデル

重要度 >>> ★★★☆☆

代表的なシステム開発モデルの種類と特徴、開発の各工程で行われる業務の内容などに関する知識問題が出題されるでしょう。またオブジェクト指向の概念に関する出題も考えられます。

合格への攻略ポイント

■システム開発モデル

システムを開発する場合、開発作業は複数の人員による共同作業となりますから、工程を段階的に進行させていくための統一的な「システム開発モデル」が必要となります。システム開発の主なモデルには次のようなものがあります。

モデル名 概要
ウォータフォール システム開発の手順を、水が上流から下流へ流れるように段階的に進めていく手法。基本的に前工程への手戻りは許されない。進捗管理がしやすいが、開発途中での仕様変更には対応しにくい
スパイラル 開発サイクルを細かく区切って、要求分析から実装までの段階を何度も繰り返し、その過程でユーザ要求を開発に反映させながら、システム全体を徐々に成長させていく手法。仕様変更に柔軟に対応することができる
インクリメンタル システムをサブシステムに分割して設計し、サブシステム単位でウォータフォールモデルを適用することで開発を進める手法。ユーザからの機能拡張の要求に対応しやすく、オブジェクト指向による開発では一般的な手法
プロトタイピング ユーザインタフェースやサブシステム単位で試作品を作成してユーザに試用させることでユーザが求めている要件を満たしているかどうかを確認し、ユーザの意見を開発作業に反映させる手法

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■システム開発工程の詳細

システム開発の工程においては、開発者だけではなくそのシステムを業務で実際に利用することになる利用者自身が積極的に関与する工程もありますので、具体的にどういった内容の作業を行うのかを明確にしておきましょう。また、どの工程でどんな文書を作成するのかを把握しておくことも必要です。

工程名 開発者 利用者 概要
1 基本計画 ユーザ部門が主体で、具体的な要求を収集・分析(要求分析)し、システムに組み込むべき機能を整理(要求定義)して「基本計画書」を作成する
2 外部設計 基本計画書の内容に従って、利用者から見たシステムの外部(主にユーザインタフェース部分)を中心に設計を行い、「外部設計書」を作成する
3 内部設計 外部設計書に従って、システムの内部(プログラムの構造や処理手順など)の詳細な設計を行い、「内部設計書」を作成する
4 プログラム設計 内部設計書に従って、モジュール※の構造、機能の分割、モジュール間のインタフェースなどを策定し、「プログラム設計書」を作成する
5 プログラミング プログラム設計書に従って、プログラマがプログラムを作成する。コーディングとも呼ばれる
6 テスト 開発したシステムをあらゆる角度から様々な技法を用いてテスト(チェック)する
7 保守運用 実際の業務に適用する。運用上、何らかの問題が発生すれば速やかに改善策を実行する
※ソフトウェアを構成する基本となるプログラムの最小単位のことで、独立した単機能プログラムです。ワープロでいえば文字に色を付けるモジュール、文字に下線を引くモジュール、文字を太字にするモジュールなどが考えられます。

■オブジェクト指向

システムの開発では、従来はシステムを操作する手順を中心にとらえた開発が行われていましたが、それを操作の対象へ重点を変えたシステム開発の方法論を「オブジェクト指向」といいます。オブジェクト指向の開発は、特定の機能を実現するためのプログラムやデータと、その機能を呼び出すための手続きを1つにまとめた「オブジェクト」を組み合わせることで行います。メリットは開発の工数の削減、工期の短縮、システムの品質の安定などの実現であり、デメリットは他人が作成したオブジェクトの信頼性の問題や、オブジェクト内部のバグの修正が難しいことなどです。また、同種のオブジェクトの集まりをクラスといいます。


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本試験出題例

ソフトウェア開発プロセスを"要件定義"、"システム設計"、"プログラミング"、"テスト"の各工程に区切って、この順に進める手法の長所はどれか。

  •  開発工程のどの時点でも、ソフトウェアの仕様変更に柔軟に対応できる。
  •  開発の進捗状況の把握が容易である。
  •  上流工程におけるレビューの工数が少なくて済む。
  •  利用者が、開発の早い時期にソフトウェアを試用できる。

【ITパスポート 平成21春期 問38】

解答と解説

問題のソフトウェア開発プロセスはウォータフォールモデルであり、この手法のメリットは、各工程ごとに段階的に進行させていくために開発の進捗管理がやりやすい点にある。

  •  プログラミング段階(下流工程)における仕様変更に対応することが難しい。
  •  確実な設計が求められるため、設計段階である上流工程におけるレビューの工数は比較的多くなる。
  •  プロトタイピングモデルの特徴である。

正解