あるクライアントであった話です。
小売現場の抜本的な改革案を経営層に提案したとき、その案があまりにも業界常識と異なっていたため、一部の役員から猛反対をされたことがありました。
その役員に対しては、押せども引けどもどうにも反応が思わしくありません。
そこで、社内でも有数のプレゼン巧者を連れてきて、改めて話をしてもらいました。
すると、状況一転、あれほど頑強に反論していた役員が手のひらを返したかのように強く賛意を示しているではありませんか。
実は、プレゼンをする前に担当役員に、「今回は社内随一の専門家を連れてきましたよ」と吹き込んでおいたのです。
プレゼンする姿が堂々としていたこともあり、序盤で相手の気持ちをがっしり掴む事に成功したので、うまくいきました。
こんなことはよくある話です。
ある統計では、医者が明らかに間違った処方を看護婦に伝えたとき、9割もの看護婦が医師の指示に従ったそうです。
看護婦から見れば、自分よりずっと医療知識のある人が言っているのだから、きっと間違いないのだろう、と思い込んでしまうのですね。
冒頭の例でも分かるように、その道の権威が発言していると思えば、多くの人はそれが正しいと感じてしまうものです。
実際に権威ではなくとも、そう思わせることに成功すれば、相手はあなたの言うことをすんなり受け入れるでしょう。
相手を説得する際に必要となるコミュニケーションスキルのひとつが、まさにこの権威付け。
クライアントとの折衝で失敗が多いこの業界です。うまく権威付けができれば、プロジェクトを有利に進めることができますよ。
著者紹介
吉澤準特 (ヨシザワジュントク)
外資系コンサルティング会社に勤務。守秘義務を破らない範囲でIT業界の裏話をつぶやきます。ファシリテーション、ビジネスフレームワーク、人材教育など執筆多数。日本能率協会、秀和システムそれぞれから書籍刊行。執筆依頼/インタビューお引き受けします。こっそりITIL Manager (v2)資格保有。
この記事は吉澤準特氏のブログ「IT業界の裏話」の過去記事を抜粋し適宜加筆・修正を行って転載しています。