今回の話は、私の所属するコンサルティング業界特有の話かもしれないので、読者の方の環境と違っていたら御容赦下さい。

昼休み……昼の食事とそのあとの休憩のための時間。

三省堂の大辞林に書かれている昼休みの定義です。ですが、定義通りの生活を送っているエンジニアは少数派でしょう。多くのエンジニアは、「昼の食事」しか享受できません。なぜか?

それは、一般に言われる昼の時間帯に食事をすることがほとんどないからです。

12時から13時に固定されていなくとも、その前後の時間帯を昼休みに設定している会社は多いでしょう。ですから、その時間帯の食事処はどこも混むんですよね。誰だって、混んでるよりは空いている時間にゆっくりと食事をとりたいものです。

クライアントとの予定が無い限り、プロジェクトというのは1日中要件定義や設計開発テストなどを行っているので、プロジェクトメンバーは昼休みを取る時間の融通がききます。ですから、店が空き始める13時以降に昼食へでかける人が多いのです。しかし、ここに一つの落とし穴があるのです。

例えば13時半に昼食に出かけ、30分で食事から戻るとしましょう。すると、14時にプロジェクトルームに戻ってくることになります。戻ってきて、辺りを見渡すとどんな状況でしょう。先に昼食を食べていた人々が、一生懸命仕事をしている光景が目に入ります。そんな中、コーヒー片手に雑誌を読んでくつろぎのひと時……などということが可能でしょうか?

無理です。

「そんなもの読んでないでさっさと今日のタスクを仕上げろ」、という冷たい眼差しが周囲の目から寄せられ、とても読む気になれません。仕方なく、30分しか休憩していないのに仕事に戻るわけです。ああ、今日も食事しかできなかった……。

昼食をとれるのは、まだ良い方かもしれません。スケジュールが詰まっていると、昼の食事さえ削って業務に勤しむ人も出てきます。うちの会社のメンバーは、成果物に対するコミットメントが非常に高い人が多いので、少しでも時間が残っているなら、完成度を高めようということがよくあります。クライアントとの打ち合わせや報告会が午後に控えているという日は、100%昼食はとりません(とれません)。

午前中から1打ち合わせギリギリまで資料を修正し、打ち合わせ後は、クライアントから持ち帰った宿題の整理、対応方針の検討などなど。気がつくと17時を回っているので、もう少し待って夕食を食べるか、ということになります。

もちろん、全員がこのような生活を送っているわけではなく、昼休みこそはクオリティオブライフに欠かせぬ要素だと言う人もいるわけでして、そういう人は食事後にプロジェクトルームに戻らず、別のところで時間を潰します。公園やオフィス内のベンチで横になって昼寝する人もいますし、トイレに篭って転寝をするケースもあります。

いずれにせよ、昼休みの質がかなり低いことに違いはありません。昼休みの安定的な確保こそ、エンジニアの生活環境を改善する第一歩。

「今からお昼に行ってきます。1時間後に戻ります~」

そうサラッと言い抜けることを繰り返して、昼休みの時間を継続して確保していきましょう。何か言ってくる人がいれば、「昼に休憩すればもっと品質の高い仕事ができる」くらいに言い返してやりましょう。

著者紹介

吉澤準特 (ヨシザワジュントク)

外資系コンサルティング会社に勤務。守秘義務を破らない範囲でIT業界の裏話をつぶやきます。ファシリテーション、ビジネスフレームワーク、人材教育など執筆多数。日本能率協会、秀和システムそれぞれから書籍刊行。執筆依頼/インタビューお引き受けします。こっそりITIL Manager (v2)資格保有。

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この記事は吉澤準特氏のブログ「IT業界の裏話」の過去記事を抜粋し適宜加筆・修正を行って転載しています。