チームラボの猪子さん、使い方はやっぱりクリエティブ?

さまざまな業界で活躍する時代の先駆者。彼らが使っている携帯に注目してみると、iPhoneユーザー比率が多いことに驚かされる。そこで本連載では各界で輝く「気になるあの人」を訪ね、彼らの個性あふれるiPhone生活に迫っていく。今回話を伺ったのは、チームラボ株式会社の猪子寿之社長。独特の語り口と鋭い視点で世間を説く、猪子社長ならではのiPhone活用術とは。

チームラボ 代表取締役社長の猪子寿之氏

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――猪子社長がiPhoneを購入したのはいつですか? どんな使い方をしていますか?

iPhone 3Gが日本で販売されてから1カ月後くらいに購入しました。電話機能は今まで使っていたドコモのN906iμを引き続き使っていて、iPhoneはサブで持っています。実はあまりモノには執着しないほうなんですが、やはりiPhoneの登場には注目しましたね。また、電話の充電をすぐに切らしてしまうので、そんな時にもう一台持っていると安心なんです(笑)。今は、ネットをみたり、映像を入れたり、iPodとして音楽を持ち歩いたり、モバイルパソコンのような感覚で使っています。アプリケーションでは音楽アプリが面白いですね。iPhoneならではのものが沢山あるんです。

――iPhoneで映像や音楽を楽しんでいるという猪子社長のお気に入りアプリは?

(チームラボの)スタッフに教えてもらったんですが、『RjDj』ってアプリ知ってます? ちょっとこれ、聴いてみてください……そう、iPhoneの内蔵マイクが周囲の音を拾い、その影響を受けながら音が自動生成されるんです。これを知ってから、「既に作曲されたものを聴く」という音楽の概念がなくなりました。自分の生活リズムに音が合わせて曲がつくりあげられるから、街を歩いていても雑音が音色になる。一週間これを聴いて生活していれば、みんながピースになるんじゃないかな(笑)。

猪子氏が推薦するiPhoneアプリ「RjDj」。iPhoneのマイクを使って周囲の音を取り込んで、オリジナルの音楽を作成できる"反応音楽"アプリ。アプリを起動するとヘッドセットの利用を促すメッセージが表示され、あらかじめエフェクトが設定された「Scene」を選択すると、マイクから取り込んだ音が変化して再生される。専用サイトから、さまざまなSceneをダウンロードすることも可能だ

RjDj
価格 無料 ファイルサイズ 6.7MB
カテゴリ ミュージック 販売 Reality jockey
対応OS iPhone OS 3.0以降 対応デバイス iPhoneおよびiPod touch(第2世代)

――こうしたiPhoneの独創的なアプリが、猪子社長の斬新な発想やビジネスのあり方に影響をもたらすことはありますか?

最近当社がリリースした「SKETCH PISTON 4 for BAMBOO」はまさにRjDjのユーザー参加型の発想が影響していると思います。落書きする楽しさを提案する、既存の「SKETCH PISTON」に音をプラスしてみたのがこれ。こうやって画面に線を引いてみると……ほら、いま描いた線が楽器になる。子供のころは箸とか茶碗とか世の中の全てのものが楽器だったのに、大人になるとなぜか作曲は特殊な技能だと思いこんでしまうんですよね……。そこで今回作ったのがSKETCH PISTON 4なんです。これを試してみれば、RjDj同様に音を作りだす楽しさに気づくことができると思います。

スケッチピストンシリーズは、絵が上手くなくても、子供のころのように、落書きする楽しさを楽しめるWebコンテンツ。「SKETCH PISTON 4」は、同シリーズ第4弾で、ワコムのペンタブレット「Bamboo」のキャンペーンサイトだ。落書きした線やスタンプが音楽を奏でる仕様になっている。線やスタンプを組み合わせていくことで、オリジナルの音楽を作成できる

――常に独自の視点を持ち、忘れかけていた「楽しみ」を世に提案するチームラボ。彼らが携わった最近のプロジェクトとは?

放送作家の小山薫堂さん、デザイナーの山中俊治さんとコラボレーションして携帯電話のコンセプトモデルを発表しました。我々(チームラボ)が提案したのは携帯電話のユーザーインタフェースで、コンセプトは"操作すると美しい"です。通常iPhoneなどのタッチケータイはアイコンなどの表示を目で確認し、タッチして操作します。そこで我々は、タッチパネルを採用しながら、操作画面を全く見なくて良いインタフェースを考えました。山中さんが提案された本体のデザインがコンパクトな両面ディスプレイの折りたたみタイプだったので、上下の画面を、上は表示系画面、下は操作系画面というかたちに分けました。グラフィックは、ただ“ボタン“を配置する平面的なデザインではなく、”無限に広がる空間”をイメージしたものになっているのが特徴で、操作するという行為によって美しさが完成するものを目指しました。つまりここでも"参加型"を意識しているんです。

猪子氏、小山氏、山中氏の3名がコラボレーションした携帯電話。このコラボ携帯は、FUJITSU モバイルフォンデザインアワード2009の特別企画としてデザインされ、CEATEC JAPAN2009の富士通ブースに展示された。

――ますます進化をみせる猪子社長が今後のiPhoneに求めることは?

iPhoneに限らず、携帯はもっと楽しいものであるべきです。もちろんデザインなどのハードの部分も大切ですが、思想とかプロセスをもう少し重んじてもいいのでは? と思います。そしてそこには、日本的なインタフェースが必ずや必要になると思うんです。例えば日本人は表現するのが得意です。そんなクリエイティブな特性を活かして、情報を"利用する"だけでははく"表現する"ということにフォーカスをあてた携帯が出てくれば楽しいですね。また、毎日さまざまなiPhoneアプリが生まれています。携帯はそうしたインターネットサービスの受け皿であり、ユーザーがより自由に"表現する"ツールとして位置づけるべきだと思っています。

猪子寿之(いのこ・としゆき) チームラボ 代表取締役社長

1977年徳島市出身。2001年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。ニュースポータル「iza」 (Web of the year 2006 新人賞)、オモロ検索エンジン「sagool」、だらだら動画検索サイト「サグールテレビ」などのWebの他、アート活動として、2008年フランスパリルー ヴル宮 国立装飾美術館で開催された、日仏国交150周年記念パリ感性展で、映像インスタレーション「花と屍」を発表。「水墨空間『然』」が「アジアデジ タルアート大賞」「福岡県知事賞」「文部科学大臣奨励賞」の3賞を受賞。同年「第6回Webクリエーション・アウォード」にて、「Web人賞」を受賞。

(瀬川あずさ@ゴーガ)

◆株式会社ゴーガ (港区南青山/代表取締役 小山文彦)
自分を追求し、社会に貢献する―このスタイルにこだわりながらウェブコンサルティング、データ分析、ソフトウェア開発などを手掛けるウェブマーケティング企業。
・ホームページ:http://www.goga.co.jp/
◆瀬川あずさ
株式会社ゴーガにてプレスを務める傍ら、フードアナリストやライターとしても活動。各メディアにて情報発信を行っている。
・食いしん坊プレスのブログ:http://segawa.goga.co.jp/
・Azusa's Gourmet Diary:http://ameblo.jp/segawa-azusa/
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