今年の始めにフジテレビ系『とんねるずのみなさんのおかげでした』の「安すぎて伝わらない素人芸選手権」に登場して以来、すっかりバラエティ番組に定着した感のある女性宴会芸集団「あやまんJAPAN」。忘年会シーズンが本格化するこの師走に、とうとうCDデビューを果たしてしまった。

あやまんJAPANのルーキタエ、ファンタジスタさくらだ、あやまん監督(左から) 拡大画像を見る

曲はもちろん、番組で披露したハイテンション猥歌『ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー』。これは2000年に木村由姫が歌った『LOVE&JOY』という曲を基にした替え歌で、石原慎太郎都知事が聴いたら問答無用で有害指定にするであろう代物。最近の猥歌といえば、キャンパスナイターズの『エロくないのにエロく聴こえる歌 ~しこたまがんばれ!~』や恵比寿マスカッツの『バナナ・マンゴー・ハイスクール』があるけれど、この両者と比較しても、あやまんJAPANの品の無さは群を抜いている。それなのに本人たちは普通に綺麗な美女揃いであるというギャップが、このユニットの面白さだ。

彼女たちの代名詞ともなっている「ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー」は、なんと「女子中高生ケータイ流行語大賞2010」の候補にもなっている。本当にこんな破廉恥な猥歌が女子中高生に流行っているのだろうかと不審に思い、雑誌『Seventeen』2011年1月号を開いてみたら、「読者が選ぶ2010年の ST-1大賞」という企画の中で、「休み時間の遊び部門」で『Fit's』ダンスとともに「あやまんJAPANごっこ」が本当に紹介されていたので驚いた。

あやまんJAPANが忘年会に飛び入り参加する、という企画を通信カラオケのDAMが展開するなど、彼女たちは今や「実際に会えるアイドル」として飲み会で引っ張りだこ。そもそもあやまんJAPANは総勢100人近く存在するらしく、二軍や三軍まであるという。仕掛け人は氣志團の綾小路翔だという話もある。つまりあやまんJAPANとは<夜のAKB48>なのであり、アイドルの「清」の部分を抽出して生みだされた若きグループアイドル達が背負いきれない「性」の部分のみがニョロリと押し出されて変態を遂げた鬼っ子なのだと言える。

彼女たちが踊り歌う姿を見ていると、どういうわけか映画『地獄の黙示録』のラストシーンが思い出される。終末の予感が漂う密林の中で繰り広げられる狂乱のお祭り騒ぎの中、唐突に爆撃の炎が燃え上がる、あの結末。なにかが終わる時というのは、「ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー」というようなヤケクソ気味な高揚感に包まれたまま、唐突に終わるものなのかもしれない。

真実一郎

サラリーマン、ブロガー。『SPA!』(扶桑社刊)、『モバイルブロス』(東京ニュース通信社)などで世相を分析するコラムを連載。アイドルに関しても造詣が深く、リア・ディゾンに「グラビア界の黒船」というキャッチコピーを与えたことでも知られる。著書に『サラリーマン漫画の戦後史』(洋泉社刊)がある。ブログ「インサイター