はじめに

Javaの標準的な統合開発環境Eclipseは現在3.3(Europa)が最新の安定版だ。しかしEclipse Foundationではすでに次期バージョンである3.4(Ganymede)の開発が進められれいる。Ganymedeは現在マイルストーンビルド(M5)という段階で、今後さらなるマイルストーンビルドとRC版を経て、2008年6月には正式リリースされる予定となっている。今回はM5時点で実装されているGanymedeの新機能の中から主なものをピックアップして紹介する。

新たなパッケージ

EuropaではJava開発者向け、JavaEE開発者向け、C/C++開発者向けなど、用途に応じたプラグインを同梱したいくつかのパッケージが提供されるようになったが、Ganymedeでは提供されるパッケージがさらに追加されており、M5時点でのダウンロードページには以下のパッケージが用意されている。

図1 Ganymedeのダウンロードページ

新たに追加されたのは以下の2つのパッケージだ。

  • Eclipse IDE for Software Architects and Modeling
  • Eclipse IDE for Reporting

前者はUML2やOCL Toolsなどを含むモデリング向けのパッケージ、後者はBIRTを含むレポーティング向けのパッケージとなっている。

パンくずリスト

Ganymedeのユーザインタフェース上で最もインパクトのある新機能がJavaエディタでのパンくずリストだろう。ツールバーで「Toggle Breadcrumb」アイコンをトグルすることでJavaエディタの上部に以下のようなパンくずリストを表示することができ、パンくずリストをクリックすることで階層をたどって目的のクラスを探すことができる。

図2 パンくずリストを表示したところ

図3 パンくずリストから他のクラスへ遷移

パンくずリストは新たに導入されるユーザインタフェースなだけにM5時点でも実験的な機能とされており、ユーザからのフィードバックしだいではGanymedeの正式リリースまでに大きな変更が加えられる可能性もあるようだ。

JDTの新機能

JDTではコンパイラのオプションを変更することでCLDC 1.1互換のクラスファイルを出力できるようになったほか、起動構成を選択して実行可能なJARファイルをエクスポートできるようになった。

また、リファクタリングやコード補完など多岐に渡って細かな改良が加えられている。中でも文字列の連結をStringBufferに変換するクイックアシスト(CTRL + 1)や、コード補完(CTRL + SPACE)時に本来であればキャストが必要な箇所でキャストの記述を補完してくれる機能は非常に便利だ。

図4 文字列の連結をStringBufferに変換

図5 キャストが必要な箇所でコード補完を行うと…

図6 キャストの記述を自動的に追加してくれる

このほかにもコードフォーマッタやバリデーション機能など、多くの機能に新機能が追加されている。目立たない部分ながらJavaでのプログラミング効率を向上させてくれることだろう。

検索機能の強化

地味ながら改善が目立つのが検索周りの機能だ。たとえばファイル検索では以下のように検索結果に行番号が表示され、マッチした部分がハイライト表示されるようになった。

図7 テキスト検索の結果

また、ファイル検索ダイアログで置換を行う場合、リファクタリング時と同様に置換後の結果をプレビューで確認できるようになった。

図8 テキスト置換のプレビュー

プラグイン開発機能の強化

Europaではプラグイン開発を支援する機能が大幅に強化されたが、Ganymedeではさらにさまざまな新機能が追加されている。なかでも特筆すべき新機能がPlug-in Spyだ。ワークベンチ上でALT + SHIFT + F1を押すと以下のようにプラグインの情報がポップアップ表示され、UI要素がどのクラスで実装されているのか、そのクラスはどのプラグインによってコントリビュートされているのかなどを調べることができる。プラグイン開発に非常に役立つはずだ。

図9 Plug-in Spy

その他の新機能

上記のほか、新たなビューとしてAll Markersビューが追加されている。これはエラーマーカやタスクタグ、ブックマークなど、すべてのマーカを表示するビューだ。個別のビューを使い分けるのが面倒という人には便利なビューだろう。また、ビューやエディタのタブをマウスのホイールボタンでクリックすることでクリックしたビューやエディタを閉じることが可能になった。

図10 All Markersビュー

Eclipseはすでに成熟したJava統合開発環境であり、Ganymedeの新機能を見渡しても派手な新機能は少ない。ただし、今回は触れなかったがWTPなどの周辺プラグインについてもGanymedeのリリースにあわせてバージョンアップが予定されている。これらのプラグインの新機能についても機会を改めて紹介したい。