LinuxのIDE事情

Windows環境ではMicrosoftのVisual StudioやBorlandのTurboシリーズなど古くからIDEが発達していたが、Linux環境ではこれまでEmacsやviといったテキストエディタが主な開発環境として利用されてきた。しかし近年、GNOMEやKDEなどの統合デスクトップ環境の普及に伴い、LinuxでもGUIを備えたIDEが登場してきている。今回はLinuxで利用可能なオープンソースのIDEを紹介する。

Java開発ならEclipse/NetBeans

Javaの開発環境としてはお馴染みのEclipseNetBeansをLinuxでも利用可能だ。とくにEclipseはGUIツールキットであるSWTがGTKを使用しており、GNOMEデスクトップとの親和性が高い。操作方法もWindows上で利用する場合とほとんど同じなのでとまどうことはないだろう。もちろん豊富なプラグインの数々も利用可能だ。

図1 Eclipse

図2 NetBeans

EclipseやNetBeans以外にもJDeveloperやIntelliJ IDEAなど、Javaで記述されたIDEの多くはLinuxでも動作する。このあたりはクロスプラットフォーム性の高いJavaならではといえるだろう。ただし、LinuxではJava実行環境としてgcjが標準でインストールされていることがあるが、Java IDEの多くはSunが提供するJDKでないとうまく動作しない。IDEに限らずLinux上でJavaアプリケーションの動作に問題がある場合はgcjで実行されていないかを確認してみて欲しい

KDE用統合開発環境 KDevelop

Linuxデスクトップ環境としては現在GNOMEとKDEが双璧を成しているが、このうちKDE用の統合開発環境として開発されているのがKDevelopだ。もちろんKDevelop自体もKDEアプリケーションとして構築されているため、KDEデスクトップとの親和性は非常に高い。多くのLinuxディストリビューションでは統合デスクトップ環境としてKDEのパッケージが用意されており、KDevelopもパッケージ管理システムを用いてインストールすることができる。

図3 KDevelop

KDevelop自身はコンパイラやデバッガ等を含んでおらず、gccのフロントエンドとして動作する。C++を使用したKDEアプリケーションの開発だけでなく、Perl、Ruby、PHPといったスクリプト言語やJavaにも対応している(ただしコード補完などの高度な機能はC/C++でしか利用できない)。また、Qt(KDEで使用されているGUIツールキット)によるユーザインタフェースをグラフィカルにデザインするためのGUIデザイナが統合されており、Qt/KDEを利用したGUIアプリケーションの開発も可能となっている。

.NET開発もサポート MonoDevelop

Monoプロジェクトではオープンソースの.NET実装であるMonoを開発している。最近では多くのLinuxディストリビューションでMonoのパッケージが提供されるようになっており、デスクトップ検索ツールBeagleなどMonoベースのLinuxアプリケーションも利用されるようになってきている。

MonoDevelopはMono上で動作する.NET統合開発環境だ。主にC#向けのコーディング支援機能が提供されているが、Gtk#(Gtk+のC#バインディング)を使用したGUIアプリケーションを開発するためのSteticと呼ばれるGUIビルダが統合されているほか、C#ほどの機能は提供されていないもののVB.NETやASP.NETにも対応している。

図4 MonoDevelop

MonoDevelopはVisual Studio 2003/2005のプロジェクトを読み込むこともできる。また、最近のIDEらしくプラグインで機能を拡張することも可能となっている。

まとめ

Linuxでも豊富な機能を備えたIDEを利用することができる。とくにJava IDEであるEclipseやNetBeansのように、すでにWindows環境で豊富な実績と高い評価を得ており、Java開発に限ればLinuxでもほとんど支障はないといえるだろう。

KDevelopやMonoDevelopはLinux上で動作するアプリケーションを開発するためのIDEだ。商用製品としてはBorlandのKylix(DelphiをLinuxに移植したもの)など、登場が早すぎてうまくいかなかったものもあるが、これらのIDEの存在が新たな開発者をLinuxに呼び込むためのきっかけとなるかもしれない。Linuxでのプログラミングに敷居の高さを感じている方はこれらのIDEを試してみてはいかがだろうか。