.NETの開発環境事情

Microsoftの.NET Framework上で動作するアプリケーションの開発ではVisual Studioを利用するのが一般的だ。.NET Frameworkそのものは無償で提供されており、コマンドラインコンパイラを利用することで無償で開発を行うことは可能ではあるが、作業効率が非常に悪い。Visual Studioは有償の製品であるため、趣味でちょっと試してみたいというプログラマには大きな障壁となっていた。

Visual Studio 2005 Express Edition

Visual Studio 2005 Express EditionはVisual Studio 2005の最下位エディションに位置する製品で、Microsoftから無償で提供されているものだ。有償のエディションと比較するとアイコンエディタやクラスダイアグラムなどの機能が利用できないほか、デバッグやリファクタリングなどの機能にも制限がある。Visual Studio 2005 Express EditionはMicrosoftのWebサイトからダウンロードすることが可能だ。

図1 Visual C# 2005 Express Edition

機能制限があるとはいうものの、コード補完やエラーの即時チェックなどの基本的なコーディング支援機能やGUIビルダ、デバッガなど一通りの機能は利用することができる。個人レベルで.NET開発を行うのであれば充分に魅力的なIDEといえる。なお、Express EditionではC#、C++、Visual Basic.NET、J#(英語版のみ)およびASP.NET用のVisual Web Developerがそれぞれ独立したIDEとして提供されている。

また、いまのところ英語版しか提供されていないものの、最新のVisual Studio 2008もExpress Editionが無償で提供されている。詳しくはこちらのサイトを参照してほしい。

SharpDevelop

さて、無償で.NET開発を試すのであれば上記のVisual Studio 2005 Express Editionを使えばよい。しかし実はもう1つの有力な選択肢が存在する。それがSharpDevelopだ。

SharpDevelop はオープンソースで開発されている.NET向けの統合開発環境だ。初期の頃は機能面で不足を感じることも多かったが、最近では開発言語としてC#、 Visual Basic.NETをサポートし、GUIビルダやデバッガなどの機能も利用可能になるなど充分な機能が搭載されている。

SharpDevelopはこのサイトからダウンロードすることができる。

図2 SharpDevelop 2.2

図2のスクリーンショットを見てもわかるように、基本的な部分の使い勝手はVisual Studioに良く似ている。実際のところ簡単なGUIアプリケーションを作る程度であればVisual Studioとほとんど違和感がないくらいだ。また、機能面ではまだ充分とはいえないもののASP.NETやWPFにも一応対応している。

SharpDevelopの主な機能を以下に挙げておこう。かなり強力な機能を備えたIDEであることがおわかりいただけるのではないだろうか。

  • コード補完機能を備えたコードエディタ(C#、VB.NET、Booに対応)
  • アプリケーションの実行、デバッグ
  • リファクタリング機能(リネームなど簡単な機能のみ)
  • フレームワークとしてMonoもサポート
  • TortoiseSVNがインストールされている場合はSharpDevelop上からTortoiseSVNを呼び出すことが可能
  • NUnitによるユニットテストやNCoverによるカバレッジ測定が可能
  • FxCopを使用したコード分析
  • NAntが統合されている
  • C#からVB.NET、Booへのコード変換
  • XML、HTML等の編集支援機能

気軽に.NETプログラミングをはじめてみよう

近頃はさまざまなプログラミング言語の処理系や開発ツールがオープンソースで提供されてケースが増え、ひと昔前であれば非常に高価な開発環境と同等の環境を無償で揃えることも可能だ。

.NETの世界でもVisual Studio 2005/2008 Express EditionやSharpDevelopの存在によって無償で統合開発環境を使用した開発を行うことができる。ホビープログラマにとっても.NETでの開発が身近になるだろう。.NETでのプログラミングにも気軽にトライしてみてほしい。