Eclipseに欠けているもの

NetBeansなど他のIDEと比較したときにEclipseの弱点としてたびたび挙げられるのが「標準機能が貧弱」という点だ。たしかに標準状態のEclipseにはGUIアプリケーションを開発するためのGUIビルダも付属していないし、Webアプリケーションを開発するための機能もない。これらの機能を利用するためにはユーザがプラグインをインストールする必要があるのだ。これは面倒なだけでなく、チーム開発時に開発環境を揃えにくいという問題も引き起こすことになる。

Eclipseのこの欠点を解決してくれるのが、さまざまなEclipseディストリビューションだ。これらのディストリビューションではEclipse本体に加えていくつものプラグインをあらかじめ同梱しており、インストールするだけで必要な機能をすべて揃えることができる、いわば"オールインワンパッケージ"だ。

今回は代表的なEclipseディストリビューションについてその概要と特徴を紹介し、各ディストリビューションがどのような機能を備えているかを比較する。

Eclipse Callisto

Callistoはディストリビューションではなく、Eclipse 3.2で標準で登録されている更新サイトで、Visual EditorやWTP、TPTPといったEclipseプロジェクト謹製のプラグインをインターネット経由でインストールできるようにするものだ。これまでは各プラグインおよび依存プラグインを個別にインストールする必要があったため、Callistoが提供されるようになったのは大きな進歩といえる。

図1 Callistoの更新サイト

ただし、ランゲージパックはCallistoの更新サイトには含まれていないため、日本語化する場合はこれまで通り手動でランゲージパックをインストールする必要がある点が残念なところだ。

MyEclipse

米Genuitec社が提供している商用製品で、Eclipseベースのディストリビューションの中では老舗の部類に入る。Java開発全般をサポートしており、オープンソースのプラグインを組み合わせ足りない部分を独自に作り込むという開発スタイルを取っている。StrutsやJSFからHibernate、Spring Frameworkもサポートするなど非常に高機能なうえ、Ajax開発機能やNetBeansのGUIビルダMatisseをEclipse上で動作させるMatisse4MyEclipseといったユニークな機能も備えている。サイトはこちら

図2 MyEclipse(Mattise4MyEclipse)

なお、日立製作所がGenuitecと共同で日本語版を開発しており、このサイトから日本語のトライアル版をダウンロードすることができる。

Exadel Studio

米Exadel社が提供している商用製品で、Struts/JSFを使用したWebアプリケーション開発に特化したディストリビューションとなっている。現在はWTPをベースとしたEclipseプラグインだが、もともとはStruts Studioというスタンドアロンで動作するStruts用の開発支援ツールが起源だ。その後、バージョンアップに伴いEclipseプラグイン化され、JSFやHibernate向けの機能などが追加され現在に至っている。サイトはこちら

図3 Exadel Studioのワークベンチ

Exadelは先日RedHatとの提携を発表し、Exadel StudioはRedHat Developer Studioとしてオープンソース化されることとなっている。RedHatといえば少し前にオープンソースのJavaアプリケーションサーバであるJBossを買収したことも話題になったが、JBoss向けのIDEとして開発されているJBossIDEやHibernate Toolsの機能もこのRedHat Developer Studioに統合される予定だ。

Easy Eclipse

Easy Eclipseは他のディストリビューションとは若干毛色が異なっており、たとえばデスクトップアプリケーション開発向け、Webアプリケーション開発向けといった具合に、目的に応じてプラグインを組み合わせたさまざまなディストリビューションを提供している。Javaだけでなく、PHPやPython、C++開発用のディストリビューションも用意されている。さらに追加でインストール可能なプラグインも多数容易されており、これらはすべてインストーラ形式で配布されているため容易にインストールを行うことができるようになっている。サイトはこちら

図4 Easy Eclipse

All-In-One Eclipse

All-In-Oneプロジェクトによって開発されているオールインワンパッケージで、EclipseやVisual Editor、WTPなどEclipseプロジェクトから提供されているプラグインを中心にオールインワンパッケージにしたもの。Eclipseのバージョンが最新ではなかったり、Callistoの登場によって若干有難味が薄れた感もあるが、ランゲージパックが含まれており最初から日本語で利用可能なのは嬉しいところだろう。サイトはこちら

AmaterasIDE

Project Amaterasによって開発されているオールインワンパッケージで、同プロジェクトによって開発されているStruts、JSF、UMLプラグインなどを中心にオープンソースのプラグインで構成されている。プラグインは「GUIアプリケーション開発」「Webアプリケーション開発」などいくつかのカテゴリに分類されており、必要なもののみを選んでインストールすることが可能だ。サイトはこちら

図5 AmaterasIDEのインストーラ

AmaterasIDEのユーザインタフェースはほぼ全て日本語で表示される。日本語のリソースが提供されていない海外製のプラグインについては独自に日本語化を行っている。

まとめ

各ディストリビューションにはそれぞれ方向性の違いがあり、カタログスペック上は同等の機能であってもディストリビューションによって完成度やサポート内容が大幅に異なる場合もあるため、導入に当たっては慎重な検討が必要だろう。用途によってはこれらのディストリビューションにさらに必要なプラグインを追加して利用するという方法も考えられる。すでにオープンソースでさまざまなプラグインが出回っており、このあたりの自由がきくところはEclipseのメリットといえるだろう。