【コラム】

その住宅ローン借りて大丈夫? 年代別に検証する

5 リタイア後の住まいの取得

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「リタイアする年齢で住宅ローンを借りる? 」…… と思われるかもしれませんが、今や70歳を過ぎても働くケースは普通にあります。自営していれば定年はありませんし、これからは働き方も多様化し、高齢になって住まいを取得するケースもまた多様化していくと思われます。

私が住むマンションも新築時にほぼ30歳程度の同年代で入居し、今現在それぞれリタイアしつつあります。リタイア後に故郷にマンションを買って転居するケースもあり、年齢を経ても様々な理由で新しく住まいを手に入れて転居するケースが多いと実感しています。

定年後の住まいの取得とは、どんなケース?

定年後に住まいを取得するケースはどんなケースがあるでしょうか。いくつかのケースを考えてみましょう。

■ 管理のしやすい小さめのマンションに転居する

今まで暮らしていた住まいを売却して転居するとは限りません。子供に譲るためにそのままにしたり、もっと高齢化した場合に施設に移るときまで貸したりして資産として温存するケースもあります。

■ Uターンして故郷で暮らす

故郷といっても実家に住むとは限らず、老後の人生に快適な住まいを手に入れるケースもあるでしょう。冒頭に述べたように故郷にマンションを買って、転居していくケースも身近にあります。

■ Iターンして老後は新しい土地で第2の人生を楽しむ

60歳で一旦定年といっても、今の60歳はまだまだ新しいことへ挑戦できる若さを持ち合わせています。新しい仕事にチャレンジしたり、新しい土地で第2の人生を楽しんだりも十分考えられます。

■ 子供と2世帯住宅を建てる

2世帯住宅は一定のサイクルで度々注目されてきました。不動産が高騰し若い世代が新規に住まいを取得しにくくなった、経済が低迷し住まいにお金をかけるのが不安なので実家の土地を活用したい、震災で絆の大切さを感じたなど、その時々の社会状況を反映してきました。先日もリタイア後に2世帯住宅を建てる相談を受けたばかりです。

■ 分譲型の高齢者住宅を購入する

こうした形で、新しく住まいを取得するケースはますます増えていくと思われます。

■ 住まいが老朽化したので、これからも同じ場所で暮らせるように建て替える

健康であれば、まだ20年は生活する住まいです。特に女性の場合は30年近く暮らすことになります。私が住宅メーカーに勤務し、営業職として働き始めた時に、最初に契約してもらった方は、ちょうど定年退職したばかりの方でした。

■ バリアフリーにするためにリフォームする

住み慣れた地域や住まいにこれからも住み続けるために暮らしやすくリフォームするケースは非常に多くあります。

■ セカンドハウスを手に入れる

単に老後は別荘にたびたび出かけてのんびりしたいというものだけではなく2地域居住志向のケースや、UターンやIターンは不安だけど別の地域でも暮らしてみたい、いきなりは不安なので小さなセカンドハウスを手に入れてのお試しケースなどが考えられます。

この世代のリスクと注意点

先々を長く見通す必要もなく、一定の資産があり、比較的計画が立てやすいはずの年代です。しかし、平均余命の伸びで100歳の長寿を獲得することもまれではありません。また、どれだけ医療費や介護費用が掛かるかも未知数です。健康保険や介護保険があってもそれを超える部分は自己負担となります。また寿命が延びたといっても、健康寿命はたいして延びていません。つまり不健康期間が長くなったということで、その分医療費や介護費用がかさむことになります。どんなことが起きるかを想定して今後の住まいを考える必要があります。

■ 医療費が思ったよりかさむ

何歳くらい以降は積極的治療をしない、延命治療はしないなどの考え方によっても医療費は違ってきます。

■ 介護費が思ったよりかさむ

夫婦のどちらか一方が配偶者を介護できるとは限りません。男女の健康寿命にはさほど差がないのです。

■ 夫婦の片方が施設に入り、生活が二重になる

年金ではほぼ片方の生活費だけしか賄えません。もう一方の生活費は預貯金を取り崩して賄うことになります。

■ 両方が施設に入る

自立の場合、要支援・要介護の場合、それぞれどの程度の施設に入居したいか検討をつけて新たな住まいに資金配分することが肝心です。

いくつまでローンが借りられる?

住宅ローンはいくつまで借りられるかをフラット35のケースで考えてみましょう。

借り入れできるのは? ⇒ 70歳未満。親子リレーを利用する場合は、70歳以上でも申し込み可能です。

借り入れられる年数は? ⇒ 返済は80歳までで、59歳で申し込めは20年間のローンが組めます。

どんなローンや特約がある?

比較的年齢の高い方が借りる住宅ローンにはどのようなものがあるのでしょうか。住宅金融支援機構の商品からピックアップしてみましょう。

■ フラット20

フラット35のうち15年以上20年以下の借入期間を選択する場合、金利が一定期間引き下げられるものです。

■ 機構住みかえローン

今の住宅を賃貸し、次の住宅に住み替えるための住宅ローン。借入時の年齢は70歳未満ですが、一定の条件を満たせば年齢要件が適用されない場合もあります。

■ フラット35(リフォーム一体型)

中古住宅を購入してリフォームする場合に対象となる住宅ローン。金利が一定期間引き下げられます。

■ フラット35リノベ

中古住宅を購入して性能向上リフォームを行う場合、または性能向上リフォームが行われた中古住宅を購入する場合に、金利が一定期間引き下げられる制度です。高齢者の場合は、自分たちの残りの人生を快適に過ごす目的であれば、価格的にメリットのある中古物件のほうが理にかなっています。リフォームしたり、バリアフリーにして性能を向上させたりして、高齢者に住みやすくする需要は大いにあるでしょう。

■ リフォーム融資(高齢者向け返済特例)

満60歳以上の方がバリアフリー工事または耐震改修工事を含むリフォームを行う場合に、毎月の支払を利息のみとし、借入金の元金は申込人(連帯債務者と含みます)全員が亡くなられたときに、相続人が、融資住宅および敷地の売却、自己資金などにより、一括して返済する融資制度です。

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この年代の注意する点は住宅ローンを借りるか否かにかかわらず、現在手持ちの金融資産の配分です。大幅に収入を増やすことが難しい年代ですので、どれだけ住まいの取得に配分できるかを慎重に検討することが重要なポイントです。

<著者プロフィール>

佐藤 章子

一級建築士・ファイナンシャルプランナー(CFP(R)・一級FP技能士)。建設会社や住宅メーカーで設計・商品開発・不動産活用などに従事。2001年に住まいと暮らしのコンサルタント事務所を開業。技術面・経済面双方から住まいづくりをアドバイス。

※画像と本文は関係ありません

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インデックス

連載目次
第5回 リタイア後の住まいの取得
第4回 熟年世代と住宅ローン
第3回 受験生の親と住宅ローン
第2回 子育て前半世代の住宅取得
第1回 20代の住宅取得

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