連載コラム『知らないと損をする「お金と法律」の話』では、アディーレ法律事務所の法律専門家が、具体的な相談事例をもとに、「お金」が絡む法的問題について解説します。


【相談内容】
私は従業員があまり多くない中小規模の会社で、人事・総務・経理と一手に担当している部署にいます。そこでご質問をしたいのですが、マイナンバーに関する、個人ではなく会社として気を付けなければならない注意点などあるのでしょうか。個人の番号を管理することになり、もしマイナンバーを開示したくないと言い出す人がいたら…とか、もし会社のパソコンがウイルス感染して情報がもれたら…などと不安は尽きません。また、法人番号も送られてくるといい、その利用方法などもわかりません。導入する前に是非教えてください。

【プロからの回答です】

会社の法人番号とは? マイナンバー(個人番号)との違いとは?

法人番号とは、株式会社などの法人等に指定される13桁の番号をいいます。法人番号は、国の機関、地方公共団体、設立登記法人などが番号付けされることになっています。ここで注意をしていただきたいのが、個人事業主については、法人番号は番号付けされないということです。また、マイナンバーとの違いとしては、法人番号は原則として公表されるもので、誰もが利用できるものとなっていることがあります。

法人番号が必要とされる場面としては、例えば、取引先との関係では、報酬、料金、契約金及び賞金などの支払調書に記載するために必要となります。

法人番号を導入するメリットとして、政府は、(1)手続きの簡素化が図れること、の他に、(2)法人番号を使い企業等法人の名称や所在地を簡単に確認することが可能となること、(3)複数部署又はグループ各社において異なるコードで管理されている取引先情報に法人番号を追加することで、取引情報の集約や名寄せ作業が効率化するといったこと、が期待されるとしています。

会社が社員のマイナンバーを管理する理由は?

マイナンバー法の施行により、会社は、社会保険関係の届出書や税務署への提出書類に従業員のマイナンバーを記載する必要がでてきます。例えば、会社は毎年、従業員の源泉徴収票を作成していると思うのですが、その源泉徴収票にも、従業員のマイナンバーを記載することが求められることになります。そのため、会社としては、従業員からマイナンバーを取得・管理する必要が出てくることになるのです。

従業員には、正社員、パート、アルバイトなどと様々な雇用形態がありますが、会社としては、どのような雇用形態であっても、基本的には、従業員全員からマイナンバーを取得する必要があります。また源泉徴収票を例にとると、マイナンバー法施行後は、源泉徴収票には、控除対象配偶者、控除対象扶養親族のマイナンバーの記載が求められることになります。このため、会社としては、扶養家族のマイナンバーの取得・管理などが必要となります。

しかし、会社は、従業員よりマイナンバーを取得する必要があるとしても、従業員から強制的に取得することはできません。

では、従業員より提出を拒まれた場合には、どうすればいいのでしょうか。会社の対応としては、まずは利用目的をしっかりと説明したうえで、提出するよう従業員を説得してみましょう。それでも提出しないということであれば、提出先の機関に相談や問い合わせをするようにしましょう。

提出先の機関に問い合わせをする際には、会社としてしっかりと説得していることを示せるように、提出拒否した従業員の方に対してマイナンバーの提供を求める際には、書面等で求めた証明をとっておくと良いかと思われます。

個人のマイナンバーを会社が管理する上で何に気を付けるべきか?

会社は、特定個人情報の流出を防ぐために、安全管理措置が義務付けられています。具体的には、組織的な体制の整備や、従業員に対して監督・教育することで、適正な取扱いを周知することなどがあります。

万が一、大規模な情報流出事件が起きた場合、漏洩させた従業員のみならず、会社までもが罰せられる可能性があることも注意が必要です。

また、従業員が退職した場合、マイナンバーを利用して行う事務処理をする必要がなくなりますので、所管法令において定められている保存期間を経過した場合には、マイナンバーをできるだけ速やかに廃棄または削除しなければならないとされています(特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編))。

例えば、扶養控除等申告書の法定保存期間は7年ですが、この法定保存期間の7年を経過した場合には、マイナンバーを復元できない手段でできるだけ速やかに廃棄又は削除しなければなりません。あるいは、マイナンバー部分を復元できないようにマスキングまたは削除した上で、当該書類の保管を続けるという方法もあります。

マイナンバー制度が始まると、会社は、マイナンバーを管理する担当者や規定を定めなくてはならないほか、鍵付きのキャビネットに番号を記載した書類を保管するなど、従業員のマイナンバーを厳格に管理しなければなりません。また、万が一マイナンバーの漏洩などがあると、場合によっては漏洩させた従業員だけではなく、会社までも罰金刑となる場合もあります。このようなリスクを避ける為にも、今後はますますコーポレート・ガバナンスが問われてくることになります。

コーポレート・ガバナンスとして、どのようなことをすればいいのかご不安があるのであれば、弊所のような企業法務(企業内であらゆる法律問題)に対応している法律事務所もありますので、そういった事務所の弁護士にご相談いただき、不安を解消していただければと思います。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

千葉 輝顕

東京弁護士会所属。大学卒業後、大手銀行の銀行員として融資を担当。企業法務(会社経営に関する様々な法律問題)を得意分野として多く扱う。企業法務のセミナー講師としても活躍中。2級ファイナンシャル・プランニング技能士の資格を持つ。アディーレの企業法務サービス(アディーレ プラス)では契約書の確認や取引先・従業員とのトラブルへの対応をはじめとした幅広いリーガルサービスを、最低限の負担で最大限受けることができ、安心してビジネスを進めることができる。