抱き枕カバー印刷の老舗、栃木県宇都宮市のプリントエイティからお届けする工場レポート。印刷工程以外にもいろいろと見せていただいたので、後編ではそちらをお届けしたい。1階は作業場だが、2階は倉庫になっているというので、そちらを見せてもらう。案内役は前回と同じく、プリントエイティで抱き枕事業を一手に担当する丸山さん。「雑然としてるだけですよ」と笑いながらも奥へ通していただいた。

2階の事務所脇のスペースが抱き枕倉庫となっており、中身となるクッションや、梱包用の大型の段ボールがまとめて置かれている。思ったよりは少なめという印象。完全受注生産制なので、倉庫スペースはあまり必要ないのだとか。クッションそのものの製造もプリントエイティでは行っておらず、外部の業者に委託している。

倉庫に置かれた抱き枕の中身。縦長の抱き枕が二つ折りにして並べられている

こちらはビーズクッション用の生地。ビーズは流動性が高いので、中身が偏りすぎないように生地が2層式になっている

1階にも倉庫が。注文された分しか刷らないので、基本的に在庫は発生しない。置かれているのは、試作品やプリントミスなどごく一部のもの

プリントミスの例を見せていただいた。これはにじんだ例。品質重視の少量生産ばかりなので、少しのミスも見逃せないという

発送を待つ抱き枕カバー。注文票には「巨乳」「貧乳」とあまりにそのまんまな表記も

1階の作業場に戻りつつ、丸山さんにこれまでの注文で印象的なものをうかがうと、「女性からの注文で、実写の芸能人の等身大抱き枕というのがありましたね。あとは大きさで言えば、1メートル×2メートルというのが最大かな? 男性のヌードのイラストでしたけどね」とのこと。ちなみにその男性のヌードが描かれた巨大な抱き枕、依頼主も男性だったという……。「個人で楽しむ範囲のものであれば、基本的になんでも受け付けます」というプリントエイティの有言実行ぶりを物語るエピソードだ。続いてこれまで一番多かった注文数についても聞いてみた。

「確か……2,400枚かな?」

2,400枚! さすがにこれは個人や同人サークルからの注文ではなく、成年コミック誌から誌上通販用として依頼されたもので、刷り終わるまで1カ月以上はかかったという。そこまで大口の注文は例外的とは言え、夏と冬のコミケ前はやはりかなり忙しくなるらしく、どちらかと言うと冬のほうが忙しい傾向があるという。ギリギリまで絵にこだわる人も多そうだが、こちらについては「遅い人はとことん遅いですが(笑)、それでもなんとかなってますね。スケジュールが厳しい場合もできるだけ対応しますので、気軽に問い合せてください」と心強いお言葉。同人イベントが少ない時期でも毎日何かしら問い合わせがあり、1カ月の注文件数は70~80件ほどになるそう。

成年コミック誌で誌上通販される抱き枕カバーもプリントエイティで印刷。2,400枚刷ったのはこちらの雑誌の表紙も手がける人気デザイナー、うるし原智志さんのイラスト
(※画像は当時の抱き枕の絵柄とは異なります)

「どの生地で頼めばいいかわからない」という人のために、プリントエイティでは生地サンプルも配布されている

筆箱サイズのハンディピロー。抱き枕は男性ユーザーがほとんどだが、ハンディピローは女性ユーザーからの注文も少なからずあるとか

キャラクターの輪郭に形を合わせてみた試作品。絵柄はプリントエイティのオリジナルキャラクター、ドリちゃん

もちろん写真からも印刷可能。こちらはバイト仲間の写真を旗のように印刷した例。結婚式のプレゼントとして、新婦の写真を使った抱き枕を新郎に贈った例もあるという

恥ずかしい人のための最終兵器、それがカムフラージュカバー! 絵柄が透けない優れもの。箱入り娘というか袋入り娘

プリントエイティは業界の先駆けだけあって、品質については定評があり、初期からプリントエイティ製の抱き枕カバーを愛用している常連ユーザーの声によれば、4~5年使い続けても色落ちしないという。同社の製品の耐久性の高さが、ユーザー自身によって証明されていると言えるだろう。

「こういった商品自体が水物だとは思ってますし、決して楽観視もしていませんが、需要があるうちはがんばりたいと思ってます。おかげ様で口コミで評判が広まってきましたけど、逆に悪いできのものを出してしまえば同じように広まってしまいますからね」

と語る丸山さん。海外の工場で安く作られる大量生産品に、高い品質と丁寧なサービスで立ち向かうという国内の工場の実情は、抱き枕であっても変わらないようだ。

サイト上に投稿されたオリジナルデザイン。気に入ったものがあれば、注文できるようになっており、作者にもちゃんと10%のマージンが入るようになっている

抱き枕の成長には印刷技術の発達だけでなく、ネットの普及も大きかったと語る丸山さん。ブームを呼んだサイト「ちゆ12歳」のクッションも手がけている

<ご注意>
プリントエイティでは一般の見学は受け付けていません。抱き枕の注文やお問い合わせについてはプリントエイティのサイトをご覧ください。