「埼玉にレトロゲームを集めた地下倉庫がある!」として、2007年末に当コラムで取り上げ、大きな反響をいただいたレトロゲームセンタープロジェクトの活動。そのときの記事でもお伝えしたが、建物自体の閉鎖に伴い、熊谷市での活動は今年1月をもって終了。貴重な筐体の数々を保管する移転先もなんとか決まり、最終開放日となる1月5日にはプロジェクトメンバーとボランティアで一斉に解体を行うというので、熊谷市のエコープレイランド別館倉庫に再びお邪魔した。

折りしも現場は午前中に行われた最後の開放時間が終わって、これから解体作業を始めようというところ。入り口付近には遊び終えた人が何人か立ち止まって名残を惜しんでいる。と、そこにはどこかでお見かけしたことのある方の姿が。

――……恐れ入りますが、遠藤雅伸さんでいらっしゃいますか?

「はい」

やっぱりご本人ー!! 遠藤雅伸さんと言えば、かつてナムコで『ゼビウス』『ドルアーガの塔』といったゲーム史に残る作品を生み出した伝説のゲームクリエイター。レトロゲームセンタープロジェクトの節目の日に、おそらくこれ以上ふさわしいゲストはいないだろう。

プライベートで駆けつけたという遠藤雅伸さん。現在もモバイル&ゲームスタジオにて携帯ゲーム開発を指揮している

メンバーの方に見せていただいた遠藤さんのサイン。全アーケードゲーマー垂涎

後からメンバーの方にうかがったところ、この日の午前中には『ドルアーガの塔』『イシターの復活』『グロブダー』といった遠藤さんゆかりのゲームが用意され、大いに盛り上がったという。

――遠藤さんは『ギャラクシアン3』をプレイされたんですか?

メンバー「もちろん。『ゼビウス』もプレイして行かれました」

――そりゃすごい!

メンバー「『ソル(=隠しキャラ)埋めた場所忘れちまったよ』ってボヤいてました」

――それもなんか違う意味ですごい!

年始の開放日にはゲーム『アイドルマスター』などで人気の「ゆりしー」こと声優の落合祐里香さんも来訪し、倉庫とは思えないほどの人が集まったとか。最後がこれだけ賑わうと取材した側もやはりうれしい。今日の解体作業には30人ほどの大人数が残り、軍手とマスクを装着してプロジェクトの代表・伊藤さんからの指示を受けている。結構な人数だけあって、解体作業というよりもまるで理数系男子校の大掃除のような雰囲気だ。そして13時すぎ、ついに解体が始まった。

プロジェクトメンバー&解体ボランティア集合の図。代表・伊藤さんの「マイコミの記事読んだ人は?」との声に半数以上の方が手を上げていただいた。ありがとうございます

それでは張り切ってまいりましょう。運べる筐体からどんどん地上に持っていきます

『ギャラクシアン3』は解体経験者を含めた10人ほどが担当。順にパーツをバラしていきます

こちらは『ギャラクシアン3』の裏側。電動ドライバーで柱を取り外し中

『ギャラクシアン3』の取扱説明書も発見。やっぱりこういうの、あるんですね

こちらもさっそく取材を兼ねてお手伝い。と言っても『ギャラクシアン3』などの大物に首を突っ込んでも邪魔にしかならないので、通路に置かれた物をどけたり、ポスター類をはがしたり、解体されたパーツをぞうきん拭きしたり……といった脇のお手伝いをしながら、現場の模様を写真に収めていく。

掃除中の発掘品その1、各種取扱説明書と1986年ごろの業界紙

掃除中の発掘品その2、MSX。挿さっているソフトはコナミの『F-1スピリット』(1987年)

掃除中の発掘品その3、冬眠中の『ダライアス』(1986年)。これでも直せば動く……らしい

こちらは読売新聞 埼玉版。レトロゲームセンタープロジェクトの活動が取り上げられている

運び出した筐体はトラックに積んでいく。平らなテーブル筐体は2~3段に重ねるのが基本。伊藤さんらは関西からトラックで筐体を運んだこともあるとか

積み込みを待つセガのアストロシティ筐体。見慣れた機械でも野外に置かれると現代芸術のようなシュールさが漂う

倉庫から運び出す物はかなりの物量だが、こちらの作業人数も多めなので、作業は結構なスピードで進んでいく。こちらも少し余裕が出てきたところでふと辺りを見回すと、プロジェクト代表の伊藤さんが急ぎ足で外へと向かったので後を追った。

――これからどちらに?

「いや、不動産屋で契約してカギもらって来なきゃいけないんで」

――まだカギなかったんですか!?

どうやら移転先は本当にギリギリで決まっていたらしい。とにかくカギがないとどうしようもないので、伊藤さんたちは先行して車で移動。解体イベントはまだまだ続く!

地下の現場は残りのメンバーに任せ、代表伊藤さんが急ぎ足で倉庫の外へ

新天地(と不動産屋)に向け、先発隊が出発。その間も地下では解体が続く……