「秋葉原をおそうじしてください」

先ごろ取材したメイドデートの回が予想外のアクセス数と反響を呼んだので、担当編集の千葉さんは秋葉原ネタに味をしめたらしい。再び秋葉原に赴き、11月25日に行われるおそうじボランティアを体験取材せよとの指令である。

野口「取材はいいですが千葉さん、ここ最近のコラムは秋葉原→築地→秋葉原って僕らどんだけ東京の東側が好きなんですか。だいたいその前は松戸ですよ! 東北とか関西とか海外の読者が怒りますよ!」
千葉「まあまあ。いつもニュースで秋葉原にはお世話になってるじゃないですか。ネタが被ろうが、ボランティアで恩返しして罰は当たりませんよ」
野口「わかりました。じゃあ、当日は千葉さんも掃除に来てくれるんですね?」
千葉「あっはっは。僕は行きません」
野口「お前来やんのかい!」
千葉「日曜ですから」
野口「こっちも日曜じゃ!!」

そんなわけで日曜の秋葉原。天気も快晴とあって、絶好のおそうじ日和である。今回取材した「第5回 秋葉原おそうじ志隊」はこれまで年1回程度行われてきたボランティアイベント。今回は約3年ぶりの開催となった。千代田区の小林たかや区議会議員と、フリーペーパー『あきば通』が実行する形で行われている。

場所は秋葉原UDXビル前。おそうじ志隊のみなさんが集まっております。この日は120人以上がおそうじに参加

小林たかや議員の号令で気合を入れるみなさん。この日は13時に掃除スタート

おそうじボランティアに臨む小林議員と秋葉原名物のメイドさん

こちらがフリーペーパー『あきば通』。受付スタッフもボランティアで参加とのこと

参加宣言書を記入しておそうじ志隊に参加。名前以外は書いても書かなくてもOK

こちらが分担用の秋葉原マップ。今回は取材ということで「どこでもいいですよ」との許可をいただく

火バサミ、軍手、ゴミ袋の3点セットをお借りして掃除開始

さて掃除道具一式をお借りし、それでは僕もおそうじを……と思ったら、写真撮影などで出遅れた間に早くもおそうじ志隊のみなさんを見失ってしまった! 当たり前だが自分ひとりでゴミを拾っても記事にならないので、慌てて参加者の姿を追う。ところが休日の秋葉原の人ごみは並大抵ではないのだった……。

開始5分。おそうじ志隊のみなさんをあっさり見失う

探し回ってようやくプーさん発見! 抱えたぬいぐるみがものすごく邪魔そうだが、そんな失礼なことを言ってはいけない

白衣の研究者もおそうじ。「コスプレですか?」とお聞きしたら「普段着です」とのこと

メイドさんもおそうじ。本来のメイドさんの仕事内容には、"掃除"というものがあると思うのだが、ものすごく珍しい光景に見えるのはなぜか

ダッシュで通りを探し、なんとかゴミ袋を持った参加者を見つけることができた。「おそうじ志隊」という名前ではあるが、ぞろぞろ歩いているわけではなく、1~3人程度でバラバラにゴミを探すのが基本スタイルらしい。最初は区議会議員が関わっているということで、政治的な側面もあるのだろうか、と邪推もしたが、参加者はべつにそういうつもりではないようだ。「秋葉原によく来るので」とか「せっかくなので記念に」とか「遊びに来たついでに」といった具合で、声をかけた限りでは「なんでそんなにいい人ばっかりなの?」と不純な自分が思わず心配になるぐらい良心的な人たちばかりだった。どうやら真面目な清掃活動というよりも一種のイベントとして気軽に参加できるのがいいようだ。

こちらはBブロック。1時間ほどしたところで公園で合流。ゴミを集めて再びおそうじに

公園にいたハルヒチームのみなさん。とくにお願いしていないのに決めポーズを取ってしまうのはオタクのサガなのか

取材していくうちに参加者のひとりから「そういえば戦士がいましたよ」との耳よりな情報をゲットしたので、さっそく戦士を探して旅に出ることにする。目的が掃除から「掃除中の変な人を探す」に変わってしまっているが、あまり細かく気にしてはいけない。

ふたたび単独行動。Aブロックにいるらしい戦士を探して秋葉原を探し回る

探索中におそうじ志隊のポスターを発見。きっかけは「ポスターを見て」という人と「ネットを見て」という人が多かった

同じところを5回ほどグルグル回った末、終了間際になんとか戦士を発見! 聞けば秋葉原の武器屋の店員さんとのことで、今日はお店の常連さんたちとパーティを組んで参加したとのこと。戦士と仲間のみなさんは側溝の金網を豪快に外し、普通では絶対取れない場所に溜まったタバコの吸殻をわっしゃわっしゃと大量に狩り取っているところだった。オタクらしい、マニアックなやりこみ魂を感じさせてくれる熱いエピソードだ。ところでこの日一番多いゴミは、タバコの吸殻だった。秋葉原のある千代田区は歩きタバコ禁止条例が施行されているが、やはり裏路地などでこっそり吸って捨てていく人は多いらしい。条例がスタートした時に比べて監視の目もやはり甘くなっているとのこと。

戦士いたー! 側溝の裏にたまった吸殻を3人パーティで清掃中。こんな超攻撃的な掃除をやってのけてしまうとはさすが戦士

モンスターを探すかのように猛々しくゴミを探す戦士。右手に持った武器の火バサミ(攻撃力2)がよく似合う

2時間が経過し、無事におそうじ終了。ふたたび秋葉原UDX前の集合地点に

今回の成果はこんな感じ。2時間でこれだけ集まれば結構いい感じじゃないでしょうか

参加賞のステッカー。あみたん(左)としょうへい君(右)です

解散後に残ったみなさんで記念撮影。お疲れ様でした

取材してみた印象としては、参加のハードルの低さがいい方向に働いているイベントだと感じた。掃除道具とゴミ回収というポイントを運営側に仕切ってもらっているので、グダグダになる心配もない。ただ年1回程度という散発的なスパンには、やはり実効性の面で少し疑問が残った。もちろん準備する側の事情もあるので、単純に回数を増やすわけにもいかないだろうが、厳しい言い方をさせてもらうなら、まだ「やらないよりはマシ」の域に留まっているのは否めない。イベントとしての参加のしやすさと、秋葉原をきれいにするという目的、その両方を維持しながらどのように定着させていくかが今後の課題と言えるだろう。取材を終えて帰宅した私は、そんなことを千葉さんに報告する。

千葉「そうですか。ともかくお疲れさまでした」
野口「いえいえ」
千葉「で、掃除してきたんですか?」
野口「え?」
千葉「掃除してきたんでしょう?」
野口「え?」
千葉「もしかして掃除しなかったんですか?」
野口「いやあ、取材してたらゴミを拾うヒマがなくって……(笑)」
千葉「戦士を探すヒマはあったんですよね」
野口「こっちはボランティアの成果を報告するのが仕事やからべつにええがな!」
千葉「掃除もせずに逆ギレかよ!」
野口「二兎を追うものは一兎も得ずやねん!」
千葉「小林議員に怒られるぞ!」

……小林議員すみません。次回参加するときはちゃんと掃除するようにします。