『新SOS大東京探検隊』の公開を記念して組まれた、地下探検ツアーの後編。さて、このコラムの掲載と前後して、山手トンネルの一般公開が行われた。ただしあちらは、道路もすでに舗装された池袋~新宿間(2007年12月開通予定)。今回お邪魔したのは、新宿~渋谷間(2009年度開通予定)なのでお間違えなきよう。

地下への階段を降りに降りて、トンネル部分にようやく到達。将来車で通っても大きさは実感しにくいのだろうが、実際に立ってみるとやはりでかい。深さも一番深いところでは地下50メートルにも達するとのことで、真夏日のこの日でもトンネル内はひんやりしている。涼しいうえに湿気もあるので、ちょうど鍾乳洞のような皮膚感覚を思い出してもらえればいいだろう。天井に近い部分にモヤがかかっていたので、てっきり工事現場から出たホコリなのかと思って聞いてみたら、それも湿気が霧となっているらしい。

こちらが山手トンネル。渋谷方面から新宿方面を見たところ。車の流れもこの方向です

逆側はこんな感じ。見学はこちら方向、つまり車の流れと逆走して進むことに

それにしても開通前のトンネルを歩けるなんて、かなり貴重な経験だ。まわりを見ても、ほとんどの人がデジカメ持参でトンネル内部の姿をたくさん写真に収めていた。夏休みということで参加者のなかには小学生の姿も見られたが、途中でめげたりせず元気に完走していた様子。

少しずつ照明を点灯しつつ、片道1キロほどをテクテク歩きます。照明が点く度に「おおー」という歓声が思わずあがる

掘る工事自体は完成していますが、トンネル内にはまだ重機も置かれていました。撮影でも大人気

こちらは避難階段。帰りはこちらのルートで地上へ

今回見学したトンネル1本で外回り線としての道路2車線分があり、対向(?)車線となる内回り線はさらにこの真上を通っている。換気などの都合で、ここは上下に2本トンネルが走っているが、そうした箇所は全体のなかでも一部にあたるという。

少しずつ照明を点灯させて歩いていくと、暗闇の向こうに「巨大な何か」が見えてきた。ついにトンネルの端に到着したのだ。最後のライトを点灯させて登場したのは、外径14メートルにも及ぶ、トンネル掘削機のシールドマシン! 渋谷部分のトンネル掘削工事はすでに完了しており、本来ならシールドマシンは撤去されてしまうのだが、いまの時期は反対側にあたる南の目黒方面から掘り進んでいるもう1機のシールドマシンを待っている状態とのことで、運良く我々もその姿を目に焼き付けることができた。

なにか前方に巨大な物体が見えてきましたよ……

出たー! シールドマシン!! かなり遠くですが、黄色い手すりから大きさを想像していただけるでしょうか?

現場の方によればこのシールドマシン、中央のシールド部分は後々バラして回収するのだそうだが、なんと外周部分はそのままコンクリートで固めてトンネルの壁としてしまうらしい。自らの役目を終えてもその身の一部をトンネルに変えて地下で物言わず(当たり前だけど)、ひたすらがんばり続けるなんてシールドマシン、お前はなんていいヤツなんだ。

地下は涼しくて快適なのだが、このままここに居座っていても工事の邪魔になるだけなので、シールドマシンに別れを告げて来た道を引き返す。登りの階段はただ登るだけではなく、地上に近くなるにつれ、だんだんと暑くなってくるので結構大変。最初に集まった詰め所に戻り、駆け付けてくださった『新SOS大東京探検隊』の高木監督の締めの挨拶で見学終了。数時間ぶりに戻ってきた地上は、やっぱり暑かった……。

地下深くからようやく最初に集まった階まで戻ってきた。かなり上には青空も見える

空の見えるところなら地下でも携帯がつながる。じつは『新SOS大東京探検隊』の劇中にも組み込まれていたポイント

探検ツアーの最後に駆けつけていただいた『新SOS大東京探検隊』の高木真司監督。プライベートでも探検好きとのこと

山手トンネルの全容を知らずに地表の工事現場だけを見ていると、つい「うーん」と不便に感じてしまうが、見学した後となってはむしろ「あれだけの車線規制でよくこんな広い空間を地下に造ったなあ」と素直に驚いてしまう。現金なものだが、確かに見ると聞くとでは大違い。開通すれば現在の渋滞が約半分になるとのことなので、もうしばらく辛抱してほしい。

8月24日には新宿~池袋間の開通を記念して、羽田空港第1旅客ターミナルにて「首都高速なるほどクイズラリー」が開催予定。また、今回のツアーの企画協力として参加した「社会科見学に行こう!」の管理人の方によれば、ブロガーなどを対象にした山手トンネル見学会なども検討中とのことなので、気になる方はそちらもチェックしていただきたい。

この換気塔を見かけたら、工事現場のスタッフやシールドマシンのことを思い出してあげてください

『新SOS大東京探検隊』は、DVDとBlu-rayで11月23日に同時リリース。DVD版は7,140円、Blu-ray版は8,190円
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