【コラム】
先週、東京ビッグサイトでCATV業界の総合展示会である「ケーブルテレビ2003」が開催されたが、今年の同展示会では地上デジタル放送対応と並んでFTTH化関連の機器、それもいわゆるPON(Passive Optical Network)対応の機器が数多く展示されていた。またCATV事業者側も、既に帯広シティケーブル(北海道)が今年4月からFTTHサービスを一部開始しているほか、一部報道によれば名張二十一世紀ケーブルテレビジョン(三重県)も年内のFTTHサービス開始を目指していると伝えられている。
しかし本当にCATVのFTTH化は進むのだろうか、またその際にはどのような形でそれが実現するのだろうか。今回は同展示会の内容を通じてそのあたりの状況に迫ってみたい。
○上りの高速化を考えるとFTTH化は不可避
FTTH化というとやはりその最大のメリットは「高速化」ということになるだろうが、単に下り回線の速度を高速化するだけなら何も完全FTTH化する必要はなく、いわゆるHFC(光同軸ハイブリッド)構成でも複数のチャンネルを利用することで下り100Mbps超のサービスを行うことが可能だ。今回の展示会でもマスプロ電工が、現在、中部ケーブルネットワーク他と共同で実験を行っている「600+R」システムにより下り100Mbps超の速度を実現するデモを行っている。
しかしCATVの場合はADSLと異なり、1本の幹線にぶら下がる複数の世帯が帯域を分け合う構造になっているため、複数のユーザがこのような高速システムを利用した際にはその分だけデータ伝送用のチャンネルを確保しなければ相対的にスループットが低下してしまう。特に上りについては、規格上は10~55MHzが使えることになっているものの、実際は流合雑音の影響を受け(流合雑音については「最新IT用語解説」第33回
展示会の2日目に行われた分科会で「ケーブルテレビの発展シナリオ~HFCからFTTHへ~」と題した講演を行った、日本CATV技術協会・ケーブルテレビ発展シナリオ検討WG主査の生田昭氏も「下りはHFCでもセルサイズ(1本の幹線でカバーする世帯数)を小さくすることで、100Mbps程度の速度にも対応できる可能性があるが、上りはHFCでは絶対的にチャンネル数が不足する」と述べており、将来的に通信サービスの高速化を考慮するといずれはFTTHの方向に向かわざるを得ないということで同WGの見解が一致していることを明らかにした。
○当面、映像は同軸、通信は光ファイバの併用が続く?
このように通信サービスという観点に立つとCATVのFTTH化はいずれ避けられないと見られるが、一方で映像伝送というCATV本来の業務を考えると、まだまだ同軸ケーブルでも十分な容量が得られるのも事実。果たしてCATVはそのあたりをどう折り合いを付けてFTTHに移行していくのか。
この点について興味深い報告を行ったのが、やはり2日目の分科会に登場した帯広シティケーブルの伊東肇氏。冒頭でも述べたように同社ではこの4月から日本初のCATVによるFTTHサービスを開始しているのだが、一方で、同社は18年前に構築した同軸ケーブル網(300MHz)も持っていることから、現状では光ファイバで通信サービスを提供しているケースでも映像は同軸ケーブルで送っているのだという。つまりそのようなユーザの場合は、建物内に光ファイバと同軸ケーブルの両方を引き込んでいることになる。
同氏は「最近できた新興住宅街には同軸ケーブルが伸びていないので、そのようなエリア向けには年内か来年早々にPONによる映像サービスを提供したい」と述べていたが、「光ファイバだけで全てのサービスをできるという感触はあるが、まだ同軸にも価値はある」と同軸の重要性も強調していた。実際、既存のCATV事業者は、FTTH化するからといって既存の同軸サービスを簡単に捨てるわけにはいかないという事情も抱えているし、ケーブルの引き込みの手間は本数が1本だろうが2本だろうがあまり変わらないことが多いという側面もあり、当面はこのような形でFTTHを利用する事業者が増えるのではないかと筆者は予想している。
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もちろん将来的にはPONを利用して光ファイバで映像を伝送する形態が徐々に広がっては行くだろうが、今回の展示会ではフジクラやシンクレイヤ(旧愛知電子)などが通信に1.31/1.49μm、放送に1.55μmの波長を使う、いわゆるITU-T G.983.3準拠型の製品を展示する一方で、伊藤忠ケーブルシステムなどは1.55μmの波長に通信・放送両方の信号を乗せてしまう、いわば現在のHFC構成の光ファイバ部分をユーザの宅内まで延長するような形態のシステムを展示するなど、ベンダによって大きく2つに方向性が分かれているのが現状だ。このあたりの動きが統一されないことにはCATV事業者としてもなかなかPONの採用に踏み切れないと見られるだけに、今後どちらのタイプがCATV業界で主流となっていくのかに注目が必要だろう。
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