地震が発生した場合、避難・救助・救援物資の運搬など、道路の果たす役割は大きなものです。そのため復旧は段階的に行われ、優先順位の高い緊急車両などから通行が可能となるように修復が進められていきます。

初期における緊急復旧がどのように行われているのか、NEXCO東日本の例を挙げて見ていきましょう。

第1段階は緊急交通路の確保

発災後の初期段階は、警察や自衛隊、消防などの緊急車両や支援・復旧車両が走行できるよう、最低でも1車線を確保できるよう、作業を行います。震災直後の高速道路の状況は、段差やひび割れが生じており、車両の通行が困難になっています。

そこで緊急交通路を確保するために、アスファルト合材といった舗装合材や、土のう・砂、鉄板などを用いて段差やひび割れを埋めることにより、緊急車両等が通行可能な状態にします。

土のうによる段差の解消

また、一時的に中央分離帯を取り払い、損傷の少ない片側2車線を使って相互通行とする緊急工事も実施されます。

相互通行での運用のようす

"神業"と称された復旧工事

東日本大震災の発生時には、NEXCO東日本による迅速な復旧が世界を驚かせました。

管内の被害は甚大で、全体で20路線、854kmもの区間に及びました。

これに対し地震発生直後から震災対策室を立ち上げ、緊急点検を開始して、仮復旧に向けた作業が開始されました。

東北エリアでは、釜石自動車道の花巻空港IC~東和IC、山形自動車道の湯殿山IC~酒田みなとIC以外を通行止めとしました。岩手、宮城、福島では数cmから数mの段差も見られ、最も被害が大きかったとされる沿岸部の仙台東部道路では、料金所2か所が浸水したほか、若林JCTなどでは津波によって押し流された堆積物が本線にまで流入したそうです。

しかし、夜を徹した作業の結果、地震翌日の3月12日には緊急車両の通行を可能とする仮復旧が完了していました。続いて19日には東北道の浦和IC~宇都宮IC間の緊急交通路の指定を解除し、21日には常磐道の水戸IC~いわき中央ICの指定も解除されました。

そして翌22日には、東北道全線を含む813km区間、全体の93%の応急復旧が完了したと発表され、24日には仙台東北道路の一部を除いて、交通規制が全面解除されました。

震災から2週間を待たずしての全面復旧というスピードに、国内外から、「神業」「まるで魔法のようだ」などの賞賛の声が寄せられたそうです。

本復旧工事は現在でも行われており、今年12月の完了が予定されています。

よりよい高速道路へと発展させる「前向きな復旧」へ――。それは人の手だからこそ作り出せる希望なのかもしれません。