【コラム】
新型の「ビートウォッシュ」が、前機種と大きく違うのは、「エコ 水センサー」の搭載。目玉機能である。これは4つのセンサーによって、水の状態を検知して、それに合わせて、洗剤量や水量、洗濯時間を調節しようというものである。センサーは布量や布質、水温のほか、硬度センサーも付いている。
水には、硬水と軟水があることはよく知られているが、実は、この水の種類が洗濯に及ぼす影響は小さくないのである。水の中にカルシウムやマグネシウムなどの物質がたくさん含まれていると、「この水は硬い」などといわれる。
このような硬水よりも、軟水のほうが泡立ちはよく、汚れが落ちやすいといわれている。そこで、ビートウォッシュでは、水の硬度をはかって、「洗剤量表示」「洗濯時間」「使用水量」を賢く調整してくれる。たとえば、水の硬度が低いと判断したときは、洗剤量を抑えてもしっかり洗えるので、たとえば、「洗剤量は0.9杯」といった表示を出してくれるのである。ついつい、洗剤を多めに入れてしまうのは、ぐうたら主婦だけではないだろう。そんなムダ遣いが省けるうれしい機能なんである。
それにしても、どうやって硬度をはかっているのだろう。秘密は、水を投入する口についたセンサー。水の抵抗値をはかって、水の中にどれだけ硬質の物質が含まれているか測定しているという。よくもまあ、「抵抗値をはかって測定する」なんてことを思いついたんだろう。やはり、日本の技術者は賢い!
ただ、ちょっとだけ種明かしをすると、以前、日立の洗濯機「水かえま洗科」シリーズでは、イオン交換樹脂を使って水を軟水化する機能があった。水道水をイオン交換樹脂に通すことによりカルシウム、マグネシウムイオンを取り除き軟水にしてしまう優れもの機能だ。
軟水で洗えば、短い時間と少ない洗剤量で、効率よく洗濯ができることをその時、日立はつかんでいた。今回の硬度センサーはその時開発した技術を一部流用しているのである。
とはいえ、日本の中なら、水の硬度なんて、あまり変わらないのではないかと思われがちだ。だが実は、地域によって、また同じ地域でも、日によって変わるという。今回、この水硬度センサーを開発するにあたり、日立の技術者は日本全国の水を調べて、硬度がどう違うか、硬度によって、もっとも適した洗濯方法はどのようなものか。ひたすら、実験、検証を繰り返して、機能を実現させたという。このようなコツコツとひたすら解を求めて結果を出せる。この能力が何より、日本の産業がもっている財産なんだろう。ビートウォッシュを見ていると、日本の大切な財産が形になって表れているのが見えるのだ。
話は変わるが、製品の開発というと、設計者がそれぞれ自身の担当をコツコツ開発し、のちに製品として仕上げていくイメージを持っている方もいるのではないだろうか。
ところが、電機メーカーには、製品群によっては、商品の企画から電気、メカ、ソフトなどの設計各分野を統合的に面倒をみる役を負っているプロダクトマネジャー的な人が存在する。さすがに、営業や基礎研究にはかかわらないが、新しい機種のコンセプトや新機能を打ち出すときに、事業部の一員として絡む。したがって、設計者といっても、そのプロダクトマネジャー的な人は、製品全体のコンセプトから意匠までかかわり、さらには開発の進捗管理、原価管理まで、さまざまな分野を担う。
今回、お話をうかがった日立アプライアンス 家電第一設計部 技師・立山卓也氏はまさにプロダクトマネジャー的な存在として、ビートウォッシュ全体のとりまとめと責任を負っている立場にある方だ。
「正直、他社に負けたくないという気持ちはあります。でも、それよりも、市場に商品を出した後、お客様から反響が戻ってくるのがやりがいの一つになっていますね」
こんなことをしたらお客さんが喜ぶんじゃないか、もっと使いやすくなるんじゃないか。そんなひらめきで、新しい機能のアイデアが浮かび、実現させることで、機能がどんどん進化していく。なかでも、ぐうたら主婦が気に入っているのは、青色LEDがあしらわれているボタンだ。よく使う機能のボタンまわりをきれいな青色が縁取っている。別になくても洗濯の機能は劣らないけれど、ついていることで見た目の美しさとボタンの押しやすさがアップしている。
しかも、洗濯ボタンのまわりを囲っているLEDの数はわずか2個。それを背面に反射する仕掛けを入れることで、きれいに明るく見せているのである。この辺の芸の細かさが、あっぱれなんである。
新しいことをどんどん取り入れるビートウォッシュ。発した技術がほかの製品に波及することも少なくないという。また、使い方説明のためのDVDを付属するなどもビートウォッシュが初めて実施したことだ。
ビートウォッシュを見ていると、企業は何のために存在するのか考えさせられる。利益を大きくして、株主に還元するためか。だとしたら、日立のようなやり方ではなく、機能を削ってしまえばいい。LEDのような美しさがなくても、洗濯はできる。だいたい、誰かに言われなければ、LEDをつけるのにたくさん工夫したなんて、誰も気づかない。だから、もっと、必要なものだけに絞れば、コストも安くなって、利益も大きくなるだろう。でも、私は違うと思う。
たとえば、LEDをつけたら洗濯機の見た目がきれいになって、使う人の心が和むんじゃないか。そんな、細かいところまで気を使う技術者の心がいいのである。そんな技術者の心なんて、取説には書いていないけれど、製品を伝って、使う人の心に届くのである。
もちろん、競争に勝つために、原価管理もしているし、搭載を見送った機能もある。でも、それを超えた、視線の先にお客さんがある。それが製品から伝わってくる。ここにビートウォッシュの一番の魅力があるような気がする。
価格はマイコミジャーナル(2010年7月16日現在)で164,900~207,998円になっている(最上位機種・BW-D9LVの場合)。ドラム式の高機能機は、25万円を超えるものもあるので、若干求めやすいことは確かだ。
イラスト:YO-CO
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