前回紹介したシャープのカラー電子辞書「Brain」シリーズの学生向けモデル「PW-GC610」は機能満載で驚かされるばかりだった。今回は、具体的に何ができるのか、便利で面白い機能を紹介したい。

PW-GC610は学生向け。学習機能が充実しており、例えば搭載されているコンテンツのひとつには「読めそうで読めない漢字」がある。これはただ単に、本の内容を羅列するのではなく、テストすることもできる。タッチペンでメニューを選ぶと「闊達」とか、「重陽」とかの文字が出てきて、一回ずつひらがなで読みを入力するのである。勉強として使うのもいいが、この手のクイズが好きな大人にも、かなり楽しい暇つぶしになるはずだ。

シャープ カラー電子辞書「Brain」シリーズの学生向けモデル「PW-GC610」

そのほか、日本語ドリルでは、
「ぶきみ」は
【1】 不気味
【2】 無気味
【3】 どちらでもいい
のうちどれか?【1】【2】【3】から選べ、といった問いが出てきて数字で答える形になっている。社会の年号や理科の公式などもあり、ゲーム感覚で覚えられる工夫がされている。受験生にとっても使える内容だ。

動画も見られる

もう一つの特徴は画面がカラーであるところだ。しかも、画像が見られるのである。植物や動物は、文字だけの説明よりも、カラー画像がついていたほうが理解は早い。『ブリタニカ国際大百科事典』などにある写真が載っていて、パラパラめくるだけでも楽しい。そういえば、以前から、ある牧場育成系ゲームに出てくる「ハエトリ草」という草が気になっていた。形もグロテスクだし、名前からは何やら残酷な印象を受ける。実際に存在する草なのか、それともゲームの中だけの想像物なのか疑問に思っていた。

電源を入れると「Home」画面にいく。ここでは、「辞書」「カラー図鑑(動画)」「電卓」などのアイコンが出現するので、タップして選ぶ

でも、ゲームの世界のことだし、わざわざ確認する時間ももったいない。そのまま放置していた。ところが、PW-GC610の画像をあてもなく見ていたら、突然、「ハエトリ草」に出会った。ゲームに出てくるのと同じ形だ。写真ということもあり、かなり強烈な印象がある。ハエトリ草は実在していたんだ! そんなどうでもいい発見が実はとても楽しいのである。

タッチペンは背面に収納できる

さらに驚きなのは、画像では物足らないという人のために、動画も用意しているところだ。「古文・漢文」「物理実験」「化学実験」などだ。化学実験の「黒煙の燃焼」をタップすると、実験の一部始終を映像にしたものが出てきた。これは想像通り。でも、古文はどんな映像になるのだろう。そこで、『竹取物語』をタップしてみた。すると、竹取物語の巻物の映像とともに、ナレーションが始まる。

「この物語が書かれたのは平安時代の初め……」
「この物語を書いたのはどんな人物だったのでしょうか……」

なるほど、これなら古文が嫌いな人でも、時代背景まで細かく理解できて、読むのが楽しくなる。私が高校のときに、あったらよかったのに……。

今、ライターをやっているが、実は私、学生のころは理系で、どちらかというと社会と国語は得意ではなかった。国語は作文だけはいつもよかったが、それ以外のもの、とくに古文なんて、試験結果は毎回、目を覆いたくなるほどだった。一度、あまりに成績がひどいので、バイト先にいる国文学科の大学生に古文を教えてもらって期末テストを乗り切ったことがあるくらいだ。今の時代は、よくも悪くも、勉強に関しては、あらゆることが整っているのだと改めて感じさせられた。

辞書といえば、やはり英語

もちろん、英語機能も充実している。「英和」「和英」「英英」辞典のほか、「英語類語使い分け辞典」や「英会話110番 日常生活編」などの実用向けのコンテンツもある。ただし、あくまで学生向けなので、「経済英語」とか専門用語をしっかりと引きたいという方には向いていないだろう。

しかしながら、音声が出てくるし、例示がたくさんあるし、学習教材には、「代ゼミのセンター照準シリーズ 英語編」といったモノもある。これは、ナビゲーターとともに、リスニングやボキャブラリーレッスン、文法・語法レッスンなどを進めていくというものだ。文法を少しトライしてみたが、懐かしい。onを入れるか、atにするかといった問題、そういえば受験のとき、たくさんやった記憶がよみがえってきた。大人にとっては、懐かしいことだが、生徒にとってはこれから学ばなければならない試練である。「どうせやるなら楽しく」という娘には、PW-GC610はあっているようだ。

「漢検ドリル」など、コンテンツが充実している

とにかく機能が多いので、中学一年生になった時点で買っても、すぐには使いこなせないだろう。MP3プレーヤーや電子ブックリーダー機能もあり、勉強に飽きたら、本を読むこともできる(掲載されているコンテンツは10個)。そのほか、電卓やフォトスライドなど、さまざまなことに対応しているので、末永く使える一品だといえる。

価格はマイコミジャーナル価格情報(2010年3月12日)で、2万2,377円~3万7,800円となっていた。辞書は一冊数千円で買える。本って、はずれ本を買わなければ、つくづくコストパフォーマンスの高い商品だと思う。比べると、電子辞書って、高く感じてしまうのは仕方ない。ただ、内容は何十冊分の辞書や教材が入っているのだから、まとめてたくさんの本を買ったことを思えば高くはない。

PW-GC610は、辞書ではなく学習教材。このように考えるのが正しい。教材と名のつくものの中には、10万円を超えるものがある。そう考えると、PW-GC610はむしろ安い商品だといえる。

イラスト:YO-CO