スギ花粉症の人にはツライ季節がやってくる。毎年、この時期になると家電量販店では目立つ場所に空気清浄機が置かれる。ドラッグストアはマスクやアレルギー薬のコーナーが拡充され、品数が一気に増える。「花粉対策」の文字がつけば何でも、みんなから欲しがられるような気もするが、その傍らで、花粉対策用品なのに、どうも目立たないモノもある。

まるで、学校の休み時間に独りで宙を見つめている少年のように、実力があるのにまわりからあまり気にかけられない商品。今回は、そんな店の中で目立たない花粉対策用品に着目した。それは何かというと、ふとん乾燥機だ。アイロンや暖房機の脇に設置された狭いスペースに数台が並べられているだけだ。一方、空気清浄機売り場では製品の性能ごとに、シャープ、パナソニック、ダイキンに三菱電機と各社から発売されている商品がずらりと並べられている。この違いはナンだ、と驚くほど大きな差がある。

ふとん乾燥機が花形になれないのはなぜか

花粉の季節、昼間ベランダに干したふとんに、花粉症の人が寝るとどうなるか。間違いなく、夜中は鼻水とくしゃみで睡眠不足になるだろう。花粉の季節ではふとんや洗濯物を外に干してはいけないことは花粉症の人にはよく知られた事実だ。とはいえ、外に干したフカフカのふとんで寝たい。そんなとき、ふとん乾燥機は重宝する。

三菱ふとん乾燥機「AD-P80LS」。丸みを帯びた形が特徴

ただし、ふとん乾燥機を使ったからといって、ふとん干しが画期的にラクになるわけではない。シートを広げるのも面倒だし、終了まで1時間以上もの時間かかる。これがふとん乾燥機の魅力を半減させる要因だろう。ドライヤーで髪の毛を乾かすみたいに、15分程度で、しかもラクラクに乾燥できるふとん乾燥機があったら、もっと人気が出るだろうに……。ふとん乾燥機売り場に行くたびに私はそう思う。でも、相手の欠点を指摘しているだけでは何も前に進まない。ということで、ふとん乾燥機の中でも、これなら欲しいと思える魅力的な機能があるものを今回は選んでみた。

ホースを手で引っ張り、ちょうどよい長さに調整

それが、三菱ふとん乾燥機「AD-P80LS」。見た目は普通のふとん乾燥機だが、「フトンクリニック」といって、森林の香りが漂い、森林浴気分を味わいながら眠りにつけるという機能がついているところが魅力だ。疲れた体に森林にいるような気分にさせてくれる香り。これだけで、いつもよりもずっと深い眠りにつけそうだ。「アロマシート」と「デオドラントシート」という、手のひらに乗る小さなシート2枚がしっかりと働き、フトンクリニックの機能を実現させている。アロマシートには「ヒノキチオール」と「森林浴油」が配合されている。ヒノキチオールというのは「フィトンチッド」といって、樹木が自ら作り出して発散する揮発性の物質からできている。これは消臭・防虫効果があるといわれている。これら森林浴の成分が含まれたアロマシートの働きで、ふとんの中に森の香りが送りこまれる。スイッチを入れてしばらくすると、部屋全体にほんのり森林の香りが漂う。

アロマシートには使用開始年月を記入

もうひとつのシート、デオドラントシートのほうは名前の通り、デオドラント効果があるものだ。植物から抽出された天然消臭成分によって、ふとんについた汗やニオイを分解して、さらに清潔なふとんにするという。シートの交換時期は約6カ月が目安だ。使用開始時期を記入して、シートをケースに入れ、送風口の溝にセットして使用する。

シートが入ったケースを溝にはさむ

運転は約75分で終了する。ふとんはぬくぬくと温泉のように暖かい。かすかに香る樹木の香りを楽しみながら、温泉の気持ちを味わいながら眠る。かなり気持ちいいので、おすすめできる。

この機能にいくら出せるか?

羽毛ふとんは毎日干す必要はない。でも、足元は温めたいという人は、足元の暖房機能が便利だ。エアマットを二つ折りにしてベルトで留める。ファスナーを開けて、ホースを差し込み、暖めボタンを二度押しておしまい。布団に入ると、寒い日でも、足元はほんのり温か。湯たんぽのように、お湯を沸かす必要がないのでラクだし、やけどの心配もないので、子どもがすすんでセッティングすることも可能だ。ぐうたら主婦が強くおすすめしたい機能である。

こう書くと、冬はいいけど、夏はちょっと蒸し暑いのでは? と心配する方もいるかもしれない。が、大丈夫である。ふとん乾燥機は75分の運転中、最初の45分で乾燥させる。残りの30分は仕上げコントロールといって、運転終了直後、快適に眠れるように、温風温度を調節してくれるという。冬は暖かめにするが、夏は熱気をとって快適に仕上げてくれる。

裏表上下を間違えないように札がついている

もちろん、ベッドでも使用できる。ホースは手で伸ばせるようになっているのだが、届かないときは、台を置いて高さを調整するといい。通常はエアマットの下方の穴にホースを入れるのだが、取扱説明書には側面についているファスナーを少し開けてホースを差し込んでもいいと書いてある。

価格は26,250円。マイコミジャーナル価格情報(2010年2月7日)では、11,400円~14,500円になっていた。ふとん乾燥だけできればいいという人には、AD-P80LSはおすすめできないが、より質の高い睡眠を追求したい方には、1万円ちょっとで毎日森林浴を楽しみながら眠れるというのは悪くはないはずだ。しかも、次回紹介するが、衣類乾燥やブーツの乾燥など、ふとん以外のものも乾燥できるので、花粉症で洗濯した衣類を外に干せない人にはおすすめできる。

以上、AD-P80LSを駆け足で紹介したが、まだまだたくさんの機能がある。詳細は次回に譲る。

イラスト:YO-CO