おいしいご飯を炊くにはどうしたらいいか。魚沼産コシヒカリなどのお米を、正確に計量して、とぎ方や水加減に注意して、高級炊飯器で炊けばいい。たしかに、これは正解なのだけど、これとは別に意外と知られていない方法がある。それは、お米を玄米のまま保存して、「精米したてのお米」を炊くということだ。

象印マホービン 家庭用精米機「BR-CB05」。幅17cm、奥行32cm、高さ32cmとコンパクトサイズになっている

以前、実家に帰ったとき、知り合いの農家からいただいたお米で炊いたご飯が食卓に並んだことがある。これといって有名な産地でもないし、スーパーに置かれたら、安いほうの棚に入れられるようなものだった。それなのに、おいしいんである。ふっくら感と、ほんのりした甘み、そして見た目のつやつや。翌日も食べたかったのだが、いただいた量が少なくて、あきらめるしかなかった。

一般的に、農家のお米はおいしいといわれているが、それはなぜか。あとになって、それは精米したてだからだということを知った。農家からいただいたお米はスーパーに置かれていたものではないので、流通を通さない分、精米してからの時間が短い。つまり、精米機があれば、玄米を買って保存しておき、いつでも精米したてのおいしいご飯が食べられるということだ。精米機が欲しい。そう思って、探してみたのだけれど、当時の家庭用の精米機は大きく、ただでさえ狭い我が家のキッチンには置き場などどこにもなかった。

幅17cmのコンパクトサイズ

ホッパーの部分に玄米を入れる。850gまでOK

あきらめていた精米機だが、ここ何年かでコンパクト化が進み、キッチンに置いても邪魔にならない大きさになった。今回紹介する家庭用精米機「BR-CB05」は幅がわずか17cm。炊飯器の横に置いても邪魔にならない製品だ。しかも、価格が手ごろというところもいい。カタログ上に表示されている金額は37,800円である。マイコミジャーナル価格情報(2010年1月16日現在)では、最低価格が22,755円。従来品から比べると最新の機種であるBR-CB05は買いやすくなったといえるようだ。

大きさ、価格と欲しいと思えるレベルになった精米機だが、操作が難しかったら毎日つきあうものとして適さない。そこで、さっそく使ってみることにした。結論からいえば、使い方はとても簡単だった。まずは、玄米を上部のホッパーに注ぎ入れて、必要に応じて精米度のダイヤルを回し、ボールをセットしてスイッチを入れる。これだけである。ほどなく、出口から面白いように精米された米が出てくる。1合から5合まで対応しているので、ぐうたら家のように1合しか炊かない家庭でも利用できる。精米が終わると、センサ―の働きで動作は自動的にストップする。あとは、スイッチをオフにして、「ぬか」を取り出しておしまい。だれにでも使える簡単さだ。最初はうっかりボールをセットするのを忘れて、スイッチを入れたら、白米がパラパラとこぼれ出てしまった。相変わらずそそっかしいのだが、二度目からは同じ失敗は繰り返さずにうまくいった。

精米された米がパラパラとボールにたまっていく

玄米と精米された米を比べてみると、写真のように色がくっきりと違うのがわかる。精米されているな、などと実感しながら、米をといだ。できあがったご飯は期待通り、ふっくらとしていて、つやつやである。もとになった玄米はで2kgで約1,000円、特別高級品というわけではない標準的なものを選んだ。それでも、おいしい。なぜこんなにおいしいのだろう。

古くなったお米がリフレッシュ

象印によると、お米は精米の直後から表面に酸化膜ができ、日が経つにつれうまみが損なわれるという。米は腐らないとはいえ、食べ物である。白米の状態で空気に触れ続けると鮮度が落ちるということのようだ。野菜のように、鮮度が高いほうがおいしいのである。 もうすこし詳しくいうと、白米は玄米の「ぬか」を取り除いたものであるが、それでも少しだけ米ぬかが残っている。時間が経つと、この米ぬかに含まれる脂肪が酸化して脂肪酸になり、質の低下につながるようである。

左が玄米、右が精米した米

こう書くと、誰にも食べられずに古くなった白米って、なんだか惨めなもののように思えてくる。でも、どんな悲惨な状態になっても、どこかに必ず救いの手はあるものだ。この精米機BR-CB05には、「白米フレッシュ」という機能がついている。これは、古くなった白米の表面層を取り除くことで、ニオイやパサツキを抑えて、鮮度を蘇らせるというものだ。

ふっくらとした甘みのあるご飯のできあがり

さらに、白い米が食べたいときは、ダイヤルを右に回すと、より白くなる。精米機によっては、お米が割れてしまうものがある。このBR-CB05では「圧力精米式」といって、お米屋さんと同じ方式をとっているからお米が割れにくいようになっている。具体的にいうと、この方式はお米同士をこすり合わせながら、ゆっくりとぬか層をとっていく。そういわれてみると、精米後の部屋はお米屋さんと同じニオイになっている。

小学校の頃、同じクラスにお米屋さんの家の子がいて、よくお宅にお邪魔させてもらった。入口の引き戸を開けて、うす暗い玄関に入ると、落ち葉をイメージさせるような乾燥したニオイが漂っている。そう、この精米機を使ったときのニオイは小さいときによく嗅いだお米屋さんと同じだ。人によっては、懐かしい気持ちにさせる製品だといえる。こちらの精米機はとてもシンプルなものだ。それでも、いくつかの便利な機能と使い方がある。詳細は次回にお伝えする。

イラスト:YO-CO