作るそばから売れていく。そんな景気のいい話を耳にすることは、最近めっきり減ったけれども、新型インフルエンザ関連商品だけは別のようである。手の消毒用のアルコールが近所のドラッグストアで売切になっているといった、品薄に関する話を耳にすることが増えた。新型インフルエンザ特需でホクホクしているのは、製薬会社やマスクのメーカーだけではない。

「フル稼動で生産をがんばっております」
それでも生産が追いつかない、と申し訳なさそうに、そして、予想以上の売れ行きに驚きを隠せない様子で語るのは、三洋電機 コンシューマエレクトロニクス 家電商品企画部の新秀樹(あたらし・ひでき)氏だ。

同社独自の「virus washer(ウイルスウォッシャー)」機能搭載の空気清浄機、加湿器が売れている。空気そのものを洗ってきれいにしてしまいましょうというこれらの製品。搭載されているウイルスウォッシャーという機能は、ウイルスはもとより、花粉やダニの死がいにも効くという。新型インフルエンザにかかりたくないという私たちの願いと一致し、売れ行きを伸ばしているのだ。このウイルスウォッシャーという機能を実現させているのは、水道水を電気分解して生成する「電解水」の技術だ。これまで、三洋電機はこの電解水技術を自動販売機や洗濯機などで使ってきたのだが、それだけでなく、空気清浄機や加湿器にも搭載している。それほどにまで、なぜ、電解水にこだわるのか。電解水って、そんなに優れたものなのか。製品を触っただけではわからない。そこで、今回は直接、三洋電機さんにおうかがいして話を聞くことにした。

電解水を製品内で生成

今回、紹介するのは三洋電機の加湿空気清浄機「ABC-VWK14B」。加湿と空気清浄の両方の機能を備えている製品だ。先に触れたウイルスウォッシャーを搭載しており、「除菌電解シャワー」が部屋のすみずみまで飛んでいって、室内に漂う浮遊菌やウイルスなどを除菌、抑制してくれるというのがこの製品の一番の魅力だ。まったくありがたい除菌電解シャワーであるが、これを飛ばすには元になる電解水が必要なのである。そのため、製品の中には電解水生成装置が内蔵されており、水道水を電解水に変えている。

「ウイルスウォッシャー」機能を搭載した製品群

加湿空気清浄機の場合、洗濯機のように水道に製品をつなぐのではなく、水を補給するためのタンクを利用する。ABC-VWK14Bには水タンクがついており、カバーを外して、タンクを取り出し、水を入れる方式になっている。わざわざ水を入れると聞いて、なんて面倒くさい! 他社製品のように空気中の水分を利用してくれたらラクなのに、などと思ってはいけない。

一般的に、空気中から水分をとる方法だと安定性の面で劣るという。季節によって、空気が乾燥しているときもある。冬になるととくに、空気中に含まれる湿気が減るのは確かだ。その点、水をタンクに入れておけば、電解水の元となる水はふんだんに利用できる。水を入れることで、安定して、除菌電解シャワーを出すことができるというメリットがある。

電解水生成装置(左)。電解水中に存在する「電解次亜塩素酸」と「OHラジカル」という2種類の活性酸素種がウイルス蛋白と反応し、ウイルスの感染価を抑制できるものと推定されている。右は生成された電解水

除菌電解シャワーはミスト状で、吹き出し口から出てくる。ミスト状だと、電解水が長持ちするのだという。せっかく、ミストが出ても、ウイルスを抑制する前に消えてしまったら役に立たない。長持ちするところが何よりの魅力だといえる。

電解水の大きな機能には除菌や菌の抑制がある。加湿器を使っていると、トレーにぬめりが出てしまったり、くろずみが出てしまうことがある。この電解水なら、除菌機能が働いて、製品内部にある加湿トレーもきれいに保つことができる。これもうれしい機能だ(手入れの手間が省けるし……)。

効果に対して厳しい目で見る親心

親としては、自分が新型インフルエンザにかかる心配より、自分の子どもにかかってほしくないという気持ちのほうが強い。これは私だけではないだろう。子どもが高熱で苦しむ姿はいたたまれないものがあるのだ。子どもが使うとなると、ウイルス抑制の効果に対して、本当に有効なのかどうしても向ける視線が厳しくなる。ウイルスを99%減少させ、抑制効果がある、などとカタログには書いてあるが、実は、新型インフルエンザには効きませんというのでは困る。どうしても、子どものことを思うと、効き目が気になるところだ。空気中に新型インフルエンザウイルスを撒き散らしても、ABC-VWK14Bを運転させておけば、人々は感染しないことを実際に確認したのだろうか。

「ABC-VWK14B」。ホワイトカラーで、主張しすぎないシンプルなデザインを採用した

三洋電機の実験では、本物の新型インフルエンザの株を用いて、電解水に触れさせたところ、ウイルスを99%以上抑制したことを確認している。でも、これは電解水が抑制するのを確認しただけであって、ABC-VWK14Bを運転させた中での確認ではない。それもそうである。新型インフルエンザの菌がウヨウヨしている室内での実機運転は、いくら実験だといっても、衛生上の問題がある。実機確認はないけれど、ABC-VWK14Bはウイルス抑制効果のある電解水を利用しているのだから、結果的にABC-VWK14Bから出されるミストもウイルス抑制効果があるはずだ。

三洋電機は、電解水は新型インフルエンザウイルスのほか、鳥インフルエンザウイルス、ノロウイルスなどに効果があると実証している。インフルエンザの予防対策として、ウイルスウォッシャー機能を搭載した加湿空気清浄機ABC-VWK14Bは、一家に一台は置いておきたいものである。このABC-VWK14Bは具体的にどのような機能があるのか、手入れのしやすさはどうか。次回、詳細をお伝えする。

イラスト:YO-CO