年々、高まりをみせているものに、「健康志向」がある。別に長生きしたいとは思わないが、「ビタミン」「繊維質」といった言葉にはひかれるものがある。考えてみれば、「体にいい」なんて、あいまいでキチンとした定義がない言葉だ。それでも、「体にいいんですよ」などと言われると、積極的に摂ろうとしてしまう。

世の中全般でも、「ヘルシー」なものがもてはやされるようになった。あたりには、「体にいい」ものが溢れている。などと批判じみたことを言いながら、私はご飯に玄米を混ぜることがよくある。野菜が得意ではない娘になるべく食物繊維をとらせたいのである。

自動ホームベーカリー「SD-BM102」

実は、小麦粉にも玄米のようなものがあるのをご存じだろうか。全粒粉(ぜんりゅうふん)といって、小麦の表皮、胚芽、胚乳を取り除かずに、すべて粉にしたものがある。玄米同様、食物繊維をたくさん含んでいる。加えて、栄養価が高く、鉄分やビタミンB1の含有量も高いという。通常、食パンなどを焼くときは強力粉を材料にするのだが、この全粒粉に代えて焼くこともできる。できあがったパンの栄養価が高いので人気だ。が、全粒粉は栄養価が高い反面、通常の小麦粉に比べてパンが膨らみにくいといわれている。したがって、従来のホームベーカリーでは全粒粉を一般の強力粉に、10~20%程度配合するのが限界だった。そこで、前回から紹介しているパナソニックの自動ホームベーカリー「SD-BM102」。プログラムの改良により、全粒粉100%でもふっくらと焼けるように工夫を凝らしているのだ。不足しがちな食物繊維やビタミン、鉄分をたっぷり娘に摂らせたい。果たして、娘がおいしいと感じられるパンはできるのか。

ヘルシーな全粒粉パンの味は?

早速、全粒粉パンを焼いてみた。作り方は強力粉のパンと同じ。材料を入れてボタンを押すだけである。違いは押すボタンが「全粒粉」であることだけだ。焼き上がりまでの時間はやや長いが、レーズンなどを入れることも可能だ。私がチャレンジしたのは、取扱説明書にある全粒粉50%配合のパン。ふっくらと膨らんでいる。味は違和感がなく、やや深みがあるうえ、食べ応えもあった。しかし、市販の食パンと比べて若干のクセがある。ので、娘はイヤがるのではないかと心配した。が、「おかわり!」。一切れだけじゃ足りないと、目の前にあった全粒粉パンを平らげた。

ドライイースト、レーズンなどの具材は自動投入してくれる

全粒粉パン。真ん中から切ったところ

今回、自動ホームベーカリー SD-BM102を楽しみにしていたもう一つの理由は、"パン以外"を作ることである。このベーカリー、実はケーキにお餅、うどん、そしてパスタまで作れるのだ。随分前になるが、きちんとしたイタリア料理の店で食事したことがあった。普段、外食でパスタを食べるのは、娘と行くファミリーレストランくらい。だが、そのイタリア料理店のパスタは歯ざわりが違うのである。こしがあるというか、いかにも麺づくりから手をかけました、という気合いが漂っている。違いは、家で茹でるパスタは日持ちをよくするため、乾燥させている。だが、そこの店で出すパスタはそうではない、手作りの生パスタなのである。ずっと、生のパスタを食べたいと願っていた。

SD-BM102は簡単にピザやうどん、パスタの生地を作ってくれる。パスタなら、出来上がった生地を1時間、冷蔵庫で休ませた後、麺棒で引き伸ばす。あとは5mm幅に切れば出来上がりだ。

サーモンとエリンギのクリームパスタ

トマトジュースを5分間煮詰めたソースのナポリタン

はっきり言って、お世辞抜きでおいしい。おすすめである。手作りパスタって専門店に行かないと満足できないと思っている人も少なくないだろう。ぜひとも一度試しに、ホームベーカリーでつくった生パスタを味わってほしい。納得できるはずだ。

材料にほうれん草やトマトピューレを混ぜればカラフルなパスタもできる。食べる人数が多ければ、何種類かのパスタとソースを用意して、パスタパーティを開くのも楽しい。

味の良さが最大の魅力

私がSD-BM102を気に入っているのは、たくさんのメニューが用意されているのだが、どれもおいしくできるところだ。お客様が来て出しても、恥ずかしくない。おいしさが魅力だ。

うどんはコシがあって美味

ここまできたら、お餅にも挑戦したくなる。ということで、トライしてみた。本来、お餅は手のかかるものである。せいろでもち米を蒸して柔らかくし、杵と臼でついて餅にする。後片付けも面倒である。大勢で持ちつき大会を開くなら楽しいが、個人では負担が大きすぎる。

SD-BM102は洗って水気を切ったもち米と水をパンケースに入れるだけ。水加減を増減することで、好みの固さに出来上がる。途中でフタを開けて、一回ばかりスタートボタンを押さなければならない。が、これは簡単な作業だ。出来上がったら、黄な粉、あんこ、大根など、好みで仕上げればいい。私はやや固めに作ったので、雑煮に入れた。

価格はオープン。マイコミジャーナルの価格情報(4月10日時点)では17,989円~28,350円で出ていた。フランスパンやロールパン。ぶどうパンやシナモンロール。そしてメロンパン。もちろん、クロワッサンの生地もできる。たくさんのパンが作れるうえ(*)、パスタやうどんにも対応。お餅までできるのだ。そして、全粒粉パンのようなヘルシーなパンもできる。しかも、どれも味がよい。これらのことを考慮すると、かなりお得だといえる。

ドライフルーツ入りのパンも簡単

私はどちらかというと外食が好きだ。だいたい、家で作る料理なんて、手抜きが多い。外食のほうが食材も高級だし、味もいい。外で食べる機会は多くないが、娘は家で作る私の料理よりも、外食のほうが好きだと思っていた。でも、先日娘は「やっぱり、おうちでごはんがいい」と言った。こんな母でもいいのか? 仕事ばかりしていて、家事にはぐうたらな私だが、それでも家で作る母親のご飯のほうが、外食よりもいいと娘は言う。意外だったし、ちょっとだけ嬉しくもあった。ならば、お母さんは一生懸命料理するよ。あなたのために。そんなときに、役立つのがSD-BM102である。おいしいし、パスタ、パン、うどんなど、手作り感がムンムン漂う「おうちでごはん」を味わえるのである。

(*)成型等は手作業のものもある

イラスト:YO-CO