1月半ば、一本の電話があった。出てみると、マイコミジャーナルの編集者、Aさんだった。しばらく話をしたあと、彼女は言った。
「ぐうたらさんは、料理ってするんですか?」
「ええ、まあ、主婦ですから。頭に"ぐうたら"がつきますけれど……」
「じゃあ、お菓子なんかも作りますか?」

彼女は続けて言った。
「ハートの形をした可愛らしいワッフルを作る機械があるんですよ。バレンタインも近いですし、娘さんもお菓子づくりに目覚めたようですし……」
ばれんたいん? ぐうたら主婦にとって、2月14日はクリスマスの次に無縁なイベントの日である。とはいえ、食べることに関する事項は基本的に断らない主義だ。バレンタインはどうでも良いとして、ともかくワッフル作りに挑戦することにした。

クロア クラシックワッフルメーカー。60年代のオリジナルデザインを再現している

ワッフルをプレートからはがすフォークつき

焼き上がりはランプでお知らせ

名前は「クロア クラシック ワッフルメーカー」という。鍋のような形をしているが、簡単操作のワッフルメーカーである。プレートにワッフルの生地を流し込んでふたを閉める。待つこと1.5分~3分。赤色のランプが緑色に変わったらできあがり。ランプの色で焼き上がりを知らせてくれるので、焼き過ぎて焦がしてしまう心配もない。

焼いている間は赤。焼きあがると緑色が点灯する

パティシエ志望の娘は薄力粉のニオイをかぎつけたのか、粉やバターを計量している私に近寄ってきた。
「私もやる、やる、やるぅ~」
私が一人で作ったほうが早いのだけれど、子供のやる気を伸ばすのが親の役割。仕方がないので娘と二人で作ることにした。最近、娘は料理教室に通い出しているだけあって、クリームのあわ立てなど、以前よりも手際がよくなった。使えるじゃないか。おかげで、はかどった。

蓋を開いた状態

タネを流し込むプレート部分。ハート型が5つ

ワッフルメーカーは幅20センチメートルくらいの大きさのものが主流だ。対して、こちらは幅33センチメートルと貫禄たっぷりである。ステンレスの外観がどこか懐かしさを漂わせていて洒落ている。見た目がきれいなだけでなく、使い勝手もいい。プレート部分は油を塗らなくても、生地はこびりつかないようになっている。製造しているのはクロアというドイツの会社だ。日本ではなじみが薄いが、創業は1898年、110年もの歴史ある会社だという。ドイツはダイムラー、BMWなどの自動車メーカー、印刷機のハイデルベルグ社など、技術力の高い企業が多くある国だ。クロアのワッフルメーカーもどっしりと構えた外観通り、安心感の持てる製品だ。

焼くのもお手入れも簡単

レシピが取扱説明書に載っている。イースト菌を使って作るワッフルもあるが、取扱説明書に載っているのはイーストを使わないタイプ。簡単にできるものばかりだ。チーズワッフルにチョコチップ、バナナなど7種類が載っている。私たち親子はアメリカンワッフルに挑戦した。バターを白くなるまですり混ぜる。次に、卵をボールに割り入れて、電動ハンドミキサーを当てる。

焼きあがったところ。つまみで焼き加減が調節できる

卵がハンドミキサーでつぶれる瞬間、いつも大切なものを壊してしまったような、後ろめたい感情が一瞬よぎる。でも、かまわずミキサーで卵をかくはんし続ける。バターと混ざり合っていく過程で、黄身を壊した申し訳なさは消えて行き、もっと混ぜてやろうという前に進む気持ちに変わっていく。ここに気持ち良さを感じるのは私だけだろうか。それはそうと、次の工程として牛乳を入れてシャカシャカ混ぜ合わせる。そして、最後に粉を入れて混ぜればワッフルのタネが出来上がる。

生地はお玉に一杯程度、プレートに流し込む。入れすぎると、ふたを閉めたときにこぼれるから要注意だ。ふたについている赤色のランプが点灯する。あとは、緑色が点灯するまでじっと待つだけ。出来上がったら、付属の木製フォークではがす。ハート型のワッフルが5つ、一度に焼ける。冷ましてから、クリームとイチゴを乗せて、できあがり。もちろん飾りつけは娘の担当である。

ハート型のワッフルが一度に5つ焼ける。飾りつけは娘の担当

使い終わったら、温かいうちにペーパータオルでプレートを拭く。ペーパータオルをはさんでプレスしてもよごれがとれ、お手入れは簡単だ。主婦としては、どんなに優れた製品でも手入れが大変なものはちょっとパスである(って、私だけ?)。ともあれ、お手入れという点でも、このワッフルメーカーは合格である。

お値段は15,750円。安くはないが、使い勝手もデザインも良いことを考えると損のない商品だ。なにより、子供と一緒になって、おやつ作りを楽しめるのが嬉しい。難点をいえば、生地を作るのが面倒なこと。しかし、今は便利な世の中だ。ホットケーキミックスと同じように、ワッフルミックスも売っている。これがあれば、牛乳と卵を混ぜるだけで準備は終わる。朝食など、時間のないときは、ワッフルミックスを使えばいい。トーストを焼くのと時間に大差はない。ワッフルの朝食にしてあげたら、娘はきっと喜ぶだろう。子どもが喜ぶ顔を見ていると、親は嬉しい気持ちになってくるものなのだ。