いささか旧聞に属する話になってしまい恐縮だが、2009年9月末時点における各FX会社の預かり資産残高をランキングしてみた。データは、FX情報会社のフォレックスプレスから引用したものだ。表には、データを開示しているFX会社のみで構成されている。

データ公表会社の数は全部で19社。今も100社近いFX会社があることを考えると、ごく一部に過ぎないが、それでも現在のFX業界全体の動向を把握することはできる。2008年9月末から2009年9月末までの1年間で残高の増減を見ると、19社のうち12社が、預かり残高を減らしてしまった。

預かり残高ランキング

データ公表会社のみ

たとえばトレイダーズ証券は、1年間で86.92%の減少だ。この他、アトランティックF・Cが45.74%のマイナス、マネースクエア・ジャパンが42.57%のマイナスとなっている。

一方、大幅に預かり残高を伸ばしたところもある。外為オンラインは158.05%の増加と大幅に伸ばし、サザインベストメントは41.99%の増加と大健闘した。

2010年は、読者の皆さんもご存知かと思うが、FXの規制が強化される。その影響で、合併や廃業を決めたFX会社も少なくない。したがって、今後は預かり残高をしっかりと増やしている、もしくは大きく減少させていないFX会社を選んで、口座を開設する必要性が高まってくるだろう。

なかでも、FXのみを扱っている専業のFX会社に口座を開く場合は、特に預かり残高の推移には注意を払ったほうが良い。FXを扱っている会社は、それのみを扱う専業の業者と、証券会社などがサービス多様化の一環として、FXを扱っているケースがある。証券会社であれば、FX以外にも株式や投資信託、そのほかの金融商品を扱っているので、たとえFXの預かり残高が減少したとしても、経営にダイレクトに悪影響を及ぼす心配は少ない。

しかし、FX専業の場合、FXの預かり残高が減少するということは、それだけ経営基盤が大きく揺らぐことにつながる。したがって、これからFXの口座を開くのであれば、専業の会社よりも証券会社などでFXを扱っているところに開く方が、経営の安定性という観点からすれば安心できるだろう。何しろ、自分が取引しているFX会社が廃業になどなったら、ある一定の時点で保有しているポジションを強制的に閉ざされることになる。その時点で利益が出ていれば問題はないが、もし含み損が生じていたら、強制決済された時点の為替レートしだいでは、大きな損失を実現させられることになる。取引の継続性という点を重視するのであれば、なるべく経営的に安定したところに口座を開きたい。

FX会社のなかには、口座数ナンバーワンを標榜しているところもあるが、基本的に口座数の多寡は、それほど経営の安定性には関係がない。口座数という点では、たとえば外為どっとコムなどはダントツだが、いくら口座数が多かったとしても、実際に稼動していない休眠口座ばかりだったら、会社の収益性という点では何の意味もない。実際、FXの投資家は、多くが複数のFX会社に口座を開いており、情報収集を専門に行うために口座を開いているところと、取引するために口座を開いているところとを、使い分けているケースも多いと聞く。いくら口座を開いてもらっても、情報収集のためだけだったら、収益面では何のプラスにもならない。

これから口座を開設するのであれば、気に入ったサービスがあるかどうかにもよるが、まずは証券会社に開くのが一番無難。もし専業のFX会社に口座を開くのであれば、着実に預かり残高を増やしているところ、また減らしているとしても、大きく減らしていないところに開くことをお勧めする。

執筆者紹介 : 鈴木雅光氏(JOYnt代表)

主な略歴 : 1989年4月 大学卒業後、岡三証券株式会社入社。支店営業を担当。 1991年4月 同社を退社し、公社債新聞社入社。投資信託、株式、転換社債、起債関係の取材に従事。 1992年6月 同社を退社し、金融データシステム入社。投資信託のデータベースを活用した雑誌への寄稿、単行本執筆、テレビ解説を中心に活動。2004年9月 同社を退社し、JOYntを設立。雑誌への寄稿や単行本執筆のほか、各種プロデュース業を展開。