FX業界に統廃合の嵐が吹き荒れそうだ。筆者の知人のところにも、過日、「うちの会社(FX会社)を買い取ってもらえないだろうか」という相談が来たという。ある大手FX会社でさえ、他の会社に売却の打診を行っているという噂もあり、何やら業界全体が浮き出し立っている感じだ。

金融庁がFXの規制を発表してから、この手の話が頻繁に浮上するようになってきた。すでにいくつかの会社が事業譲渡や廃業を決めている。

2009年5月29日付で大阪為替倶楽部が、FXのサービスを終了した。さらに6月26日付でプロテックスオフィスが、そして7月31日付で外為アルフィックスが、同じようにFXのビジネスから撤退することになる。

統合の動きも加速してきた。

5月18日にはアイディーオー証券が、ISホールディングスの子会社となった。ISホールディングスは、外為オンラインの親会社だ。

6月29日には、ai明治FX株式会社がアイ・トレードFXに事業譲渡を行う。同じく、カネツGKGohもアイ・トレードFXに、7月13日付で事業譲渡を行う予定となっている。

この手の動きは、まだ氷山の一角だろう。他にも経営の苦しいFX会社はたくさんあるからだ。

たとえば、業界最大手のD社。過日、口座数が40万件を初めて超えたというが、果たしてその中身はどうか。2009年3月時点のデータだと、口座数が37万8,035件で、預かり額が841億4,200万円。確かに、FX業界ではダントツの口座数と預かり額を誇っているが、1口座あたりの平均預かり額は、22万円程度のものだ。また最近、業績の伸びが著しいG社も、口座数が12万6,874件で、預かり額が266億9,100万円。これも1口座あたりの平均預かり額を計算すると、21万円程度に過ぎない。

もっとも、FXの場合はレバレッジを効かせることができるため、預かり額が少なくとも、これに数10倍、あるいは100倍超のレバレッジをかけることによって、想定元本は遥かに大きく膨れ上がる。おそらく、他のFX会社も状況は大きく違わないはずだ。ハイレバレッジを売りにしているFX会社ほど、1口座あたりの平均預かり額は少額になっていると思われる。

しかし、過日の報道にもあったように、レバレッジの規制は、内閣府令の改正が施行されてから1年後に50倍、さらにそこから1年後に25倍ということで、おおむね方向性が固まった。20万円程度の預かり額で、レバレッジが25倍に規制されたら、建てられるポジションの想定元本は500万円だ。1ドル=100円だとすると、最大取引できても5万ドルまで。1ドル=20銭の変動で得られる利益は、1万円に過ぎない。おそらく、少額の証拠金でスキャルピングをやっていた投資家は、レバレッジの規制が行われると同時に、撤退することになるだろう。

投資家が撤退すれば、FX会社は収益源を失う。これは、今までも当コラムで何度となく指摘してきたことだが、ハイレバレッジを売りにしていたFX会社ほど、厳しい状況に追い込まれる。

今回、レバレッジ規制まで1年の準備期間が設けられたのは、FXの廃業が急増することを警戒したためと言われている。当初、一部の報道に見られたように、7月を境にレバレッジ規制を実施するということになったら、おそらく今ごろ、多くのFX会社がバタバタと廃業に追い込まれていたはずだ。当然、廃業となれば、顧客のポジションは強制決済されるため、含み損を抱えたポジションを持っていた場合、それが実現損になる。このような状況が相次いだら、おそらくなかには「金融庁の規制のせいで損をした」と考える投資家も出てくるだろう。

今、一番、懸念されるのは、レバレッジ規制が行われる1年後をめどに廃業するからということで、最後の荒稼ぎを目論むFX会社が出てくるのではないかということだ。顧客の取引を呑むだけでなく、俗に言う「ストップロス狩り」を行い、顧客が被る損失を、自分たちの利益に転換するようなところが、出てこないとも限らない。

特にこれからFXを始めようと考えている個人は、取引相手となるFX会社を慎重に見極める必要がある。

執筆者紹介 : 鈴木雅光氏(JOYnt代表)

主な略歴 : 1989年4月 大学卒業後、岡三証券株式会社入社。支店営業を担当。 1991年4月 同社を退社し、公社債新聞社入社。投資信託、株式、転換社債、起債関係の取材に従事。 1992年6月 同社を退社し、金融データシステム入社。投資信託のデータベースを活用した雑誌への寄稿、単行本執筆、テレビ解説を中心に活動。2004年9月 同社を退社し、JOYntを設立。雑誌への寄稿や単行本執筆のほか、各種プロデュース業を展開。