過日、日本経済新聞や週刊東洋経済に報じられた内容について、背筋が凍る思いをしたFX関係者は少なくないのではないか。内容は、両者とも顧客資産の保全を強化するため、FX会社に信託保全を義務付けるというもの。これが実現すれば、おそらくかなりのFX会社は、経営モデルそのものを見直さざるを得なくなるはずだ。

「金融庁の調べでは、07年12月時点でカバー先へ預託した証拠金を自社の資産と同じ口座で管理しているFX会社が41%にも達する」(週刊東洋経済より)。

これが何を意味するのか。

現在、分別管理には複数の方法が認められている。信託保全方式以外では、カバー先への預託、預金口座といったところだが、たとえばカバー先や預金口座を用いて分別管理する場合、FX会社自身の資産ときちっと区分けされているのかどうかという問題が生じてくる。

もし区分されていなかったとしたら、顧客資産が流用されるリスクが高まってくる。「カバー先へ預託した証拠金を自社の資産と同じ口座で管理している」ということは、分別管理が徹底されていないことの証しだが、その手のFX会社が41%もあるというのだから、驚きだ。この状態でFX会社が破たんしたら、いくら分別管理を標ぼうしていたとしても、恐らく顧客資産は戻ってこない。こうした現状を見て、腰の重い金融庁も、ようやく動き出したということなのだろう。

さて、2009年にも信託保全方式の義務化が行われる見通しだが、信託保全方式に移行しているFX会社は、まだ少数だ。となると、多くのFX会社がこれから信託保全方式の採用に動くことになる。

しかし、信託保全方式に移行するといっても、おそらくそう簡単にはいかない事情もあるのだと思う。分別管理の方式として、これまで信託保全方式がベターであると言われ続けていながら、今もってそれを採用していないFX会社が多数あるということが、それを証明している。原因はコストの問題なのか、それともFX会社の信用リスク上、信託銀行側が引き受けたがらないのか、そこは何ともいえないが、信託保全にするのが理想だとは思っていても、現実的にそれを導入できない理由が、何かあるのだろう。

義務化されるであろう信託保全方式を導入できないということになれば、残された道は廃業か、他社との合併か、もしくはくりっく365をはじめとする取引所FXへの参加ということになる。ただ、取引所FXに参加するためには、取引所による参加資格の審査を受け、認められなければならない。これまたハードルが高い話だ。

それらを考慮すると、現在130社近くあると言われるFX会社の数が、来年にかけて激減するかも知れない。これからFXを始めようと考えている人はもちろんだが、すでにFX会社に口座を開いて取引している人も、自分の取引先が信託保全方式を採っているのかどうか、チェックしておくべきだろう。

もし信託保全方式を採用していないのであれば、今後採用する予定があるのかどうか、採用するとしたらいつなのか、採用しないとしたらどういう方針を考えているのかを、しっかりヒアリングすること。これらの質問に対して満足に答えられないようなFX会社であれば、早々に口座を解約して、もっとしっかりしたFX会社との取引に切り替えることをお勧めする。

執筆者紹介 : 鈴木雅光氏(JOYnt代表)

主な略歴 : 1989年4月 大学卒業後、岡三証券株式会社入社。支店営業を担当。 1991年4月 同社を退社し、公社債新聞社入社。投資信託、株式、転換社債、起債関係の取材に従事。 1992年6月 同社を退社し、金融データシステム入社。投資信託のデータベースを活用した雑誌への寄稿、単行本執筆、テレビ解説を中心に活動。2004年9月 同社を退社し、JOYntを設立。雑誌への寄稿や単行本執筆のほか、各種プロデュース業を展開。