まいど、"相場の福の神"こと藤本誠之です。この連載では、上場企業の経営者との面談から気づいた、藤本がすごいと思った、ユニークなビジネスモデルの企業をご紹介します。第4回は「契約書に印鑑って必要じゃなかったの?」です。

契約のビジネスモデルを変える

世の中の様々なことは契約によって決まっています。企業と労働者の間では、雇用契約書があります。例えば、家や車などを買う場合には売買契約書などです。今までの場合、印刷された契約書を2部作って契約を行う当事者の二者が記名・捺印を行い1部ずつ保管するのが一般的でした。

しかし、実は法律上では契約は、紙に印刷された契約書に記名・捺印していなくても、効力を発生するのです。日本の法律では基本的に契約方式は自由なのです。

この従来のビジネスモデルを、「クラウド上にUPされた契約書に電子署名する」というビジネスモデルで打ち破ったのが弁護士ドットコム(6027)です。

弁護士ドットコムは、現在、参議院議員でもある元榮太一郎 弁護士ドットコム 代表取締役会長が、2005年に起業しました。国策である司法制度改革によって、ここ十数年の間に、弁護士人口は約2倍に増加しています。しかし、一般の方が、弁護士を利用するには誰に頼めば良いか分からないという高いハードルがありました。これをネットの利用で解決しようとしたのが、起業の理由です。

弁護士のプロフィールをネットで確認し、検索でき、無料で法律相談できるWebサイト「弁護士ドットコム」がメインビジネスです。弁護士ドットコムは、登録弁護士数1万3,000人(弁護士の3人に1人超)、月間サイト訪問者数971万人の日本最大級の法律相談ポータルサイトとなっています。紹介した弁護士から広告料をもらう弁護士マーケティング支援サービスと他人の法律相談を読むことができる有料会員サービスが主な収益源だそうです。現在では、弁護士同様のサービスを税理士向けにも「税理士ドットコム」も運営しています。

弁護士ドットコムが提供する「クラウドサイン」とは

今までにない全く新しい「クラウド上にUPされた契約書に電子署名する」というビジネスモデルを作りだしたのが、弁護士ドットコムが提供する「クラウドサイン」です。

クラウドサインは「紙と印鑑」を「クラウド」に置き換え、契約作業をパソコンだけで完結させるもので、ビジネスモデル特許を申請中です。Web上で契約書作成、締結、保管を行えるクラウドサインは、旧来の紙と印鑑による契約作業 をクラウドに置き換え、契約締結のスピード化と、郵送代や紙代及び事務作業などの間接費のコスト削減を実現することで、契約業務の効率化につながるといいます。

具体的には、お互いが合意した契約書(PDF形式)をクラウドサインへアップロードし、押印・署名などの場所を指定した上で送信します。クラウドサインから取引先に確認依頼のメールが送付されます。送信者側では契約書の閲覧、進捗状況の確認、確認依頼のリマインドができます。取引先の担当者がクラウドサイン上で押印します。この際取引先がクラウドサインのアカウントを持っていなくても、契約の締結が可能です。以上で契約作業は完了です。

料金体系も、個人事業主向けプランは月に10件までであれば全くの無料です。企業向けのスタンダードプランでも月額固定費用1万円で、契約書送信件数ごとの費用50円で使い放題です。2017年7月にクラウドサインにおける累計契約締結件数が9万件、導入企業数も9,000社を突破し、導入企業数及び累計契約締結件数ともに順調に増加しています。

また、デジタルガレージ(東証一部 4819)の子会社で、決済事業を手がけるベリトランス及びクレディセゾン(東証一部 8253)とサービス連携し、クラウドサインでの契約締結と契約にかかわる決済を同時に実行できる「クラウドサインペイメント」も開始しています。クラウドサインペイメントの開始により、契約から支払いまで契約締結にかかわる一切の作業をクラウド上で行えることとなり、契約にかかわる作業のスピード化とコスト削減による効率化を実現しています。

福の神の「ここがすごい」
月10件までの無料提供によって、新規累計契約締結件数が、9万件、導入企業数も9,000社を突破し、導入企業数及び累計契約締結件数ともに順調に増加させるマーケティング力
弁護士ドットコム (6027) 東証マザーズ

■株式データ
株価 1,560円
単元株数 100株
予想PER(連) 111.43倍
実績PBR(連) 28.86倍
予想配当利回り 無配
時価総額 約334億円

* 株価データは2017年8月28日終値ベース
* 本サイトで紹介する意見や予測は、筆者個人のものであり、所属する会社や会社のアナリストとしての意見や予測を表すものではありません。また、紹介する個別銘柄の売買を勧誘・推奨するものではありません。投資に当たっての最終決定はご自身の判断でお願いします。
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執筆者プロフィール : 藤本誠之

「相場の福の神」と呼ばれるSBI証券客員マーケットアナリスト。 年間200社を超える上場企業経営者とのミーティングを行い、個人投資家に真の成長企業を紹介している。「まいど! 」の挨拶、独特の明るい語り口で人気。日興證券、マネックス証券、カブドットコム証券、SBI証券などを経て、現在は、財産ネット株式会社の企業調査部長。ラジオNIKKEIで3本の看板番組を持ち、その他テレビ出演、新聞・雑誌への寄稿も多数。 日本証券アナリスト協会検定会員、ITストラテジストAll About株式ガイド。 著書:『難しいことは嫌いでズボラでも 株で儲け続けるたった1つの方法』(SBクリエイティブ)など合計15冊