まいど、"相場の福の神"こと藤本です。前回は、「NISAで「投資信託」を買おう!--その(2)積極運用編」として、積極運用を行う方法について解説いたしました。

そのポイントを再掲載すると以下の通りです。

ポイント

  • NISAでの運用方針には、リスクをとって収益を狙う積極運用と、リスクを抑えて安定収益を狙う安定運用があります

  • 積極運用の場合、株式・リート(上場不動産投信)に投資する投資信託がオススメです

  • 投資する地域は、大きく新興国、先進国に大別され、それぞれオススメのファンドをご紹介いたします

NISAを使って積極運用するには、株式・リート(上場不動産投信)に投資する投資信託がオススメです。

2つの運用方針

NISAで投資信託に投資をするに当たっては、大きく分けて以下の2つの運用方針が考えられます。

  • (1)積極運用

非課税になるのだから、利益が大きければ大きいほど得になる。リスクを取って積極的に運用していく。

  • (2)安定運用

もしも5年後に損失が出ていたら、非課税制度の意味が全くない。期待できる利益は大きくなくても、できるだけリスクを取らずに価格変動を抑えて安定的に運用をしていく。

どちらの運用方針を採るかは、皆様の資金性格や投資経験などによって決めていただかなければなりませんが、それぞれの方針ごとに、ファンド選びのコツをご紹介していきたいと思います。

安定運用編

今回は、(2)の安定運用編についてご紹介しましょう。

何に投資?

主要な投資対象資産の中で最も安定的な運用が期待できるのは債券です。NISAでは債券は非課税対象外となっていますが、株式投資信託の中には債券だけに投資する投資信託もありますので、投資信託を活用すれば実質的な債券運用をNISA口座で行うことが可能です。

なぜ、債券は安定?

債券の価格が、株式に比べて安定しているのはなぜでしょう?

一般的な債券には償還期限(満期)があり、発行体が破産しない限り、償還時には元本が額面で戻ってきます。これがまず株式やリート(不動産投信)と大きく違うところです。

もしも値段が額面より安くなったら、そこで買って償還まで持てば、額面との差額が利益となります。そのような買い手が現れるので、値段がズルズルと下がり続けるということが起こりにくいのです。

また、債券には一般的に利息(クーポン)がついています。利息はあらかじめ決まっているので、株式の配当のように、企業の業績によって増減することがありません。

債券を償還まで保有した場合の投資収益を具体的にイメージしてみましょう。仮に、5年満期でクーポン3%の債券があり、額面100万円で購入したと仮定します。

  • 【1年後】利息3万円受取り

  • 【2年後】利息3万円受取り

  • 【3年後】利息3万円受取り

  • 【4年後】利息3万円受取り

  • 【5年後】元本100万円と利息3万円受取り

  • 【5年間の元利合計】115万円

これは債券そのものの例ですから、投資信託の場合は、債券で運用しているとしても、償還時に投資した元本が戻ってくる保証はありません。

ただ投資している債券での運用成果が、概ね基準価額(と分配金)に反映されてきますので、債券型の投資信託の値動きは、株式型に比べてかなり穏やかなものになるのが一般的です。

債券の金利の違いは?

債券では、決められた利息がもらえて償還時の元本も保証されている、といいましたが、それはあくまで債券の発行者が破産せずに元利を支払った場合です。

今、話題のウクライナ国債(10年債)は10.6%程度、ロシア国債(10年債)は9.3%程度と高利回りですが、日本国債(10年債)は0.6%程度と、同じ国債で10年債なのに全く金利が異なっています。これは、「リスク」によって異なっているのです。実は、今年の夏にサッカーW杯が開催されるブラジルの国債(10年債)の利回りは13.1%程度なので、ウクライナよりもリスクが高いのです。

債券の発行者が元利の支払を続けられなくなるリスクを、信用リスク(クレジットリスク)といいます。この信用リスクによって、金利が異なるのです。信用リスクは低い方が良いに決まっていますが、信用リスクが高いほど金利が高い(収益性が高い)傾向があるので、ここが悩ましいところです(※利回りは2014/3/18時点、SBI証券調べ)

信用リスクの高低を基準に、債券の種類を大まかに分類してみましょう。ファンド選びに際しても、これが重要になってきます。

信用リスクの最も低い債券:先進国の国債、格付けが最上級の社債など

  • 主要債券の例と参考利回り

【日本国債(10年債)】利回り水準: 0.6%程度

【米国国債(10年債)】利回り水準: 2.7%程度

【豪州国債(10年債)】利回り水準: 4.1%程度

信用リスクが比較的高い債券:新興国の国債、格付けの低い社債など

  • 主要債券の例と参考利回り

【ブラジル国債(10年債、ブラジルレアル建て)】利回り水準:13.1%程度

【トルコ国債(10年債、トルコリラ建て)】利回り水準: 10.6%程度

信用リスクの違いによって債券利回りが随分違うことがわかります。あくまで安全性を重視するなら先進国債券型、少しリスクを取って高い金利収入を目指すなら新興国債券型やハイイールド債券(※)型の投資信託が候補となります。

※「ハイイールド債券」とは、一般的に投資非適格とされる、格付けダブルB以下の、信用力の比較的低い債券のことを指します

為替リスクにも注意!

債券自体の値動きが仮に安定していても、外貨建ての債券に投資する投資信託では、為替レートの変動によって基準価額が変動してしまいます。為替リスクをできるだけ避けながら運用する方法を考えてみましょう。

一番確実な方法…国内債券型の投資信託

為替リスクを避ける最もシンプルで確実な方法は、外貨建ての債券に投資しないこと=国内債券だけに投資することです。つまり国内債券型の投資信託を選べばよいことになります。ただし上にも例を示しましたように、日本国債では期待できる収益(金利水準)が非常に低いという問題があります。

為替ヘッジ型の投資信託に投資する

外貨建ての債券に投資しながら、「為替ヘッジ」という手法を使って為替リスクを極力回避するタイプの投資信託があります。比較的金利の高い海外の債券に投資しつつ、為替リスクを抑えることが可能な商品です。

結論として、NISAで安定運用を投信を行う場合、先進諸国の債券を組入れた投資信託がオススメです。為替ヘッジの有無については、安定運用とは言え、少しでも利回りの高さを求める方は、ヘッジなしがオススメですし、やはりより安全に運用したいという場合は、ヘッジありがオススメです。

下記が、オススメの先進諸国の債券に投資する投信です。

リンク先

グローバル・ソブリン・オープン(資産成長型)

朝日Nvestグローバルボンドオープン(Avest-B)

日本金融機関ハイブリッド証券オープン(毎月分配型)円ヘッジありコース

フィデリティ・ストラテジック・インカム・ファンド(資産成長型)Cコース(為替ヘッジ付き)

ボンド・アンド・カレンシー トータルリターン・ファンド(年2回決算型)

今回のまとめ

  • NISAで安定運用を行う場合、債券に投資する投資信託が対象商品になります

  • 債券は、信用リスク(債券の発行者が元利の支払を続けられなくなるリスク)によって、金利が異なります。また、為替リスクにも注意が必要です

  • 安定運用をするのであれば、先進諸国の債券に投資する投資信託がオススメです

次回は、「NISAで「株式投資」-その(1)」です。

執筆者プロフィール : 藤本 誠之

SBI証券投資調査部 シニアマーケットアナリスト。日本証券アナリスト協会検定会員。自称、「相場の福の神」。関西大学工学部電子工学科卒。日興證券(現SMBC日興証券)入社、個人営業を経て、機関投資家向けのバスケットトレーディング業務に従事。1999年、日興ビーンズ証券設立時より、設立メンバーとして転籍(その後、日興ビーンズ証券はマネックス証券と合併)。2008年7月、マネックス証券から、カブドットコム証券に移籍。2010年12月、トレイダーズ証券に移籍。2011年3月、同社を退職。のちに独立、マーケットアナリストとして活躍。2012年からマネーパートナーズのスタッフとして活動。2013年7月1日より現職。著書に 『ニュースを"半歩"先読みして、儲かる株を見つける方法 』(アスペクト)、『株で儲けるニュースの読み方 相場のプロが教える「先読み&裏読み」の極意』(ソフトバンククリエイティブ)、 『儲けに直結!株価チャートドリル』(成美堂出版)がある。
※ 本コラムで紹介する意見や予測は、筆者個人のものであり、所属する証券会社の意見や予測を表わすものではありません。また、紹介する個別銘柄の売買を勧誘・推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。