前回の復習

まいど、"相場の福の神"こと藤本です。前回は、「NISAのデメリット・欠点」と題して、NISA(少額投資非課税制度)の欠点をご説明しました。

そのポイントを再掲載すると以下の通りです。

ポイント

  • NISAでは、利益も損失も無かったことになってしまう

  • 損益通算も、3年間の繰越控除も使えません

  • 最大の欠点は、損を抱えて一般口座に移した場合、損失なのに税金を払わなければならない場合があります

NISAは、上記のような欠点もありますが、その欠点を防ぐ最良の方法は、NISA口座で損をしないことです。また、多くの場合は、非課税制度の恩恵があるはずです。

NISAで「投資信託」を買おう--その(1)

今回から、具体的なNISAの活用法をご紹介いたします。NISAで買える対象商品は、株式と株式投資信託です。皆様に馴染みの薄そうな投資信託から説明しましょう。

「投資信託って何?」

「投資信託」とは、多くの投資家から集められた資金をまとめて、運用の専門家が複数の株式、公社債などに投資し、運用する金融商品です。略して、「投信」(とうしん)などとも呼ばれます。

そのため、「自分で運用するのは不安」という投資初心者の方でも始めやすい点が特徴です。

運用で収益を得られた場合は、出資した投資家が受け取ることができますが、損失を被る可能性もあります。

預金とどこが違うの?

投資信託も預金も大勢の人からお金を集めて運用し、成果を分配するという仕組みは同じですが、主に下記のような違いがあります。最も大きな違いは、投資信託は運用の成果に応じて、「儲け」は決まりますが、預金はあらかじめ決められた利率が貰えます。だから、預金は元本保証ですが、投資信託は元本割れの可能性があります。

投資信託のメリット

  • メリット1 : 少額資金から投資できる

多くの投資家から資金を集めて運用するため、一人ひとりの投資家は1万円前後から投資することができます。毎月の積立であれば、500円程度から投資することも可能です。特にNISAの場合、金額指定で買える投資信託だと、100万円の枠をちょうど使うことも可能です。

  • メリット2 : 分散投資が出来る

複数の株式や債券、または海外資産などに投資する「分散」投資を実現することが出来ます。これにより1銘柄で集中投資を行うよりも、リスクを低減することが出来ます。

  • メリット3 : 専門家が運用してくれる

投資の専門家が経済情勢や市場動向などを調査・分析して投資先を選び出し、運用してくれます。全く資産運用の経験が無く、知識がない方でも、最初に商品さえ選ぶことが出来れば、運用をお任せすることが可能です。

  • メリット4 : 個人では投資することが難しい金融商品にも投資できる

海外株式、特に新興市場の株式や、利回りの高い海外のハイイールド債など、個人では投資することが難しい金融商品にも投資できます。

まず、投資信託は大きく「株式投資信託」と「公社債投資信託」の2つに分類されます。この「株式投資信託」がNISAの対象です(「公社債投資信託」は対象外)。

では次に、この2種類の投資信託の違いについてみてみましょう。まず「公社債投資信託」は「公社債・短期金融商品だけで運用される投資信託」です。株式の組入れはできません。こちらは特に違和感はないですね。

それでは「株式投資信託」の定義はというと、

【×】株式だけで運用される投資信託

【○】株式で運用することができる投資信託

少しの違いのようですが、実は大違い! なんです。「株式を組み入れることができる」と約款(投資信託の契約書)に書いてあれば、実際には株式を全く組み入れなくても「株式投資信託」に分類されるのです!

従って、国内債券だけを組入れた「株式投資信託」もありますし、世界の国債で運用されている日本最大の投資信託「グローバル・ソブリン・オープン」も分類上は「株式投資信託」なのです。

だから、イメージとしては、株式投資信託って言われると、投資対象が株式だけに限定されているように思われがちですが、実際には債券だけを組み込んだ株式投資信託も数多くあるのです。

NISAで買える株式投信は、株式だけでなく、債券や金などの商品や、外国為替や不動産など様々な金融商品に投資できるのです。

「投資信託」は運用をプロの専門家に任せる商品なので、購入してしまえば後はお任せで運用して貰えます。「投資信託」を活用した資産運用で最も重要なことが、どの「投資信託」を選ぶかです。投資の専門家と言っても、全員が運用は上手い訳ではありません。出来るだけ、運用の上手い専門家を選び必要があります。

今回のまとめ

  • 投資信託は資金を多くの投資家から集めて、投資の専門家が運用してくれる金融商品

  • NISAで買える株式投信は、株式だけでなく、債券や商品など様々な金融商品に投資可能です

  • 投資信託を使った資産運用で最も重要なことは、どの「投資信託」を選ぶかです

次回は、投資信託の選び方について解説いたします。

執筆者プロフィール : 藤本 誠之

SBI証券投資調査部 シニアマーケットアナリスト。日本証券アナリスト協会検定会員。自称、「相場の福の神」。関西大学工学部電子工学科卒。日興證券(現SMBC日興証券)入社、個人営業を経て、機関投資家向けのバスケットトレーディング業務に従事。1999年、日興ビーンズ証券設立時より、設立メンバーとして転籍(その後、日興ビーンズ証券はマネックス証券と合併)。2008年7月、マネックス証券から、カブドットコム証券に移籍。2010年12月、トレイダーズ証券に移籍。2011年3月、同社を退職。のちに独立、マーケットアナリストとして活躍。2012年からマネーパートナーズのスタッフとして活動。2013年7月1日より現職。著書に 『ニュースを"半歩"先読みして、儲かる株を見つける方法 』(アスペクト)、『株で儲けるニュースの読み方 相場のプロが教える「先読み&裏読み」の極意』(ソフトバンククリエイティブ)、 『儲けに直結!株価チャートドリル』(成美堂出版)がある。
※ 本コラムで紹介する意見や予測は、筆者個人のものであり、所属する証券会社の意見や予測を表わすものではありません。また、紹介する個別銘柄の売買を勧誘・推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。