本コラムでは、企業で働くプログラマーだった筆者が、起業するまでの道のりや起業してからの日々についてお話します。前回、在宅勤務を実現するために転職を決意したと述べました。今回は、ひょんなことから出会った営業マンさんの伝手で、見事に在宅プログラマーの座を勝ち取った経緯についてお話しましょう。

COBOLは在宅勤務に向いてない!?

勤めていたソフトウェアハウスを辞め、在宅勤務の会社員になろうと準備をしていたちょうどその頃、父が網膜剥離になり、手術後に通院が必要という事態が起こりました。父は目が十分に見えないので、車の運転はもちろん、歩行も慎重にしなくてはいけない状態でしたので、半年は家族のサポートが必要になったのです。家族会議の結果、「"在宅勤務がしたい"と息巻いている暇な家族」に認定された私は、父の看護と仕事を両立するためにも、在宅勤務を何としても実現しなければならなくなりました。

面接を何件か受けましたが、世の中はまだまだ在宅という働き方に否定的でした。「何年か働いてもらった後、君が結婚する頃に在宅勤務を考えてもいいよ」と言った面接官もいれば、「いいね! 本来は在宅という選択肢もあるべきだよね!上の者にかけあってみるよ」と賛同してくれたものの、"上の者"からOKが出ずにお断りの電話をいただいたことも。さらには、「アメリカみたいに物理的に不可能だから生まれた在宅勤務を、日本みたいな狭い土地で実現しようなんて絶対に無理だよ」とも言われました。

こうした状況にめげそうになりながらも、IT技術者は売り手市場であることも知っていたので、諦めずに、1つまた1つと面接を受け続けました。

また、面接を受ける中でこれまで経験を積んできたCOBOLという言語が、どちらかというと在宅勤務に向いていないことも知りました。私が勤めていた頃に出向した先では、PC上での開発やコンパイル、実行が可能なCOBOLを用いていたのですが、当時COBOLと言えば汎用機やオフコンといった持ち出せない機械で動かしているケースも多かったのです。

世の中ではWebによるシステムが知られ始め、動的なWebサイトなどの製作も少しずつ導入されていた時期であったことと、当時の先輩などのアドバイスを参考にして、Perlの勉強をしてみました。しかし、今までとは違うWebのリダイレクトの考え方を習得することに四苦八苦して、現実の厳しさ(?)を噛み締めながら面接を受ける日々を送っていました。

面接先で出会った営業マンのおかげで就職が決定

そんな中、「COBOLを経験し、Perlを勉強してるだけで在宅なんて身の程を知れ」くらいのことを言われた会社を後にした日のこと、その会社で話を聞いていた他社の営業マンが私に「もっと話を聞かせてほしい」と話しかけてきました。

自分がやりたいことを初対面の営業マンに図々しくも遠慮なく話したところ、彼は「面白い話だし、是非応援したいから僕のツテを当たってみますよ」と言ってくれました。数日後にその営業マンから、「発売されたばかりの.NET C#の技術者を育てたい、在宅勤務でもOKという会社の面接が決まった」という連絡を受けました。

結果、その会社に就職が決まり、在宅プログラマー社員として働くことになります。その会社が.NET の技術者を求めていたことで私はC#を習得することになるのですが、それが後に在宅勤務をするにあたって有利に働きました。

ちなみに、私の人生の分岐点に現れたこの営業マンさんとは、今でも数年に1回近況報告をしあっています。また、その時に就職が決まった会社はタンジェリンの重要なクライアントとしてお付き合いをさせてもらっています。「タイミングや縁は大事」とよく言いますが、あの時あの営業マンさんが他社の面接に居合わせなかったら、今の私もタンジェリンもなかったかもしれません。

その後、在宅プログラマーとしてそれから5年ほど勤務した後、結婚を機にフリーランスに転向し、タンジェリンを設立して現在に至ります。在宅勤務歴を合計するともう9年目。"在宅技術者として会社に勤務する"という他の方があまり経験していないスキルを生かし、クライアントが(在宅技術者でも)安心でき、かつ、在宅技術者がきちんと仕事をこなせるよう、試行錯誤を続けています。

ちなみに念願の在宅プログラマーになったものの、やはり楽なだけの道のりではありませんでした。その話は別の機会にお話しできればと思います。

起業というテーマから少しそれましたが、当社の存在意義を語る上で必要だろうと思い、2回にわたり「在宅技術者にこだわったきっかけ」を取り上げました。次回は、「起業前にやっておくこと」をお送りする予定です。

ネコとシゴトとワタシ

        
      

元気いっぱいの兄弟に押されて下敷きになっている長男猫。はたしてママにたどり着けたのか……(笑)

兄猫が我が家に来る前のことです。里親募集のサイトで知り合った、生まれたばかりの仔猫をたくさん育てている里親さんの家にお邪魔することになりました。猫と暮らすのに反対だった夫を「見せてもらうだけ」と説き伏せて、いざ、里親さんの家へ!
小学生くらいの子供がいる4~5人の家族を勝手に想像していたのですが、実際は私達と同じ年くらいのご夫婦でした。猫と言えば、「壁を引っかく」、「走り回る」、「おしっこなどで部屋が臭い」という先入観が一気に吹っ飛んだのは、部屋に案内された時のこと。ギターやベースなどが飾られたおしゃれな部屋に、アロマのいい香りが漂っていたのです。きちんとしつけを受けて大切にされているママ猫を見に行くと、周りには、小さな仔猫がいっぱい……(感動)。
"見るだけ"の約束で連れて来られた夫はというと、動物に慣れていないので仔猫に触れないものの、無言でじーっと仔猫たちを見ていました。当人曰く、この時に兄猫とアイコンタクトを交わして、「うちの家に来るかい?」「行ってもいいニャ」ということで契約成立したとのこと(ついに猫バカ発動です・笑)。
母離れする1ヶ月後に引き取りに来るということが決まり、里親さんの家を後にしました。次回は引き取るまでのお話をする予定です。

執筆者プロフィール

藤城さつき(Satsuki Fujishiro)株式会社タンジェリン代表取締役。
在宅勤務に重点を置き、全国各地の技術者やデザイナー(在籍250名以上)を臨機応変にチーム編成しながら、豊富な質と量の技術力を提供する。今のところ、在宅勤務に対する障害・偏見は多いが、今の日本人にとって絶対に必要なワークスタイルの1つと信じて日々邁進中。
一方、会社員時代に設立した、コンピュータ関連業界で働く女性のためのコミュニティ「eパウダ~」を運営。男性が多いこの業界における女性の人間関係・働き方・生き方についても日々模索中。旦那1頭と兄弟猫2頭の4頭家族。