【コラム】
前回、Flashを比較的シンプルに使用している例を紹介した。今回は、Flashをより複雑なWebシステムのひとつとして利用している例を主に紹介しよう。さらに、最後ではWebが前提であったFlashがWebを飛び出すとどうなるのか、という事例も紹介したい。
Flashの動画フォーマットであるFlash Videoは、動画投稿サイトであるYouTubeやニコニコ動画などで利用されるばかりでなく、映画サイトのトレーラーにも採用されている。 追加のプラグインがなくても再生が可能なFLVフォーマットは、動画投稿サイトや動画配信サイトにおいてAVIやMOVと並ぶほど数多く採用されている。そして、NHKニュースなど、TV局のサイトでは、FLVによるニュースや映像アーカイブの配信サービスなどもあり、動画フォーマットのひとつとして広く受け入れられている。
Webアプリケーションを一言で説明すると、ブラウザ内で実行できるアプリケーションの事で、インストールが必要なデスクトップアプリケーションの対義語になる。最近では、FlashやAjaxによるRIA(リッチインターネットアプリケーション)と呼ばれる、ユーザーインタフェースが洗練されて、画面遷移しないで動作するタイプのものが多く作られている。
「MINDOMO」というマインドマップ作成アプリは、サーバーにデータを保存することが可能なアプリケーションだ。マインドマップの作成はFlashらしく直感的に行うことができて、ブラウザ上で動作していることを連想させない。Web上に自分の作成したマインドマップを保存する機能が付いていることでブラウザを閉じても、以前の状態を保つことができたり、自分のマインドマップを他のユーザーと共有したりできる。「Photoshop Express」は、デスクトップアプリのPhotoshopをそのままブラウザ内で利用できるように開発したサービスだ。実際に、自分のローカルにある画像ファイルをアップロードして編集したり、再保存できるようになっていて。操作性も実際のアプリケーションと変わらない。
FlashがウェブアプリケーションやRIAの基礎技術として利用されるのは、Flashのプログラミング言語「ActionScript」にある。
前回で紹介したゲーム「CRIMSON ROOM」では、3Dソフトを使用して作成した画像をFlashで利用していたが、最新のFlash CS4では3D表現が可能となっている。3Dの計算を行うには、ActionScriptの高度な知識を必要とする。
しかし「Papervision3D」に代表されるいくつかの3Dライブラリなどが登場し、3Dを使用するコンテンツ開発が以前より手軽に行えるようになった。「エコだ動物園」は、そんな3D系Flashコンテンツの代表といえる。2D画面の中に再現された3D空間の中で、さらに2Dである絵本を読ませるという不思議な構造になっている。さらに、その絵本は、飛び出す絵本なので、3Dなのだ。
Flash Liteとは携帯電話に搭載されているFlash Playerのこと。PC板のFlashの機能以外にも、携帯電話の状態(電波や残電池量など)がわかるなど、特別な機能もある。また、携帯電話の中ではFlashコンテンツがメニュー画面や、待ち受け画面などWebブラウザ以外の部分でも利用されている。最新版ではネット接続の制限がなくなったため、ストリーミングによる動画再生や自動データ受信を前提とした開発が可能となり、限りなくPC版のFlash Playerと同じようなコンテンツが可能となった。
これまではFlashが動作するのは、ブラウザの中というのが常識だった。しかし、AIR(Adobe Integrated Runtime)というデスクトップ環境が登場することにより、Flashがデスクトップで動作するようになった。AIRアプリはWindwos Vistaのガジェットのようにデスクトップに常時表示可能だ。従来からデスクトップでFlashを動作させることはできたが、セキュリティ制限によりネットと繋ぎながらデスクトップで動作し、データをローカルに保存するこてはできなかったが、それをAIRでは可能にしたため、できることが大幅に増え多くのAIRアプリが登場しはじめている。
たとえば、「RickApps」で配布されている「RickFLV」というAIRアプリは、YouTubeなどで利用されている動画フォーマットで、専用のツールでないと再生できないFLVファイルを編集できるようになっている。
Flashをブラウザから開放したのがAIRならば、さらに進んでパソコンから開放するのがフィジカルコンピューティングといえる。
これは、主にFlashでPCのUSB端子に接続されたgainerなどの電子回路をコントロールする。逆に電子回路に接続されたセンサーを通じて、画面の中のFlashコンテンツを動かすこともある。また、Bluetoothと通信するWiiリモコンでFlashコンテンツを操作するという例もある。電子回路や無線を通じてPCと現実の物理的機器を接続することで、今までのPCの中だけの世界とは異なる体験を得ることが可能だ。
2回にわたり、様々なFlashの事例を紹介した。この連載を読んだ読者は、Flashでなんでもできそうな気がしているのではないだろうか。筆者も、何でもできると思っている。いくつかの事例を見ていて、共通しているのは「Flashを上手に利用している」ということだ。これは、クリエイター側が、Flashの特性や、得意なことをよく理解しているからこそできるのだと思う。逆に言えば、Flashにとって苦手なことを無理やりしていないということだ。これによって、Flashがなんでもこなせる万能ツールに見えるのだと思う。
Flashの特性を理解するには、一見回り道だがFlashの基礎から学ぶことが必要だろう。 Flashコンテンツを制作していれば、参考になるコンテンツはWebで無数に見つけることができる。その実例のどの部分を参考にして、どう自分なりに作っていくのかが一番大切だ。そこがオリジナリティであり、もしかしたら、それがFlashの新しいトレンドとなるかもしれない。ただ「Flashを使う」だけでなく、技術やアイデアの新しいチャレンジが大切だと思うからこそ、この連載ではFlashの事ををよく理解してから制作に望みたいと思う。Flashの可能性は大きい。誰に対して、何を作るのか、そのために何を学習すべきなのか、今していることが自分の制作のどの部分に活かせるのか、それらを常に意識しながらFlashを学習していきたい。
伊藤のりゆき(NORI)
有限会社トゴル・カンパニー代表。オーサリングエンジニアとしてFlashとMovable Typeでの制作を中心に活動。ロクナナワーク ショップ講師、アックゼロヨン審査員、ライターとしてFlash関連書籍や雑誌記事の執筆を行うなど、幅広く活動している。また、写真家としての顔も持つ。フォトブログ「Snap || Nothing」はこちら。
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