【コラム】
3月上旬に独ハノーバーで開催される「CeBIT」では、オープンソースパビリオンが設けられており、大小のオープンソースプロジェクトが自分たちの技術を紹介している。今年は、LinuxディストリビューションのKnoppixがCeBIT版として限定最新版をリリースするなどのニュースがあったほか、独ミュンヘン市のオープンソースプロジェクトの進捗も報告された。今回は、ドキュメントフォーマットを中心に欧州政府の動向を紹介したい。
ミュンヘン市では「LiMux Project」として、2005年から市のPCをMicrosoftの「Windows NT4」ベースからフリー/オープンソースベースのデスクトップへと移行させているところだ。数にして1万4,000台以上、21の機関のPCを移行させるものだ。Linux(Debian)と「KDE」などのフリーソフトをベースとし、オフィススイートは「OpenOffice.org」、ブラウザは「Firefox」、電子メールは「Thunderbird」、そのほか「GIMP」などのオープンソースソフトウェアで構成される。中期的目標としてコスト削減を挙げているが、大きな目的はソフトウェアサプライヤに依存しないこと、競争や市場の活性化、オープンソースによるセキュリティやメンテナンスなどであり、公共の立場からソフトウェア調達がどうあるべきかを考慮した結果といえる。
現在、LiMuxへの移行が完了したPCは約1,000台。OpenOffice.orgを利用しているPCは6,000台で、FirefoxとThunderbirdを利用するPCは90%以上という。移行が完了するのは早くとも2012年を見込むとのことだ。ミュンヘン市はまた、ドキュメントテンプレートやフォームの移行ツールを「WollMux」として、欧州連合のオープンソースポータルOpen Source Observatory and Repository(OSOR)にてGPLの下で公開している。
ミュンヘン市のオープンソース移行は大きなインパクトを与え、各国の政府機関がオープンソースの検討を促すきっかけを与えた。
新しいところではデンマーク政府が2010年1月末、政府のドキュメントフォーマットとしてODF(OpenDocument Format)採用を発表している。ODFを採用する政府はベルギー、フランスなどがあり、これに続くものとなる。2011年4月以降、政府機関で保存するドキュメントにODFを採用することになるが、議論の結果、Microsoftを完全排除するという当初の案はなくなっている。
オーストリア・ウィーン市も、早くからLinuxベース(DebianベースのLinuxディストリビューション「Wienux」)への移行プロジェクトを進めている。同市は2009年末、Windows共存に方針転換している。
ウィーン市のオープンソース移行プロジェクトは、1万6,000台ものPCを「Windows 2000」と「MS Office」から、WienuxとOpenOffice.orgに移行するというもの。最新の方針は、市のPCの半数以上で動いているソフトウェアについてはLinux上で動く代替ソフトウェアがない、という調査に基づくもの。ウィーン市は完全なオープンソースへの移行は無理があると判断し、柔軟策に変更したようだ。
政府に限定せずに国別に各種オフィススイートの利用を見ると、ドイツと近郊の国でOpenOffice.orgはよく利用されている。これは、OpenOffice.orgの原型となっている「StarOffice」がもともとはドイツのStarDivisionが開発していたオフィススイートだったことが関係あるだろう(その後、米Sun Microsystemsが買収)。独Webmasterproの27カ国(日本は対象外)の調査によると、OpenOffice.org(「StarOffice」「IBM Lotus Symphony」含む)の利用率はドイツで21%、ポーランドとチェコでは22%となっている。このほか、フランス(19%)、イタリア、ノルウェー(ともに18%)なども上位国となる。このほかにも、「Apple iWork」がルクセンブルグで3.7%、オーストラリアで3.6%、「Corel WordPerfect」は地元カナダで4%、インドで4.1%となるなど国によりさまざまだ。MS Officeの比率が高いのはオランダ(88%)、インド(88%)など。
一方、Microsoftの利用が多いといわれる英国政府は、ソフトウェア調達に関するポリシーを再度変更している。内閣府CIO評議会は2009年2月、調達ポリシーをアップデートし「オープンソースと非オープンソース製品間で大きなコストの差がない場合は、内在する柔軟性から、オープンソース製品を選択するべきだ」とするなど、オープンソース支持を示した。だがその後、Red HatやAlfrescoなどのベンダがこれを不十分としたことを受け、2010年1月末に改訂版を発表した。サプライヤに対してオープンソースベースの技術を検討したことを示すよう要求する項目などが加わっている。政府機関におけるブラウザの利用についても、オープンソース、オープンな標準、再利用のポリシーに基づき、「Internet Explorer」と同じレベルでFirefoxや「Opera」を検討すべきと述べている。
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