2月中旬に開かれたMobile World CongressでEric Shmidt CEOがスピーチを行った際にも、非難の声があがった

先週は欧州のあちこちで政府機関がGoogleに対し、警告を突きつけた。"Don't be evil(邪悪になるな)"が有名なGoogleだが、大きくなりすぎたために起こった対立なのか、戦略やビジネスに根本的な原因があるのか、根本的な原因はそもそもインターネットと現実世界の構造の違いから生じているのか……。

先週明らかになったGoogleと欧州政府が関係した事件は、

  1. 欧州委員会(EC)による独占禁止法違反の暫定調査
  2. イタリア政府が下した「YouTube」コンテンツへの法的責任(Google幹部3人が有罪)
  3. 「Google Street View」のデータ保持に関するECの懸念表明

の3つがある。

1は既報の通り、Googleのオンライン検索と広告の圧倒的なシェアに関するものだ。検索の上位にランクされるのとされないのとでは、ビジネスが大きく変わってくる。検索結果に広告が掲載されるためには、高い値で入札しなければならない。このような状況に対し、垂直型の検索サービスを提供する英Foundem、仏eJustice.fr、それに総合ショッピングサイトの独Ciao!が苦情を申し出た。eJustice.frの場合、検索にヒットしないことをGoogleに問い合わせたところ、自分たちのアルゴリズム経由でアクセス可能になればリストされると口頭で言われたとのことだ。だが、競合関係にあるのでそれはできないと説明している。

当のGoogleは、FoundemとCiao!が間接的/直接的にMicrosoftと関係があることから、Microsoftの引き金によるものと印象付ける報告文を公式ブログに掲載している。

ECは暫定調査を開始したが、これが正式な独占禁止法訴訟に結びつくわけではない。GoogleはECからの質問に数週間以内に回答し、ECはこの結果をみて正式な調査を開始するかどうかを決定する。

この件は注目に値するだろう。相手がGoogleというのはもちろんだが、ECは先に委員の入れ替えを行っており、競争政策担当委員も交代している。新たにこのポストに就いたのは、スペイン出身のJoaquin Almunia氏。前任者のNeelie Kroes氏(オランダ)は、Microsoft、Intel、Oracleなどの米国のハイテク大手に対し容赦ない態度を貫いた。Almunia氏はどのようにことを運ぶのか。今回のGoogleの暫定調査は今後のEUの米国企業に対する態度をうらなうものとなりそうだ。

2点目は動画コンテンツだ。倫理的にふさわしくないコンテンツや著作権を侵害している違法コンテンツが共有サイトに掲載された場合、サイトの運営者にはどこまで法的責任があるのか。

2006年9月、イタリア・トリノのある障害児がいじめられている動画が「Google Video」に掲載された。この動画はイタリアで大ヒットしたという。イタリアの警察は同年11月、Googleにこの動画の掲載について問い合わせ、Googleはすぐにこれを削除した。いじめた学生は学校を退学になるなどの処罰を受けたという。

ミラノ地方裁判所は24日、Googleのイタリア幹部3人をプライバシー侵害の罪で有罪と判定した。Googleはインターネットの自由を訴え、控訴する構えのようだ。

コンテンツをホスティングする事業者がどこまで責任を負わされるのか。難しい問題ではあるが、スウェーデンThe Pirate Bayは著作権のある音楽ファイルをホスティングしたことで、地元で有罪判決を受けている。動画と音楽、著作権とプライバシーと内容は違うが、同じようなケースといえるだろう。営利目的で提供しているサービスという点が気になるが、草案段階にある欧州の規制では、ホスティングプロバイダは基本的に責任を追及されず、通知を受けた場合削除することが求められるという方向性にある。

イタリア政府は今回、Googleの行いを"邪悪"と判断した。無実を主張するGoogleを支援し、在イタリアの米国大使らもGoogleを擁護し、イタリア政府に働きかけているようだ。この一件は、インターネットにより米国企業が自由にビジネス展開できるが、あくまで利用者はどこかに居住しており、そこには地元の法律があるということを示すものでもある。

これに関して、Guardianがおもしろい試算をしている。もしGoogleがYou Tubeに投稿されるすべての動画を事前にレビューして掲示する場合、365日体制で1日8時間作業したとして、3,600人のスタッフが必要になるという。これは馬鹿にならないコストだ。

3つ目は日本でもおなじみにStreet Viewだ。先にフィンランドでもスタートするなど、着実に欧州大陸の地図を塗りつぶしているGoogleだが、反発や懸念はいまだに強い。

AP通信が26日に報じたところによると、EUのデータ監視機関は2月11日、Googleに対し、Street Viewの撮影前に撮影する地域に通知すること、撮影したオリジナル写真(ぼかし修正なし)の保持期間を1年から6カ月に短縮することなどを求めたという。

Street Viewはすでにサービスがスタートしたスイス、ギリシャなどで強い反対に直面しているほか、ドイツでは難航しており、いまだにスタートしていない。