先週はNokia(フィンランド)の大型発表が相次いだ。携帯電話メーカーの同社が初のネットブック「Nokia Booklet 3G」を発表したかと思えば、Linuxベースのスマートフォン「Nokia N900」もベールを脱いだ。急ピッチで"携帯電話メーカー"からの脱却を図るNokiaが、今後の方向性を対外的に示したといえそうだ。

Nokiaが8月24日に発表したBooklet 3Gは、OSに「Windows」を、プロセッサは「Intel Atom」を搭載したネットブックだ。Wi-Fiのほかに3G/HSPAモジュールを搭載、携帯電話で確立したイメージを損なうことなくポートフォリオ拡大を図る。明らかになっている仕様としては、10インチ画面、SDカードリーダー、HDビデオ用HDMIポート、Bluetoothなどだ。重要な点は、Nokiaのインターネットサービス「Nokia Ovi」の統合だ。同ブランドでは地図、音楽、メッセージなどのサービスを提供しており、これらに容易にアクセスできるとしている。

Nokia Booklet 3G

Nokiaと米Intelは6月に提携を発表、「現在のスマートフォン、ノートPC、ネットブックを超えた新しいモバイルプラットフォームを定義することを目指す」と述べていた。それ以前のNokia取材や報道などから、Nokiaのネットブック参入はある程度予想できたが、OSにWindows(「Windows 7」と予想されている)を選んだ部分は市場を驚かせた。

だが、この謎は1週間もしないうちに解ける -- 8月28日に発表したN900だ。Nokiaが2005年から提供しているインターネットタブレットで採用している「Maemo」(Nokiaが支援するLinuxプラットフォーム)ベースであることから製品名に"N"を持つが、3G/HSPAをサポートしている。端末のカテゴリとしては、スマートフォンに入るだろう。それも、最大のライバルとなった米Apple「iPhone」に正面から対抗する1台と位置づけられそうだ。

N900のスペックだが、画面サイズはiPhoneと同じ3.5インチを持つ。iPhoneのキャパシティブタッチはないが、スライドするとQWERTYキーボードが現れる。カメラはフラッシュ付き、Carl Zeissレンズを採用した5メガピクセルだ。プロセッサは「ARM Cortex-A8」を採用、"コンピュータ"を感じさせるタブレットの強みを残した。たとえば、アプリケーションメモリは最大1GBで、スムーズにアプリケーションを切り替えられるという。グラフィック技術「OpenGL ES 2.0」をサポート、ストレージは32GBで、microSDカードで最大48GB拡張できる。

MaemoベースのLinuxフォン「N900」

この数カ月、Nokiaのプラットフォーム戦略を巡って、「米GoogleのAndroid携帯電話を開発か?」「SymbianからMaemoへ変更か?」などのうわさがあったが、N900はこれらを解消した。Reutersによると、同社携帯電話トップのKai Oistamo氏は「MaemoはLinuxデスクトップ環境をモバイルにする。われわれはそれを実現した」と述べているようだが、Nokiaは今後、Symbianに固執することなく製品に応じて柔軟にプラットフォームを使い分けるということのようだ。1年前に英Symbianを買収し、Symbian Foundationにする計画を発表した際、すでにこの計画を持っていたのだろうか。

プラットフォーム戦略を裏付けるように、Nokiaは、Booklet 3GとN900の2つの発表の間に「Nokia 5230」も発表している。Symbian/S60ベースの最新のタッチ画面携帯電話で、WCDMAに対応しつつ、予想価格は149ユーロ。A-GPS、Ovi統合などもあり、1年間無制限に音楽をダウンロードできる「Comes With Music」バンドルオプションも用意するようだ。Nokia 5230はインドで発表されており、HTCやAcerなどが比較的安価に提供するタッチ携帯電話との競合を意識した製品となる。

カラバリが豊富な「Nokia 5230」

Nokiaの先週の動きから、「モバイル」を中心にネットブック、スマートフォン、フィーチャーフォンと多角的に展開する「ブランド」で勝負する、という同社の戦略が伺える。Appleと同じような存在になることを目指しているともいえるだろう。

Booklet 3Gでは、利ざやが低く飽和気味ともいえるネットブックに参入するが、短期的な狙いは収益増というよりモバイルでのブランドの強化のように見える。しかも、オペレータの多くが3Gモジュラーの入ったネットブックを提供する時代、Nokiaブランドのネットブックがあってもおかしくはない。なお、Intelとの提携は包括的なものであり、Windows以外のプラットフォームもネットブックで展開する可能性もありそうだ。さまざまなカテゴリの端末を結びつけるインターネットサービス側では、2年前に発表したOviを少しずつ拡充しており、これが柱となるだろう。

実際、同社はN900を発表したのと同じ27日、Solutionsという新事業部の立ち上げを発表している。10月1日に稼動するSolutions事業部について、Nokiaは端末とサービスの統合を強化し、コンシューマーエクスペリエンスを改善する事業部と説明している。

Nokiaは今週、ドイツ・シュトットガルトで「Nokia World」を開催する。ここで、新しいNokiaが正式に幕開けとなりそうだ。