2月より非営利団体として少しずつ活動を開始しているSymbian Foundation(正式なDay1は4月2日としている)が着々と計画を進めている。7月8日、オープンソースライセンスの下で初めてのコード公開を行い、16日にはアプリケーションマーケット戦略を発表した。シェアやインストールベースを強みとするSymbianだが、モバイル市場は刻々と動いている。

Symbian Foundationは7月8日、「OS Security」をクローズドライセンスのSymbian Foundation License(SFL)から、同団体がオープンソースでメインに採用するEclipse Public License(EPL)に移管、コミュニティに公開した。この動きについてSymbian Foundationでは、

  1. 同団体の法的管轄である英国法の下で暗号化技術は輸出制限を受けるが、オープンソースソフトウェアでは対象外であること
  2. 自分たちがオープンソースに真剣に取り組んでいることを示すもの

と2つの点から説明している。

今後Symbianは、Symbianカーネルの基本コンポーネント、ドライバなどをEPLの下で公開していく計画だ。100%オープンソース化は2010年に実現する予定という。

Symbian Foundationが同時に進めているのがOS「Symbian^2」だ。Symbian^2は、「Symbian 9」をベースとし、インタフェース技術「Series 60」「UIQ」「MOAP」を統合したもの。すでに機能面での作業はほぼ完了しており、数週間以内にベータ版をリリースする計画だ。年内に正式版としてファイナライズする予定で、同OSを搭載した端末は2010年前半に登場の見込みという。SymbianではOSを6カ月ごとにリリースする計画で、「Symbian^3」は2009年末 - 2010年初めに機能完了→ベータリリースを見込む。端末メーカー向けには、PDK(Product Development Kit)を提供する。

技術面での作業だけでなく、エコシステムの確立も進んでいる。16日のアプリケーションマーケット戦略はこの部分となる。

今年2月、スペイン・バルセロナの「Mobile World Congress 2009」でSymbianのJohn M. Forsyth氏にインタビューした際、アプリケーションマーケットについて聞いてみたところ、"アプリケーションウェアハウス"構想を説明してくれた。Symbian向けモバイルアプリケーションに対し、Foundaionが認証を行いアプリケーションの倉庫(ウェアハウス)を構築するというものだ。端末メーカーやオペレータは、自社が展開するアプリケーションマーケットのカタログに、Symbian Foundationの倉庫にあるアプリケーションを加えることができる。

Symbian Foundationが正式発表した「Symbian Horizon」は、このウェアハウス構想に基づくもので、開発者を技術、流通、マーケティングの面で支援する。発表時、フィンランドNokia、韓国Samsung、米AT&Tが提携アプリケーションストアパートナーとなっている。

「App Store」でモバイルアプリ市場を活性化させた米Appleは7月14日、最初の1年でApp Store経由のアプリケーションダウンロード件数が15億件に達したことを発表した。Symbian Foundationは、Symbian当時からアプリケーション開発を促進し、流通の仕組みを構築しようとしてきたが、Appleがこの市場を離陸させたことは誰もが認めるところだろう。調査会社の英Juniper Researchによると、モバイルアプリケーションは5年後の2014年には2,000億ダウンロードの大市場になる見込みという。

Symbian Foundationは強みとして、Java ME、Adobe Flash Lite、Symbian C++、Open C/C++、Python、Webツールキットなど幅広い言語のサポート、26カ国で提供されている70機種以上の携帯電話に対応する地理的リーチを挙げている。

このように急ピッチでSymbian Foundation/オープンソースコミュニティとして生まれ変わろうとするSymbian陣営だが、モバイル市場の動きは速い。オープンソースという点では、複数の企業が所有するものをオープンソースにしていくという難題を抱えており、これまで順調に進めてきたことはかなり評価できそうだ。一方で、Symbian OSとしてのシェアはじりじりと減少し、50%を切るレベルとなった。

Symbianの大きな課題の1つに、北米市場がある。Symbianは携帯電話メーカートップ5に提供しているが、最大顧客であるNokiaは北米市場で弱く、SamsungやSony Ericssonに頼る形となる。一方で、iPhone、米Google「Android」、米Palm「Palm Pre」など、スマートフォンの話題をさらう人気端末は北米発だ。

スマートフォン時代は現実のものとなった。Symbian Foundationにとって、計画を遅らせたり、戦略の手を緩めることはできない緊張した状況が続きそうだ。