欧州は今年、気候と景気の両方の面で厳しい冬を迎えている。南仏で20年ぶりに雪が積もるなど厳しい寒波が続く中、欧州委員会(EC)は1月のユーロ圏の景況感指数を過去最低の68.9と発表した。そんな状況で奮闘しているのが、オンラインショッピングだ。ここでは、フランスと英国の動向を紹介したい。

寒波と不況のダブルパンチで、欧州の小売業界にはきびしい冬となっている。だが、リアルの店舗売上が減少を続ける一方で、オンラインショップは毎年好調な伸びを見せているのも事実だ

フランスはバーゲン(フランス語で「ソルド」という)に関して細かで厳格な規制を設けており、期間もその1つだ。オンラインショッピングの定着を受け、ECサイトも2年前から規制に従うようになった。よって、通常の店舗もオンラインも、8時から解禁となる。今年の場合は、1月7日の朝8時だ。通販大手のLa Redouteは前日夜からサイトを切り替え、「ソルドは明日の8時から」というメッセージを大きく表示していた。

2008年、ソルド初日にECサイトをチェックした人は73.5%(Benchmark GroupとBrandalley調べ)だったこともあり、今年もアクセス増加が期待されていた。たとえば、ECおよび通販の業界団体La Fevadの事前調査によると、「ソルド期間中インターネット経由で買い物をする計画がある」と回答した人は75%にのぼったという。

当日、気候も後押しして、関係者の期待通りオンラインは大盛況だったようだ。La Redouteは初日、8時から12時の4時間で4万を超える注文を受け付けたと発表、電気製品を扱うPixmaniaも、初日の受注数を前年比30%で増やした。La Fevadは、今年のソルド初日の発注数は前年比16%増加、と発表した。

ソルド期間中にオンラインで購入するものは、洋服が75%と圧倒的に多く、日用品や電気製品も3割以上の人が購入経験があるという。今年の平均予算は271ユーロ(約2万5,000円)。フランス人にとってソルド期間中にオンラインを利用する最大の理由は、「人ごみを避けるため」だそうだ。

フランスのレディースファッションを中心とした商品を扱い、幅広い層に顧客をもつオンラインショッピングサイト「La Redoute」

ところ変わってイギリス。こちらは年末商戦のデータを紹介したい。オンラインショッピング動向をまとめる「IMRG Capgemini e-Retail Sales Index」によると、2008年12月のオンラインショッピング売上高は前年同月比14.2%増の46億7,000万ポンド(約5,900億円)。なんと、国民1人あたり76.67ポンド(約9,700円)をオンラインで消費した計算になるという。調査では、3分の1がクリスマスショッピング予算の半分以上をオンラインで費やしたこともわかった。

だが、今年の年末商戦のピークは11月だったようで、前月からは1.5%減となった。前月比マイナスは、ICTバブルが崩壊した後の2002年12月以来という。

こちらも売れ筋は洋服、靴、アクセサリーで、この分野は前年比30%の増加。ところが、消費者の21%が、あわないものを返却するつもりで違うサイズをあわせて購入しているという事実もわかった。

今年、英国のECはさらに活性化しそうだ。不況をよそに好調な業績を報告した米Amazonが、米国の一部市場で展開している食品販売を英国でも開始するとうわさされているからだ。食品のWeb販売は大手Tescoなども展開しているが、まだ定着しているとはいえない。Amazonの参入で市場の開拓が進みそうだ。