日本での発売が待たれていた「Nokia E71」も発売中止となった。Nokiaジャパンのスタッフも残念に思っているという

前回、UIQ Technology(スウェーデン)の話を書いたが、今回はNokia(フィンランド)について、同社が昨年末に発表した日本市場撤退を中心に見ていきたい。

既報の通り、Nokiaは昨年11月末に日本市場撤退を発表した。このニュース、少なくとも私には驚きだったが、この件について日本語の記事が少ないところを見ると、日本におけるNokiaのシェアは低く、大きなインパクトはないということかもしれない。

Nokiaはこの決定を発表するプレスリリースで、「現在の厳しい世界的な経済傾向の中では、日本独自の製品展開のための投資を続けていくことはできない」と理由を説明している。日本市場におけるNokiaのシェアは1 - 2%といわれており、Nokiaが掲げてきた目標値に達しなかったという。

世界で40%近いシェアを持つNokiaがモバイル先進国の日本市場から撤退することを受け、欧州のメディアは日本のモバイル市場について、高度だが極めて特有であり、歴史的にオペレータと国内メーカーが密な関係にあると紹介している。そして、その独自性から、Nokiaをはじめ、韓国Samsung、米Motorolaなど、世界では大手とされる海外メーカーは苦戦を強いられている、と解説している(米Apple「iPhone」は例外としている)。

世界の携帯電話メーカーのシェアと日本のそれとが大きく異なるのは、よく指摘される通りだ。日本から撤退するNokiaに対し、日本からなかなか拡大できずにいる国内メーカー各社の思いは複雑かもしれない。シャープは昨年夏に海外市場への本格参入を明らかにしたが、3Gを契機と思っていたいくつかの国内メーカーは、世界市場でそれなりの実績を上げられないまま現在に至っている。ところが、iPhoneは新規参入でも世界的に成功しており、失敗の原因は単純に市場構造とは言い切れない。これは、日本におけるNokia、世界における国内メーカーの両方にいえそうだ。

だが、Nokiaの戦略を考えてみると、携帯電話を日本で売ることに重要性を見出さなくなったことも納得できる。Nokiaは携帯電話メーカーを目指しているのではない。同社はこの1 - 2年、ソフトウェア/サービスにフォーカスを大きくシフトさせており、ここでの成功が最優先課題だ。Nokia幹部も、「数年後は、携帯電話メーカーでなくなるかもしれない」と冗談とも本気ともとれる発言をしている。

2006年にNokia CEOに就任したOlli-Pekka Kallasvuo氏。前CEOよりも決断のスピードが速い

Nokiaは昨年6月、英Symbianを買収し、Symbian Foundationとしてオープンソース団体を発足させることを発表した。ここでは、「Symbian OS」と、自社のSymbian向けUI「S60」をベースにNTTドコモの「MOAP」、UIQの「UIQ」を統合させ、最終的にオープンソースとしてコードを公開する計画だ。すでにNokiaのS60トップ、Lee Williams氏がFoundationのエグゼクティブディレクターに就任することが決定している。Symbianは日本の売上げ比率が高いが、日本市場ではMOAPが重要になると考えており、Nokiaがここで踏ん張って自社端末を提供する意味は、以前より低くなった。

Nokiaの日本市場撤退を受け、同社の北米市場での展開にも注目が集まっている。Nokiaは以前から北米市場で苦戦しており、そのシェアは8%程度で5位。Samsungよりも低い。OS覇権争いにおけるSymbianの北米戦略としては、Samsungなど他のSymbianライセンシーがどれだけSymbianベースの端末を北米に投入するのかが重要となる。

Nokiaは昨年12月、Symbian買収を完了し、Symbian Foundation設立に向け第1歩を踏み出した。