スコットランドの人々は、ウイスキーよりビールのほうがよく飲むということがわかった前回。しかしながら旅行者の私としては、「スコットランドといえばウイスキー」という先入観があるため、まずはウイスキーに走る。

前回紹介したようにまずパブでアイラ島の「ブルイックラディ20年」を1杯飲んだ後は、さらにパブをはしごしてハイランドの「オーバン14年」を、ホテルに帰ってスペイサイドの「クラガンモア12年」を楽しんだ。

さて、ここからはウイスキーミニ講座を開くとしよう。先ほどからアイラ島やハイランドなどと記してきたが、これらはウイスキーの産地名である。スコットランドには全域に蒸留所があるが、地域によってタイプは分かれ、大別すると以下の6タイプとなる。

  • スペイサイド:北部を流れるスペイ川周辺でつくられるウイスキーを指す。香りは華やかで、口当たりはスムーズ。上品なコクを持つものが多い。スコットランドにある蒸留所の半数がこの地域にあるといわれている。代表的銘柄:ザ・マッカラン、グレンフィディック
  • ハイランド:スペイサイド以外のスコットランド北部(北ハイランド)、その他東ハイランド、西ハイランド、南ハイランドでつくられるもの。北ハイランドと東ハイランド産はピート香(スモーキーフレーバーの一種)が強く、西ハイランドと南ハイランド産の場合、ピート香は比較的穏やかで、洋梨のコンポートやアカシアの蜂蜜などトロリとした甘さがある。代表的銘柄:オーバン、グレンモーレンジ
  • アイラ:西部のアイラ島でつくられる。強烈なピート香とミネラル感が特徴で、香りは例えるなら「正露丸」。好き嫌いがはっきり分かれるところだが、好きな人は「これしか目に入らない!!」となる。生牡蠣との相性は抜群。代表的銘柄:ボウモア、ラフロイグ
  • アイランズ:オークニー諸島やアラン島など、アイラ島以外の島々でつくられるモルトを一般的にこう呼ぶようだ。これらの特徴をひとくくりにするのは難しいが、海風の影響を受けるため、塩気を感じるものも多い。代表的銘柄:タリスカー、スキャパ
  • ローランド:スコットランド南部が産地。ピート香は少なく、フルーティで柔らか。喉にスッと入っていく印象である。代表的銘柄:オーへントッシャン
  • キャンベルタウン:スコットランド南部のキンタイヤ半島突端でつくられる。比較的スムーズで爽やかな飲み口だが、潮風によるミネラル感も。代表的銘柄:スプリングバンク

以上のように種類分けされるが、同じ産地でも原料となるモルトや水、ヴィンテージ、熟成させる樽(バーボン樽やシェリー樽)などによってずいぶんと味わいが違ってくる。飲み比べてみて自分の好みを見つけるのも楽しい。

スコッチウイスキーを知る・買う

このようにしてスコッチウイスキーを知っていくと、「つくっているところを見てみたい」と思うだろう(えっ、私だけ!?)。蒸留所巡りのベストシーズンは復活祭(イースター)以降から大体10月くらいまで。私は今回、その時期から外れてしまっていたが、そんな場合も心配することはない。エジンバラの「スコットウイスキー・ヘリテージセンター」へ行ってみるといい。

ここでは、カートに乗って移動しながら、ウイスキーの歴史や種類、製造工程などが学べるようになっている。時間は約1時間。蒸留所を巡る時間がないという方にもオススメのスポットだ。日本語のオーディオガイドを無料で貸してくれるのもとても助かる。訳している音声を聞いているため、他の外国人たちと笑いどころがずれるのがちょっと恥ずかしかったが……。

エジンバラ城近くの「スコッチウイスキー・ヘリテージセンター」。入場料£8.95。中に入ると、まずウイスキーの試飲。ナビゲーターからの説明の後、カートに乗って出発! 試飲用グラスは持ち帰りOK

見学が終わったら、ウイスキーを買いに行こう。ヘリテージセンターからロイヤルマイルを歩くこと300メートル、その名も「ロイヤル・マイル・ウイスキーズ」がある。スコットランド中の名だたるウイスキーがずらりと並び、その数はおそらくエジンバラ最多である。50mlのミニチュアボトルも豊富にあるので、「100ml以上の液体は機内持ち込み禁止」という条件も気にせず買い物ができる(機内でウイスキーを飲もうとしているのが見え見えな私……)。

スコッチウイスキー専門店「ロイヤル・マイル・ウイスキーズ」。愛好家にはたまらないヴィンテージウイスキーも揃っている

スコットランドのパブフード

ウイスキーやビールと同じくらいイギリスで有名なものと言えばパブの料理ではないだろうか。代表格にはフィッシュ & チップスがある。それ以外にもスコットランドでは羊肉(マトン)とオーツ麦を一緒にゆでた「ハギス」が名物だ。ビールにはもちろんのこと、ウイスキーにも合うとのこと。「~とのこと」と書くのは、それは私が食べていないからです、すみません……。

何せ一人旅。お酒を飲んでいたらそれだけでおなかがいっぱいになってしまい、食事までカバーすることができなかったのです……(言い訳)。ここでは数少ない食事の中から、「季節の野菜 パイ包み マッシュルームソース添え(フライドポテト、野菜サラダ付)」を紹介しよう。パブフードは内容に関係なくフライドポテト(チップス)がほぼ確実についてくる。旅行中の野菜不足を解消しようと頼んだ料理だったが、みじん切りにされた人参などの野菜をパイでサンドしてあるだけで、あまり野菜を食べた感じはしない。ただでさえパイが油っぽいのに、マッシュルームソースも生クリームたっぷりでこってり。ヘルシーな料理だと思ったが、実物は寝る前に食すにはヘビーすぎる一皿だった。

教訓「パブフードにヘルシーさを求めてはいけない」(あくまでも私の個人的な見解)。

「季節の野菜 パイ包み マッシュルームソース添え」(£7.45)。油ギッシュな料理だが、一緒に頼んだスコッチ「クラガンモア12年」が洋梨のコンポートのようなねっとり感とバニラの香りがあったため、生クリームのマッシュルームソースには好相性