はじめまして。ソムリエライターの小山田貴子と申します。ソムリエと付くからには一応ワインが専門ですが、最近はビールやウイスキーなど"飲めるアルコール"ならなんでも果敢にチャレンジしています。このコラムでは、イタリアやスコットランドで体験した「酒」にまつわるあれこれを楽しく綴り、皆さんに「へぇ~」と思ってもらえるようなネタをご紹介したいと思います。1回目はスコットランドのウイスキーについて。

そもそも飲むのも書くのもワイン専門のはずだった私だが、ここ数年は海外に出かける度に「ついで」と称してビール処に立ち寄るようになった。ドイツ、ベルギー、サンフランシスコ、ポートランドなどなど。そしてついに「エールの聖地」である英国に行く機会が訪れた。向かったのはスコットランド・エジンバラ。「イギリスといったらロンドンだろ!!」という突っ込みが聞こえてきそうだが、これには理由がある。元来貧乏性の私はビール偵察のついでに、昨今、日本の市場で好調だというスコッチウイスキー(中でもシングルモルト)を本場で体験しようという目論見があったからだ。

新旧のコントラストが美しいエジンバラ

古くはウォルター・スコットやコナン・ドイル、近年ではベイ・シティ・ローラーズ(あ、これも古いか)などを輩出したスコットランドの首都、エジンバラ。ウェイヴァリー駅を境に、エジンバラ城など中世の面影を残す地区と、18世紀の都市計画によってつくられた新市街に分かれる。"新"とはいえ、18世紀に建てられた石造りの重々しい建物が多いが、リノベーションが施され、モダンでおしゃれなオフィスやレストランに生まれ変わっていることが多い。デパートもこのエリアに集中している。

新市街の街並み。古きを残しつつモダンにリノベーション。あまりイメージにないだろうが、ここから数キロのところに港があるため、シーフード料理のレストランも結構ある

旧市街はエジンバラ城やホリルードハウスといった歴史的建造物も数多くある一方で、センスのよいパブやブティックが立ち並ぶ。若者でにぎわうグラスマーケットのような一角もあり、1日中散歩しても飽きることはない。

いつも観光客であふれかえっているエジンバラ城

グラスマーケット。昔は死刑執行場だったというのが嘘のように、今はおしゃれなエリア

バグパイプは持っていないが、タータンチェックのキルトをはいた男性が普通に道を歩いているのを見るとスコットランドに来た実感が沸いてくる。一般的な観光はここまでにして、いよいよ「パブをはしごするぞ~!!」と意気込む私。

街中ではキルトスカート姿の男性をあちこちで見かける

1軒目のパブへ。石造りの荘厳な外観、中はマホガニーの重厚なカウンター。いかにもシングルモルトが似合いそうな雰囲気ではないか。周りの客もおいしそうに杯を……。と思った瞬間、「あれっ!?」と首を傾げたくなる光景が。傾けていたのは、ウイスキーではなくビール。ちょっと拍子抜けである。結論から言うと今回、エジンバラには3日間滞在して十数軒のパブに立ち寄ったが、昼間も夜もスコッチウイスキーを飲んでいる光景を見かけることはなかった。「スコットランド=ウイスキー」という私のイメージが、ガラガラと音を立てて崩れ去っていった。

エジンバラ駅からも近い「GUILD FORD ARMS」。1895年からある由緒正しいパブで、店内はアットホームな雰囲気

パブ「ABBOTS FORD」のカウンター。凝った細工の天井にも歴史が感じられる

しかし、「せっかくだし……」と一応、シングルモルトを物色。目の前の棚にズラリと並ぶシングルモルトの中から、スコットランド・アイラ島で作られた「ブルイックラディ20年」をまず一杯。20年の熟成からなのか、アイラ島特有のツーンをしたピート香(スモーキーフレーバーの一種)は和らぎ、ほのかな樽の香りとフルーティさが心地よい。旨い。マダガスカル産のチョコレートと一緒に食べたくなる味だった。

スコッチウイスキーもこれだけ揃うとどれを飲もうか迷ってしまう

周りの人々がビールを飲む中、まだまだ私はウイスキー!!次回はスコッチウイスキーをさらに詳しく紹介。